JICA開発大学院連携第5回連絡協議会の開催報告

掲載日:2022.11.16

イベント |

概要

JICA開発大学院連携(以下、「JICA開大連携」)では、その進捗と取組をJICAと覚書締結大学間で共有し、効果的な推進を図ることを目的に大学との連絡協議会を毎年開催しており、本年も11月16日にオンラインにて開催しました。全国から59大学141名に参加いただき、JICA開大連携の更なる質の向上に向け、各大学と連携し設置する講座での取り組み成果・課題の共有を行い、意見交換を実施しました。

主な参加者

  • 開会挨拶:田中 明彦JICA理事長
  • 全体セッション『JICA開発大学院連携構想の進捗について』:紺屋健一JICA開発大学院連携推進室長
  • 個別セッション『各大学におけるプログラムでの取り組みの成果と今後の方向性』:石塚英樹一橋大学国際・公共政策大学院教授、黒川清登立命館大学経済学研究科教授、前川宏一横浜国立大学都市イノベーション研究院教授、杉田樹彦JICA社会基盤部都市開発グループ課長
  • 全体意見交換:JICA開大連携アドバイザー(猪木武徳大阪大学名誉教授、渡辺博史国際通貨研究所理事長、長谷川眞理子 総合研究大学院大学学長)、北岡伸一JICA特別顧問
  • 閉会挨拶:井本佐智子JICA理事

内容

冒頭挨拶

  • JICA田中理事長が開会挨拶を行い、100大学からの賛同への感謝を伝えると共に、複合的な危機が世界の社会、政治、経済に大きな負の影響を与える中、国づくりは人づくりであり、その根幹をなす留学生事業によって、日本の経験、価値観を共にするリーダーを育成することがこれまで以上に重要になってきていること、また、複雑な社会的課題を解決するためには科学技術の発展も重要であり、そのために留学生の受け入れや人材の国際的な循環が重要である旨を述べました。
  • また、各国の優れた人材に日本に来てもらい、日本や日本人を信頼できるパートナーと捉えて、国際社会の発展を一緒に進めるために、引き続き大学関係者の協力が重要である旨呼びかけました。

全体セッション

  • 全体セッション『JICA開発大学院連携構想の進捗について』では、JICA紺屋室長から、JICA開大連携の進捗として2,000名が開大連携構想の下で学ぶという目標が達成見込みである旨言及すると共に、今後の質の確保に向けた取り組み・各大学への期待について説明しました。それに対し、帰国生の活動支援や地域の多様性を学ぶ地域理解プログラムの重要性、戦略的に受け入れを促進すべき人材像等について質問・意見がなされました。

個別セッション

  • 個別セッションでは、『各大学におけるプログラムでの取り組みの成果と今後の方向性』をテーマに事例発表・意見交換を行いました。
  • まず、『(法・政治・経済)個別プログラムの現状と展望』について事前に行った複数の大学における意見交換結果について発表されました。一橋大学石塚英樹教授からは、成果として、各学問分野の専門家と現場の実践者とを結びつけるプログラムであることや日本の経験の長短を踏まえ留学生からも貴重な意見が聞けるプログラムである点などが挙げられ、一方で、日本の近代化と国際協力とを結びつけることやオムニバス授業における運営上の工夫・DX化の余地などの課題にも言及されました。立命館大学黒川清登教授からは、JICA留学生のみならず、日本人学生も対象に含めたJICA・放送大学共同制作「日本の近代化を知る」DVD教材の有用性や座学とフィールドスタディとの組み合わせによる日本人学生・留学生との交流機会の強化事例等につき紹介がなされました。
  • 続いて、横浜国立大学前川宏一教授より社会基盤分野の留学生教育プログラムのこれまでの成果、教育の質向上のための実践的教育やアカデミックライティング指導等の取り組み、今後の方向性としての社会実装、卒業後の継続的な協働等につき述べられました。加えて、JICA社会基盤部杉田課長より「持続可能な都市開発」コースの留学生プログラムに関し、協力大学と協働した戦略的な候補者選抜・修士研究支援、コース独自プログラムとしてのアカデミア・民間の国際活動の促進や地域理解プログラムの実施事例を共有し、意見交換が行われました。

全体意見交換

  • 全体意見交換では、3名のJICA開発大学院連携アドバイザー(猪木武徳大阪大学名誉教授、渡辺博史国際通貨研究所理事長、長谷川眞理子総合研究大学院大学学長)から、修了後のキャリアを見通した留学生と受入大学とのマッチングが重要であること、(西欧諸国との相違点として)日本が元来あったものとの調和を経て近代化してきた経緯を学ぶことが重要であること、世界における様々な開発プロジェクトの手法(ファイナンス等)の適切な選択等も知ってもらうべき、JICA 開大連携が日本の経験を踏まえつつ未来に向けた日本人学生も交えた議論の場になりうるなどの方向性について言及されました。
  • それを受け、JICA北岡特別顧問は、先進国、途上国、日本人学生交え議論することで相互に学べること、日本の現場で活躍する実務家から留学生が話を聞く場合、上から目線ではなく相手の立場にたって一緒に考えるという人柄が何より大事である点等を強調しました。また、他の先進国ではなく日本・JICAの留学プログラムは面白そうということが、帰国留学生などの口コミでも広がっていくのが良く、人生で数少ない価値ある留学先が日本であることで本人やその周辺に大きな影響を与えうることにつき言及しました。
  • 田中理事長からは、今後の展開として、もう少し未来を向いたプログラムの形も必要であり、今後の世界に向けてどのようなアプローチでやっていくのが良いか、未来について日本、世界の人で共に議論する場を各大学においてどのように作れるかも、大学と引き続き検討していきたい旨を述べました。

閉会挨拶

  • JICA井本理事より、出張先のアフリカ諸国からの留学事業への高い期待や帰国後の繋がりの意欲を強く感じ、日本人との人的ネットワークの有用性を各国が認識している点を確認したことを踏まえ、翻って日本にとっても重要な事業である点を述べました。また、途上国や世界の優秀な人材と繋がってあらゆる課題解決に取り組むことは、日本社会の活力にもなるものであり、今後もより魅力的なプログラムになるよう各大学から協力を得たい旨、改めて発信しました。

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JICA田中理事長挨拶

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個別セッションの様子(ご登壇者4名)
左上:JICA社会基盤部杉田課長、右上:一橋大学石塚教授
左下:立命館大学黒川教授、右下:横浜国立大学前川教授

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全体意見交換:アドバイザー3名及びJICA田中理事長・北岡特別顧問・紺屋室長