JICA九州の研修紹介

研修記録では、JICA九州で実施されている研修員受入事業について担当職員が研修の現場をレポートしていきます。

第4回 「南米地域 中小企業・地場産業活性化」が閉講

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TOTOでの工場見学

8月2日より約4週間、中南米地域の研修員13名がJICA九州の「南米地域 中小企業・地場産業活性化」コースに参加しました。

JICA九州では、この研修員受け入れ事業は年に約120件行われており、当コースはその中でも中小企業や地場産業が盛んな北九州の地域的特性を生かしたものです。研修員は様々な中小企業を視察し、それを自国の発展につなげることを目的とし、研修の最後には、帰国後どのようなことを実行するかの計画を作成し発表しました。

8月26日にTOTO本社へ行き、CO2削減や人材育成、5S活動や会社運営の方法などの企業の取り組みについて社員の方から説明を受けました。研修員たちはメモをとりながら真剣に話しを聞き、説明後の質疑応答の時間には「職場の改革に反対する人をどのように説得しながら改革を進めたのか」や「CSRに取り組む結果、市場に変化は出るのか」、また「改革のために、勤務時間外に何をしたか」など、実際に母国に取り入れることを想定した積極的な質問が多くあがりました。その後、研修員たちは企業の理論が実際どのように生かされているのかを工場見学を通して学びました。

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無事研修を終えた参加者達

8月27日のプログラム評価会では、研修員たちがこの研修を通して何を感じたか、またプログラムの改善点はないかを一人ずつ発表しました。その中には「企業の活性化には人材育成が大切であることを痛感した。」という意見や、「時間厳守やいすをきちんと片づけることや、ごみをきちんと捨てるなどの基礎的な行為が日本企業を発展させてきた一要因となっていると感じた。」、「中小企業が努力し、成長してきたことを見て、自分の国にも可能性があると感じた。」などの意見が出ました。

今回の研修を通して自国との違いを目にし、企業を活性化するためのヒントを得たことで、自国を変えていこうという意欲が見受けられました。日本で多くのことを学んだ研修員たちの今後の活躍が期待されます。

第3回 ゴミの世界の福岡方式 パキスタン廃棄物処理対策

現在、多くの開発途上国では、ゴミの不適切な管理が問題となっています。パキスタンにおいても、不十分なごみの収集、不法投棄、ダイオキシンの発生など多くの問題を抱えています。今年度で3度目となる研修には、パキスタンの各地から廃棄物管理に関わる7名の行政官を受け入れました。

福岡市環境局、ふくおか環境財団、大成管理開発株式会社のご協力のもと、福岡県西部埋立場にて準好気性埋立処分場設計研修が実施されました。この準好気性埋立構造は、福岡市と福岡大学の協力により開発された埋立処分方式であり、通称、「福岡方式」と呼ばれています。埋立地の底に石と管からなる排水管を設け、ごみによって汚染された水をできるだけ速やかに埋立地の外へ排除し滞水させないようにした最終処分場です。

当日は、最終処分場横の空き地で、竹を使用した排水管、タイヤを使ったガス抜き管の作成方法を日本人専門と身体を動かしながら朝から夕方まで学び、とても実践的な研修内容となりました。研修員からも「実践的であり、実際に建設したことでしっかり理解することができた」「現地で調達可能な資材で建設が可能であるため、福岡方式を採用できるかもしれない」との多くのコメントがありました。

この研修では、これまで3年間にわたり25名のパキスタンの技術者・行政官を受入れてきました。今後、彼らが現地の日本人専門家と協力することで、福岡市の廃棄物管理をお手本としたパキスタン独自の廃棄物管理行政が進んでいくことが期待されています。

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研修前のラジオ体操

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研修前のラジオ体操

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タイヤで排ガス管製作


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日本人専門家と配水管製作

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日本人専門家と配水管製作

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記念撮影

第2回 日韓共同研修 大気環境保全管理

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サンプリングを実施した煙突

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サンプリング風景

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サンプリング風景

JICA九州と政府開発援助を担当している韓国国際協力団、KOICAは、日韓共同研修を2コース実施しています。「大気保全管理」では東アジア7カ国13名の研修員を迎え、10月5日より研修を開始しました。アジア地域の多くの開発途上国では、大気汚染に関して十分な知識や経験がないため、研修員が日本と韓国を訪問し、韓国ソウルの大気環境保全行政、また、環境モデル都市にも選ばれた北九州市の公害の歴史や政策を学ぶことで、東アジア地域の人材育成、国を超えたネットワークづくりを目指しています。

10月8日には、北九州市の工場立ち入り検査の実施事例を見学するために、戸畑共同火力を訪問しました。当日は、北九州市環境局山下課長から、北九州市の工場立ち入り検査の重要性や実施体制に関する講義を受け、その後、ボイラーからの排ガスを排出している煙突に登り、サンプリング方法と分析項目の確認を行いました。

煙突のサンプリング地点は地上15メートルにあり、直径30センチメートルほどのサンプリング窓を開けると、分析技術者が勢い良く出るガスを素早く採取していました。国によって検査項目は異なりますが、研修員からはその項目やサンプリング地点などについて多くの質問がありました。

北九州市山下課長からは、「良い法律があってもそれを守る体制が必要」とのコメントがあり、行政官として民間企業を監視することの必要性を改めて研修員は感じていました。

第1回 未来の中国を担う中国青年幹部が福岡訪問
─環境分野について視察─

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博多青松高校にて生徒と交流する団員たち

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駐福岡総領事館にて総領事を囲んで

2000年より、日本政府関係者と中国共産党中央組織部との間では、幹部職員の人材交流事業が実施されています。中国側からは党幹部の養成機関である中央党校にて1年間の研修を受けている青年幹部が参加。訪日団は中央党校の海外研修としてこれまで4回実施されている。日本側は日本政府・地方自治体・民間関係者で構成され、3回の中国訪問を行ってきました。今年9月に日本側が4回目となる中国訪問を行ったのを受け、10月25日には、中央党校訪日団約100名が来日し、9日間の視察を行いました。

訪日団は始めに東京において、日本の文化や経済状況などの講義を受けたあと、「産業1」「産業2」「環境」「地域振興」の4グループに分かれて分野別の視察を行い、その後、兵庫・愛知・九州・北海道への地域別プログラムへ入りました。

環境グループ24名は、10月24日から10月28日までの4日間、福岡県を訪問し、環境対策を実践しているビール工場や、北九州市エコタウン・福岡方式廃棄物処理場など、福岡県・福岡市・北九州市内の各施設を見学し、九州独自の環境対策について学びました。さらに中国語を学ぶ高校生との交流プログラムでは若い学生と活発なコミュニケーションが行われました。

訪日団は、「福岡県は日本の発展を支えた産業地域であり、今回の視察を通じて環境対策にも力を入れていることを強く認識しました。実際に今回現場を視察することができ、また、福岡県知事・北九州市長・福岡市長との意見交換も行うことができたことは、非常に有意義であり、今後も両国の友好とそれぞれの発展のために努力したいと思います」と充実した視察を振り返りながら、29日に関西空港経由で帰国の途につきました。

WTO加盟も果たし、産業発展が著しい中国では、環境対策が課題となっています。今回の視察で、企業・地方自治体・住民が一体となって環境対策に取り組む様子は、彼らの目には新鮮に映ったようです。

彼らが、将来、中央組織の中心幹部になった時には、今回の福岡での経験が自国の社会発展に是非活かされることを期待しています。