地球の肺を守ろう~世界三大熱帯林の現状及び 課題、その保全策について理解を深める~

掲載日:2024.06.03

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2024年5月20日、JICAは、JICA地球ひろば国際会議場にて「地球の肺を守ろう」というテーマで公開シンポジウムを開催しました。同シンポジウムには、「地球の肺」と呼ばれる広大な熱帯林を抱えるブラジル、インドネシア、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ民)の関係者、日本の有識者並びに企業関係者も登壇し、三か国の熱帯林の現状、保全の取組や課題を紹介し、保全に向けた解決策を議論しました。本シンポジウムには、会場から約120名、オンラインにて約200名が参加しました。なお、本シンポジウムは、JICA主催、毎日新聞社共催により開催し、外務省、林野庁、宇宙航空研究開発機構、産業技術総合研究所、森林総合研究所、国際熱帯木材機関より後援、住友林業株式会社、森から世界を変えるプラットフォームより協賛いただきました。

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(写真:会場の様子)

熱帯林の今

本シンポジウムは三部構成で実施されました。第一部の基調講演ではJICA専門家としてコンゴ民環境・持続可能開発省に派遣中の林野庁・大仲幸作さんより現地報告がなされました。大仲さんは、人口急増により急速に農地転換が進み、燃料用の薪炭が切り出され、森が減少しつつある現状について語り、「なぜ木が切られるのか、皆さんにも考えてみてもらいたい」と訴えました。続いて、京都大学大学院農学研究科教授の北島薫さんより、地球規模で見た熱帯林の貢献について学術的知見やご自身のフィールドワークの紹介を通じ概説いただきました。特に、熱帯林が有する多様性がさらなる生物多様性を育んでいること、熱帯林保全の成否は熱帯林を有する当該国・地域のみならず世界の気候変動対策や地域の水循環に対して大きな影響を及ぼし得ることについてご説明いただきました。

第二部では、ブラジル、インドネシア、コンゴ民政府関係者により森の減少の現状、各国の取組と保全に向けた課題について報告がありました。ブラジル環境・再生天然資源院環境モニタリング情報センター総括コーディネーターのナラ・ヴィダル・パントジャさんは、ブラジルの森林減少の現状について、これまで日本の国土面積を超える広さの森が消失したという事実を明かしました。さらに衛星画像を用い2030年までの森林減少ゼロとする目標を掲げ取組んでいるとご説明いただきました。続いて、駐日インドネシア大使館林業アタッシェのムハマド・ザフルル・ムッタキンさんからは、インドネシアの森林政策と現状についてお話いただきました。コンゴ民環境・持続可能開発省森林インベントリ整備局長のモーリス・マタンダ・カフンダさんからは、コンゴ民の森林の現状、森林保全に向けた取組や課題について紹介がありました。第二部最後にて、JICA地球環境部森林・自然環境グループ第2チーム課長の栗元優さんより、上記世界三大熱帯林におけるJICAの協力についてこれまでの協力の歴史や、人を中心とした協力の大切さについて説明がありました。

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大仲幸作さん

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北島薫さん

「青い地球は誰のもの?」

第三部では、第一部の基調講演及び第二部で三か国から挙げられた2030年までの野心的な目標や報告を踏まえ、議論が進みました。ここからは第二部に登壇された3か国関係者に加え、コンゴ民環境・持続可能開発省事務次官のベンジャミン・トイランべ・バモニンガさん、住友林業株式会社執行役員・サステナビリティ推進部長の飯塚優子さん、並びに北島さん、栗元さんにも加わっていただきました。モデレーター の毎日新聞くらし科学環境部副部長の大塲あいさんの進行により、熱帯林保全における課題の解決策について、活動主体として、①地域住民、②企業活動、③国際協力の三つの観点で議論を繰り広げました。①の地域住民については、地域住民といっても先住民族から移住してきた住民まで様々であること、地域住民・企業・政府関係者・国際協力機関等様々なステークホルダーが丁寧なコンサルテーションの下、熱帯林保全におけるそれぞれの役割を理解し合い協働して取り組むことの重要性、参加型森林管理等を通じ、住民のオーナーシップを尊重する取組について話されました。また、②の企業活動について今後は気候変動対策・生物多様性の保全・人々のよりよい生活の3つの軸が重要となること、、そして広いランドスケープ全体を俯瞰し、それぞれの土地の特徴に沿った活動が必要であることなどが話されました。③の国際協力については、衛星画像等最新技術を用い科学に基づいたアプローチをとること、国際協力を通じた協力の終了後を見据え、自国のオーナーシップを高め、成果を持続させる重要性が話されました。加えて、三か国が連携して熱帯林保全に当たって行くことの姿勢が示されました。

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左から:飯塚優子さん(住友林業株式会社)、ムッタキンさん(駐日インドネシア大使館)、栗元さん(JICA)、パントジャさん(ブラジル環境・再生可能天然資源院環境モニタリング情報センター)、カフンダさん(コンゴ民主共和国環境・持続可能開発省)、トイランベさん(コンゴ民主共和国環境・持続可能開発省)、大場あいさん(毎日新聞社)

シンポジウム開催中、会場、オンラインからも多くの質問が寄せられました。質疑応答では、ブラジル・インドネシア・コンゴ民の3か国の連携の事例について、コンゴ盆地における連携の取組事例について、インドネシアの社会的林業について、30by30(2030年までに保護区等の面積を30%とする目標)について、登壇者より回答がありました。

最後に登壇者から一言が述べられました。登壇者たちは、次世代のために森を残すための持続可能な森林資源の活用について意を一にする一方で、「この青い地球は誰のもの」との問いかけがなされ、熱帯林を保有する途上国に課せられた課題の大きさ、課題解決に向けた協力の重要性について認識を新たにしました。モデレーター の大塲さんからも熱帯林保全の問題を他人ごとではなく自分ごととして考える姿勢の大切さについて触れられ、第三部は締めくくられました。

シンポジウム終了後のアンケートでは、三か国の現状やJICAの取組、熱帯林の保全に向けた課題について理解が深まったとの声が多く寄せられました、まずは熱帯林の現状を知ることから始めないといけないという感想や、またこれからもこのような機会を作ってほしいという声も聞かれました。また、会場では休憩時間や閉会後の時間を活用して、登壇者と参加者との活発な情報・意見交換が行われました。

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第3部パネルディスカッションの様子

シンポジウム開催後、毎日新聞社モッタイナイキャンペーン事務局ウェブサイトにて、本シンポジウム開催の模様が報告されました。MOTTAINAIキャンペーン20年記念 JICAと毎日新聞社が熱帯林保全シンポ「地球の肺を守ろう」を開催 - MOTTAINAI もったいない モッタイナイ

登壇者写真© 毎日新聞社
会場の様子© JICA

当日配布資料:

登壇者投影資料:

当日の動画: