現場との交流を通じ、農学系留学生のネットワーク強化と日本の農業・農村開発の最新状況や歴史に関する理解を深めるスタディ・ツアーを行いました!

掲載日:2022.10.22

イベント |

概要

2022年10月20日(木)~22日(土)、食料安全保障のための農学ネットワーク(Agri-Net)プログラム等により日本で農業分野の研究をしているJICA留学生スタディ・ツアーを実施しました。16カ国22名が参加しました。

研究学園都市のあるつくば市の研究機関や大学、農業産出額全国3位(2020年度)を誇る茨城県内の民間企業等を訪問しました。

研究機関・大学においては、農業分野の先端技術に関する研究、及びそれらの研究が社会にどのように役立つかを知りました。また、農業を主とする地方振興に貢献する民間企業等の役割についても理解を深めました。

本ツアーは留学生たちが自分の研究を進める上での参考情報や母国の農業・農村振興に導入・応用等を考えるための知見を得る貴重な機会となりました。

各訪問先での状況

1.ジーンバンク(10月20日午後)

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下農研機構)が運営するジーンバンクでは多様な遺伝資源の保存が新種の病気に耐病性のある品種の開発等に不可欠である等、食料安全保障に貢献する役割を学びました。遺伝資源管理施設の見学ではロボットによる取り出し等、種子を清潔な状態に管理方法に関心が集まりました。

2.食と農の科学館(農研機構)(10月20日午後)

本科学館では、最先端の農業研究の成果とともに、日本の農具の歴史などの説明を受けました。古い農機具・農法と新しい農業を比較する説明に関心が高まりました。また新技術の確立、普及に至るまでの苦労等についての質問が寄せられました。

3.筑波大学(つくば機能植物イノベーション研究センター(Tsukuba-Plant Innovation Research Center)次世代農業研究部門(T-PRIC農場)および遺伝子実験センター)(10月21日午前)

筑波大学にある、つくば機能植物イノベーション研究センター次世代農業研究部門(T-PRIC農場)では研究用の温室や果樹園、また研究のみならず学生の実習にも使われている水田などを見学しました。

筑波大学遺伝子研究センターではゲノム編集等について説明を受けました。遺伝子組み換え作物が病害虫に強い、あるいは病害虫の防除に使う農薬に耐性がある品種等、生産者の立場を重視した技術である一方、ゲノム編集は栄養価の高い作物の品質改良を短期間で実現する等、消費者のことも考えた技術であることを学びました。

4.ヤンマーアグリソリューションセンター関東(10月21日午後)

ヤンマーアグリソリューション関東では、自動運転トラクタに試乗するなどの最新技術について体験しました。また、留学生母国で課題となっている農業機械の購入の困難さについて、日本の農家がどのように農業機械の購入・利用をしているかについての質問がある等の関心の高さがうかがわれました。これに対し、現在ではリースなどにより、農業機械の所有権と使用権を分離させ、機械利用の経済的負担を軽くしている農家の事例等の説明を受けました。展示室ではトラクタのミニカー等も販売しており、母国の子どものお土産用にミニカーを買ったある留学生は、「今度、ここを訪問する時は本物のトラクタを買いたい!」と語りました。

5.らぽっぽなめがたファーマーズヴィレッジ(10月22日午前)

らぽっぽなめがたファーヴィレッジでは、同ヴィレッジを運営している株式会社なめがたしろはとファームの方より説明をいただきました。

1)同ヴィレッジは閉校した小学校の施設を活用し、様々なイベントを実施していること。
2)六次産業による地方振興に貢献するため、サツマイモの栽培・収穫、加工、商品化、販売、ヴィレッジに来なければ体験できないサービスの提供等いること。

全体説明終了後も留学生から苗床用の土壌等の個別質問に対応頂きました。

留学生は展示物や施設の見学や研究室へのお土産を買う等、地域振興の取り組みを肌で感じていました。

6.民間企業とJICA留学生・研修員共創セミナー(10月22日午後)

JICA筑波で行われた共創セミナーでは、NPOや民間企業等、6つ展示団体から技術や製品の性能についてプレゼンが行われ、母国に導入する場合の留意点等に関する質疑応答が行われました。詳細は、関連リンクに掲載されているJICA筑波・農業共創ハブの最新ニュースをご覧ください。

参加した留学生の声

事後アンケートを通じ、参加した留学生の声を聞きました。留学生のニーズや関心分野等の重要な情報を得ることができました。

参加の動機

(1)ネットワークを広げるため

  • 参加したJICA留学生同士で交流し、研究経験を共有したかったため。
  • 研究者の方々と、今後お互いの所属研究機関で連携をするためのコネクションを築きたかったため。
  • 企業との交流による潜在的な雇用機会、ビジネスの可能性、投資家とのネットワークやつながりを確立したかったため。

(2)研究・技術

  • 日本の農業技術や機械設備、現在行われている研究のプロセスや方法論を学びたかったため。
  • 日本の農業分野における新しい技術やイノベーションが生産、研究、国民経済のさまざまな過程のおいてどのように役立っているかを知りたかったため。
  • 日本が農業に使っている技術について知り、それらが有用か、例えば自国で採用可能な新技術となり得るかを知りたかったため。

ツアー参加による目的達成、得られた知見

(1)目的達成について

  • 対面での体験や交流により、しっかりとした情報共有ができた。
  • 様々な組織を訪問し、各組織が日本の農業の発展に貢献するために何に取り組んでいるかを学ぶことができた。

(2)得られた知見

  • 農業食品、農業、種子管理・生産、保全型農業における新技術、有機農業、農民組織や協同組合における持続可能なビジネスモデルなどの研究に関連するさまざまな活動について学ぶことができた。
  • 様々な組織を訪問したことによって、種子から始まり、機械、技術、付加価値向上に至るまで、農業開発に関する多くの知識を得ることができた。
  • ジーンバンクの説明や視察により、将来起こりうる食料安全保障問題に備え、また、日本のみならず、世界中の国のためにも遺伝資源の保存に努力をしていることを知った。
  • 経済的な持続可能性を達成するために、母国で適用できる生産、技術、ビジネスモデルに関するさまざまな経験の特徴や利点を知ることができた。サツマイモの干し芋加工、精米機、TOKYO8(汚泥や家畜排せつ物を原料とする土壌改良剤)等、現場で本当に必要とされている製品開発戦略など、多くの新しいアイデアを得ることができた。

日本の農業で関心のある主なトピックス

(1)持続可能な農業に関するもの

  • 持続可能な食料と栄養の安全保障に資する技術(灌漑・作物保護を含む作物生産技術、土壌改良と植物栄養管理に貢献する最新技術)
  • 気候変動に適応した農畜産物生産

(2)日本の農業理解を深めるもの

  • 農家、農産物の集荷・販売を担う協同組合等の訪問・交流

(3)日本の先進技術に関するもの

  • ゲノム編集、バイオテクノロジー
  • スマート農業技術を使った適期作業による営農改善
  • 日本のロボティクス・AI分野
  • 日本の先進的な畜産農業システム

(4)農業ビジネスに関するもの

  • プロジェクト計画立案に関する研修会や経験の共有
  • 日本での有機肥料の生産と販売方法
  • アグロインダストリー(特に加工)、小規模付加価値プロセス
  • 海外での機械取引の可能性

お問い合わせ先

独立行政法人 国際協力機構 経済開発部 計画課
メール:agrinetwork@jica.go.jp

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ジーンバンクの役割等についての受講の様子

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ジーンバンクの種子貯蔵庫の見学

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食の農科学館の展示概要説明を受ける様子

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昭和初期まで使用されていた農具の説明(科学館)

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かつて日本で使われていた生活用具の説明(科学館)

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最新研究のポスターの情報をスマートフォンに収める(科学館)

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実験圃場において施肥区と対照区の状況を見学し、肥料の効果を間近に見る。(筑波大学)

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ゲノム編集技術と実用化(血圧を下げる成分を含むトマトの流通等)の説明を受ける。(筑波大学)

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自動運転トラクタに試乗する留学生。留学生はハンドル等に触ることなく、リモート操作で移動する。(ヤンマーアグリ)

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実際に最新機材にふれる留学生(ヤンマーアグリ)

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ドローンの説明を受ける様子(ヤンマーアグリ)

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らぽっぽの事業や取り組みに関する講義の様子

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サツマイモに関する体験型学習施設を見学(らぽっぽ)

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加工における衛生の重要性を体験(らぽっぽ)