2015年 バヌアツサイクロン

被災地の状況に合わせたきめ細やかな医療支援

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ビラ中央病院でサモアの医師と連携して手術を行う隊員

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倒木をまたぎ、徒歩で巡回診療に向かう隊員(離島)

2015年3月13日から14日にかけて、瞬間最大風速70メートルの強力なサイクロン「パム」が、南太平洋の島国バヌアツを直撃しました。同サイクロンにより、大小83もの島々で構成される小島嶼国であるバヌアツでは、10万人以上が避難をし、首都ポートビラにおいては、90%の建造物(家屋、政府庁舎、病院等)が崩壊するなど甚大な被害をもたらしました。

JICAはバヌアツでの被害に対し、様々な支援を行いました。物的支援としては、現地でサイクロンによって住環境を失われた多くの人々が避難していましたことを受け、バヌアツ政府からの要請に基づき、現地で必要性が高いとされた、テント、プラスチックシート、スリーピングパッドなど2,000万円相当の物資供与を行いました。

人的支援としては、まず、災害直後には国連災害評価調整チーム(UNDAC)メンバーを現地に派遣し、被害の初期評価のほか、国際支援の調整等を行い、国際社会のバヌアツ支援の円滑化を図りました。引き続いて、JICAは約2週間国際緊急援助隊医療チームを派遣しました。

まず3月16日に、被災状況を確認するため調査チーム6名を派遣し、翌17日には、バヌアツ政府からの要請を受けて医療チームとして8名を追加派遣、その後は調査チームメンバーも医療チームに振り替えたうえ、総勢14名で支援活動を開始しました。医療チームは、現地保健機関や他国のチームと支援方針の検討を重ね、首都の病院での医療ニーズが高いことや、離島の医療施設の被害現状が把握できていないことを確認しました。そのため医療チームは、首都ポートビラの中央病院と北部のペンテコスト島の二手に分かれて活動することとしました。

ポートビラの中央病院には他の島からも多くの患者が搬送されており、同病院の医療スタッフは大変疲弊していました。このような状況の中で、医療チームは、医師による回診、手術の指導・補助、看護師による手術室での看護活動、薬剤師による調剤などの支援活動を実施しました。特に、台風後のガレキ処理に伴う外傷患者が増加していた中で、医療チームの支援によって病院側の負担が軽減され、現地のスタッフからは厚い謝意が示されました。

ペンテコスト島では、水や電気が不足する環境の中で、ボートやトラックの荷台に乗って島内の村落を巡回し、医療施設の被害調査を実施しました。また、ジャングルのような道を歩きながら巡回診療を実施し、多くの患者の診療を行いました。ある村では、医療チームが到着した際には、既に診察希望の住民が列をなして待っていました。医療チームは到着後すぐに活動を開始し、被災後の医療支援が届いていなかった人々に対して治療を行いました。村長からは、サイクロン後に支援に入ったのは日本の医療チームが初めてであり、アクセスが難しい内陸部まで足を運んだことは大変ありがたい、との言葉をいただきました。

医療チームはポートビラとペンテコスト島での活動を終え、バヌアツ政府に活動報告を行い、3月30日、帰国の途につきました。今回の派遣での支援患者数(調剤なども含む)は、約1,000名に及びました。道路や通信インフラが復旧していない中、チームの一人ひとりが何役も担いながら最大限に力を発揮した成果です。

従来の医療チームは、基本的診療機能を備えた診療テントと医療資機材を展開して活動を行っていました。しかし、今回のように、大規模な展開では見過ごされがちな、きめ細やかな医療支援を必要としている被災者は数多くいることがわかります。国際緊急援助隊医療チームは、被災地の状況に合わせて、被災者が真に必要とする医療支援を提供できるよう、柔軟な活動ができる体制を引き続き整えていきます。

日本の対応
  • 国際緊急援助隊医療チーム派遣:3月16日〜3月30日(16日〜18日は調査チームとして活動)
  • UNDACメンバー(1名):3月14日〜3月29日
  • 緊急援助物資供与(約2,000万円相当)