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5S-KAIZEN-TQM手法の活用に向けたアフリカ10か国広域セミナー

掲載日:2025.08.15

イベント |

2025年7月7日から11日までの5日間、「アフリカ地域5S-KAIZEN-TQMを通じた保健医療サービスの質向上のアフリカ地域広域展開促進」における第2回広域セミナーがベナンで開催され、対象7カ国(エチオピア、ジブチ、セネガル、タンザニア、ベナン、マダガスカル、マラウイ)に加えて、5S活動の実績がある3カ国(ウガンダ、ガーナ、チュニジア)も招待し、計10か国32名が参加しました。 なお、本セミナーは、日・アフリカ関係の強化に資する事業として、“TICAD9パートナー事業”にも認定されました。本セミナーでは、持続性をテーマとして、各国ごとの取組み事例や視察した病院の課題に対してグループワークを取り入れた議論を行い、最後には本案件終了後を見据えた持続的な活動計画を作成して、今後実践に移ります。

セミナー参加者集合時の様子

アフリカ地域における保健医療サービスの質向上の必要性

サブサハラ・アフリカ地域における保健指標等の数値は改善してきているものの、近年の経済成長に伴う食習慣や生活様式の変化により、がんや心臓病、生活習慣病等の非感染性疾患(NCDs)の増加が深刻になりつつあり、これまで以上に質の高い保健医療サービスの提供が求められています。課題として、医療従事者、医療機器、医薬品、施設運営費等の資源不足、患者記録や臨床指標、疫学データ等の整備不足が挙げられ、医療需要に応じた保健医療サービスが提供できていない状況にあります。医療施設が各レベルに応じた治療を持続的かつ確実に提供していくためには、資源の最適化及び保健医療サービスの拡大・質の向上を含めた病院運営管理能力の強化が不可欠です。
そこで本協力では、医療施設の運営改善及び保健医療サービスの質向上のための手法としてアフリカにおいて過去約20年にわたって展開してきた日本型品質管理手法(5S-KAIZEN-TQM)を用いて、医療の質向上を目指しています。第1回広域セミナーはタンザニアで開催され、参加者は 5S-KAIZEN-TQMに取り組み、成果を出しているタンザニアの病院を目の当たりにして目指すべき病院像を考える機会となりました。第2回となる本セミナーでは、保健省主導で主体的に活動を全国展開しているベナンの取り組み姿勢に刺激を受ける参加者が多く、活動の持続性を再考する機会となりました。

セミナー中の意見交換の様子

5S-KAIZEN-TQMの協力の歴史と実施意義

日本の産業界より発展した品質管理手法である5S、KAIZEN、TQM(Total Quality Management)は、保健医療サービスの質向上を達成するための有効な手段の一つです。5Sによる職場環境の改善を導入として、段階的により複雑な問題解決に現場主導で取り組んでいく実践的なアプローチになります。JICAは、2007年から実施されたアジア・アフリカ知識共創プログラム(通称「きれいな病院プログラム」)により、5S-KAIZEN-TQMアプローチをアフリカ15か国に普及しました。その後、技術協力プロジェクト等により他国にも展開し、2024年時点ではアフリカ、アジアを含む40か国の少なくとも2,000施設で5S-KAIZEN-TQM活動が実施されています。
5S-KAIZEN-TQMアプローチは、資源に限りがある医療施設の組織改善、病院職員の態度の変容、サービスの質を重視する組織文化の醸成に役立ち、さらにその結果として、病院環境の改善や患者待ち時間の削減、患者目線のケアによる患者満足度の向上、また在庫管理・財務面等の病院のパフォーマンスに正のインパクトを与えることが確認されています。同アプローチを保健課題解決に向けた手段の一つとして、JICAは保健医療サービスの質向上に取り組んでいます。

ベナンの病院視察時の様子

参考:事業概要

本協力は、日本型品質管理手法(5S-KAIZEN-TQM)を通して、医療施設の運営改善及び保健医療サービスの質向上を目指すものです。アフリカ地域において5S-KAIZEN-TQM活動にかかる知見・経験の学びあいを促進しながら協力を行っています。