パキスタンで住民と政府をつなぐ平和への取り組み(最終セミナー開催)
掲載日:2026.10.09
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パキスタン北西部のアフガニスタン国境付近では、長年、住民が行政に意見を届ける機会が限られてきました。JICAは、2022年から住民と自治体をつなぐ仕組みづくりを支援しています。今回、その成果を共有する最終セミナーが開催されました。
最終セミナーの様子
パキスタンの連邦直轄部族地域と呼ばれていた地域では、独特な社会的構造により、近年までパキスタン政府の地方行政制度が十分導入されておらず、独自の社会制度を維持していました。例えば、地域の課題に対しては、選挙ではなく、伝統的な慣習にもとづいて、部族の長老たちが話し合いで解決してきました。
2018年に同地域がハイバル・パフトゥンハー州に併合されてからは、地方自治制度の整備が進み、2022年には史上初の地方議会が発足しています。しかしながら、同地域はパキスタンでも最も貧しい地域のひとつであると同時に、アフガニスタンからの影響を受けやすい不安定な地域でもあります。
2022年より、JICAは同地域の自治体であるテシル政府(日本の市町村に近い地方自治体。)を対象に技術協力事業「ハイバル・パフトゥンハー州新併合地域の地方行政官能力強化プロジェクト」を実施しています。プロジェクトでは、新しく導入された地方自治制度が地域に根付くように、行政官などへの能力強化を行っています。例えば、対象地域の地方議員、約800名に対して、地方議会の役割や自治体運営の基礎に関する研修を行いました。
参加者の内、約2割は女性議員です。また、テシル政府の提供する公共サービスや計画に住民の声を反映させるため、日本の経験もヒントにしながら中期開発計画の策定についての技術指導を行い、女性への職業訓練やスポーツ・啓発活動なども行いました。こうした取り組みにより、住民の意見を反映した中期開発計画が初めて各テシル政府で策定されるなど、住民参加型の自治体運営が少しずつ定着し始めています。
住民意見の聞き取りの為のコミュニティ会議の様子(男女別に開催)
女性への職業訓練の様子
ハイバル・パフトゥンハー州の州都ペシャワールで開催されたプロジェクトの最終セミナーでは、州政府やテシル政府関係者など約130名に対してプロジェクトの成果が報告されました。
州政府のミーナ・カーン大臣は、本プロジェクトによってコミュニティの優先課題が特定され、包括的な計画が作成されたことの意義を指摘し、計画が効率的・効果的な公共事業の実施に繋げられるように、国会議員を含む幅広い関係者と連携することの重要性について強調しました。
また、セミナーでは、「自治体は住民から多くの支援ニーズを伝えられるが、これまでは知識不足でどのように優先順位をつけて取り組んでいくべきかわからなかった。プロジェクトから学んだ方法は、女性や若者を含む地域の全ての人の利益になる。」という女性議員の声も紹介されました。
ミール・アリ・テシルで地方議会の議長を務めていたアリ・アフメッド・サイード氏からは、「併合地域では、当初、多くの人が新しい地方行政制度や自治体の運営方法について明確に理解していなかった。本プロジェクトを通じ、地域の支援ニーズやアイディアを拾い集め、どのように具体的な行動に移していけばよいのかを理解することができた。」との発言もありました。
ミーナ・カーン大臣(地方行政・選挙・農村開発局)のスピーチ
セミナー中に動画を通じてメッセージを届ける女性議員
地域の課題について住民と自治体が話し合い、地域の将来に対する住民の声に、自治体が応える仕組みを作ることは、住民の行政への信頼につながります。このような信頼関係の構築は、アフガニスタンと国境を接し、治安が不安定な地域の安定と平和を支える土台となるものです。
JICAはテシル政府の開発計画に含まれる公共施設の整備等も通じて、引き続き、住民の声が形となって表れる地域づくりを支援していきます。