独立行政法人国際協力機構(JICA)
国際緊急援助隊事務局長
近藤 貴之
世界中で災害が多発しています。近年は特に、巨大化する台風やハリケーン、予測困難な大地震、火山噴火、感染症など、甚大な被害をもたらす自然災害が各地で発生しています。
気候変動や加速する都市化の影響も少なくないと指摘されていますが、大規模災害による被害は脆弱な立場にある人々ほど深刻化する傾向があり、直接的に生命を脅かすことから、「人間の安全保障」に対する重大な脅威となっています。
思いがけない災害に見舞われ、この瞬間にも困難な状況にある人々に対して、一刻も早く支援を開始することは、極めて重要な人道的責務であると認識しています。
日本による海外への緊急援助活動は、1970年代後半のカンボジア難民支援に始まります。内戦によりタイへと逃れた多くのカンボジア難民を支援するため、日本政府は視察団を派遣し、その報告を受けて国公立・私立病院、日本赤十字社、JICAなどで構成されるJapan Medical Team(JMT)を派遣しました。この活動には延べ400名を超える医療関係者が参加しています。さらに、その後のメキシコ地震やコロンビア火山噴火への対応などを契機として救助チームが組織されるなど、さまざまな変遷を経て、現在の体制[1]が構築されました。
こうした歴史の中で発展してきた国際緊急援助隊(JDR[2])は、迅速な対応と現地への敬意を重んじた活動により、国際的にも高い評価を得ています。
一方で、日本も阪神・淡路大震災や東日本大震災といった未曽有の大災害において、多くの国々から多大な支援を頂きました。救助チームや医療チームの派遣、物資支援、義援金など、さまざまな形による国境を越えた助け合いは、各国との信頼関係の構築・強化にもつながってきたものと感じています。
混迷を深める国際情勢の中にあっても、人道的支援の重要性は変わるものではありません。むしろ、その必要性はますます高まっていると認識しています。
JICA国際緊急援助隊事務局は、今後も日本国内の関係者の皆様との連携を基盤とし、迅速な緊急対応を実現するための日常的な訓練・研修の充実に努めてまいります。そして有事の際には、被災地の方々に寄り添い、心を込めて、全力で支援活動を遂行していく所存です。
[1] 救助チーム、医療チーム、感染症対策チーム、専門家チーム、自衛隊部隊派遣、緊急援助物資供与。
[2] Japan Disaster Relief Team