「滋賀県うみのこ」学習コンテンツ紹介ウェビナー(パート2)(ニカラグア・マナグア湖環境保全・BIWAKO TF活動)

掲載日:2022.09.07

イベント |

概要

会議名:「滋賀県うみのこ」学習コンテンツ紹介ウェビナー(パート2)(ニカラグア・マナグア湖環境保全・BIWAKO TF活動)
開催日:2022年9月7日 17:00~19:00(ニカラグア時間)、2022年9月8日 8:00~10:00(日本時間)
主催:マナグア市役所/ニカラグア事務所 BIWAKOタスクフォース
場所:オンラインセミナー

主な参加者

ニカラグア側

  • 教育省(16名)、マナグア市役所(10名)、水理研究所(6名)

日本側

  • 滋賀県教育委員会・滋賀県びわ湖フローティングスクールの関係者(8名)
  • ニカラグア事務所からBIWAKOタスクフォースメンバー(8名)
  • 地球環境部、関西センター、JICA滋賀県デスクの関係者他(5名)

背景

中米でハイチに次ぐ貧困国であるニカラグアの首都マナグアには、琵琶湖の2倍近い面積を持つマナグア湖が隣接しています。マナグア湖は観光資源として開発が進められている一方で、不十分な下水道整備に伴う汚染水の流入によって、水質汚染が深刻化しており、ニカラグアはその豊な自然資源を活かすことができていません。

このような状況に問題意識を持ったJICAニカラグア事務所では、国内外の状況や事例を学び、環境の保全・再生を進めながら経済を発展させた滋賀県の琵琶湖の開発や保全・再生の経験に注目し、滋賀県が世界に発信する「琵琶湖モデル」を参考に、2020年にマナグア湖環境保全の課題について考えるBIWAKOタスクフォース(以下、タスクフォースをTFと記載)を事務所の様々なスタッフとともに設置し、2021年以降は、琵琶湖環境保全に従事しているILEC、滋賀県の教育委員会、フローティングスクールの関係者の協力を得ながら、ニカラグアのマナグア湖環境保全にかかる多様な活動を一つずつ実施しています。

ニカラグアでは、滋賀県で40年の実績を持つ「うみのこ(注)」乗船学習(湖の保全)の経験を参考に、昨年よりニカラグア版「うみのこ」を実施しています。ニカラグアで初めての乗船型の環境学習経験は、実際に乗船学習を経験した児童や教師から高い評価を得ました。またこの経験は、2021年のCOP26でニカラグアの教育大臣によって紹介がされ注目が集まりました。

昨年に続き、今般のウェビナーでは、ニカラグア版「うみのこ」の教育内容を更にグレードアップ、充実した環境学習の実施を可能とすることを目的に、滋賀県フローティングスクールの先生方からニカラグア版「うみのこ」実施者の関係者を対象に、「うみのこ」乗船前、乗船中、乗船後の教育コンテンツについて、いくつかの実験をライブで実践しながら発表していただきました。

(注)「うみのこ」は、滋賀県立琵琶湖フローティングスクールが運営する琵琶湖環境保全を目的とした乗船学習。滋賀県在住の小学5年生の児童を対象に、体験型の学びを提供している。

内容

第2回「滋賀県うみのこ」学習コンテンツ紹介

昨年の「滋賀県うみのこ」初回ウェビナーでは、滋賀県フローティングスクールの先生方より、「うみのこ」の乗船中に行う、琵琶湖の水環境を理解するための様々な科学実験コンテンツについて紹介をしていただきました。このウェビナー終了後、ニカラグア関係者は、「うみのこ」を参考に、ニカラグアのニーズや状況に合わせた形で、初めてニカラグア版「うみのこ」を実施し、国内で高い評価を受けました。

今般のウェビナー(2回目)では、昨年の「乗船中」の科学実験に加え、「乗船前」や「乗船後」の一連の教育内容についても、具体的なテーマや実験を交えながら説明がされました。

40年の実績を誇る滋賀県の「うみのこ」は、滋賀県の全ての小学5年生が体験する乗船型学習であり、現在では滋賀県の人口の4割以上が「うみのこ」経験者であること、また開始した際の子供たちは現在50歳となっていること、その長い歴史の中、「うみのこ」が安全、安心で学びが深まる学習船として確立されてきたことについて話がされました。

次に「乗船前」学習の説明がされました。「魚」や「プランクトン」といった具体的な学習テーマを設定し、そのテーマに関し、自分たちが湖を守るために、できることを探す授業を行います、との説明がされました。この段階では、琵琶湖のよいところや、水はきれいか、きたないか、また50年前の湖が汚染された状況の説明、また水草の大繁殖やごみによって、魚が減少したことについて話がされるとのことでした。

また「乗船中」の学習として、「琵琶湖の生き物に目を向ける」ため観察や実験をいくつか行い、琵琶湖の水について考える機会を設けることが説明されました。ウェビナー中、画面越しに「琵琶湖の水の透視度調査」のデモンストレーションが行われ、汚れた水は何年かけて透明度が回復するのか等について解説がされました。そしてその結果として、「水がきれいになってきたのは、人々の努力の成果」であることの「気づき」の場が重要であることが説明されました。

最後に「乗船後」の授業では、「乗船中」学習についての振り返りや、考えの整理(学習新聞、付箋、調査結果等の形で)をし、そして「美しい湖とそこに暮らす生き物たちと人間が共存していくためには、どのような行動が必要か?」といった質問に対し、生徒が各自答えをだすような学習内容になっているとのことでした。

この発表の終了後、ニカラグア人教師から、「乗船中の学習について、どの段階で乗船中のテーマを決めて、いつ生徒にテーマを伝えるのでしょうか」といった、テーマ設定にかかる質問がありました。それに対し、滋賀県フローティングスクールから「乗船学習を始める前段階で、教師がテーマを検討・決定・準備をして、生徒に乗船前の段階からテーマ学習を始めます」との回答がされました。

ニカラグア版「うみのこ」の主催者であるマナグア市役所からは、「「うみのこ」の琵琶湖保全のための教育コンテンツは、過去、現在、未来の展望を含めて、体系的かつ実用的な科学コンテンツが含まれており、素晴らしいと思いました。これからニカラグア(マナグア湖保全)も琵琶湖に習い、25年の継続実施を目指し進めていきたいと思います。また2回目の「うみのこ」実施後に、皆さまに良い報告ができるよう努力します」と、熱い意気込みが伝えられました。

最後にJICAニカラグア事務所の高砂所長から、「ニカラグアの関係者の皆さんによる、ニカラグア版「うみのこ」の実施に向けてエールを送ります。滋賀県の40年にわたる経験に習い、ニカラグアでも、まずはこれから25年間継続し、そして末永く後世に伝えられるものとなることを願ってやみません」と、参加者全員に伝えられました。

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滋賀県で40年の歴史を誇る琵琶湖保全をテーマにした乗船型学習船「うみのこ」

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滋賀県フローティングスクールからの「うみのこ」背景・歴史の説明

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滋賀県フローティングスクールの先生による湖の水の透視度実験デモンストレーション

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「うみのこ」乗船中の水のよごれ回復実験の様子

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マナグア市役所から滋賀県フローティングスクールへの感謝のメッセージ

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「うみのこ」ウェビナー参加者のグループ写真