5S-KAIZEN-TQMとは

5SやKAIZENは、共に日本の産業界で開発された職場環境改善及び品質管理の手法で、一般的には5SはKAIZENの一手法と考えられています。しかし、産業セクターからKAIZEN手法を学んだスリランカのキャッスルストリート母子病院のカランダゴダ院長は、まず5Sに焦点をあて、部門ごとに職場環境の改善(見える改善)から着手し、現場で働く一人一人の問題意識の醸成や、組織体制の強化を行った後、段階的にKAIZEN手法を用いた複雑な問題解決に発展させていくことで、資源の限られた公立病院のパフォーマンス向上に大きな成果を挙げました。スリランカの経験をもとに、JICAは5S、KAIZEN、TQMを段階的に導入していく5S-KAIZEN-TQMアプローチを保健分野におけるKAIZEN手法として体系化し、同手法の普及を通じて途上国における保健医療サービスの質改善を実現することを目指しています。

5Sとは、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の各ステップの頭文字をとって名付けられた標語です。簡単で、短期間で成果を可視化することができるため、5Sの実施により職員自身が「働きやすい」などのメリットを実感することができ、職員の質改善活動に対する意識や態度をポジティブに変容させることに役立ちます。また、5S実施段階に、各部門ごとの職場改善チームや、施設全体の5S活動の進捗を管理する質改善チームなど、組織として質改善に取り組むための体制強化を行います。

次に、5Sによって醸成された職員のポジティブなマインドセットを土台として、KAIZENを実施します。KAIZENは、職員が認識する問題を、現場主導で少しずつ継続的に改善していくプロセスで、KAIZEN活動の実施を通して医療の質や安全性、生産性の向上に取り組みます。KAIZEN活動においては問題の定量的な把握や可視化に努め、部門を超えた活動を奨励することで、業務プロセスにおけるムリ・ムラ・ムダの低減を図ります。そして、最終的にはTQM、つまりKAIZENが継続的かつ自発的に実施され、組織が効果的かつ効率的に運営され、その機能が全体として最適化する状態を目指します。これらの取り組みにより、保健医療サービスの質強化を図るとともに、保健システム全体の強化を目指します。

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また、5S-KAIZEN-TQMアプローチでは、参加型かつ組織的な質管理促進の仕組みとして、まず組織内に質改善チームであるQIT(Quality Improvement Team)およびWIT(Work Improvement Team)を編成します。導入部分である5Sの実践を通して、これらの体制を整備・強化することが重要です。それによって、上から指示された活動を実施するのではなく、それぞれのチームが主体的に問題を発見しながら解決していくため、ボトムアップ型の活動となります。そのため、自発的かつ継続的な問題分析、解決を促すことを特徴としています。

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