自らの手でイノベーションを

【写真】Mr. Towfiq Hossain(ホセインさん)九州大学システム情報科学府 修士課程
Mr. Towfiq Hossain(ホセインさん)

 九州大学修士課程に在籍されているホセインさんにお話を伺いました。バングラデシュ出身のホセインさんはイノベーティブ・アジアの長期研修員で、この春卒業・就職と大きな転機を迎えられます。今回、ホセインさんの留学経緯や、就職活動を含む日本での生活に関してインタビューさせていただきました。

日本留学の経緯

ハイキングを楽しむホセインさん

 バングラデシュの大学で化学工学を専攻し、卒業後、友人らとともにスタートアップを立ち上げました。この会社で私たちが目指していたことは様々なデザインに順応することです。例えばオフィスデザインに取り組む際、2つの側面からのアプローチが必要になります。ひとつは土木工学による建築的な面、もう1つはウェブデザインのようなメカニカルな側面です。実際私の会社には、ウェブデザイナーやハードウェア(機械、装置)に従事する仲間がいました。私の専門は、小さなソフトウェアをデザインすることでした。例えば、機械が一定の温度に達するとセンサーが作動して自動的に機械をシャットダウンさせるという仕組みのためのプログラミングなどをしていました。実は私と同じようなエンジニアが会社にたくさんいたので、技術的な面では非常に簡単な仕事でした。しかし、コンサルティングを行う中で、様々な会社のトップやエンジニア達の多様な意見をすり合わせすることには、正直かなりのストレスを感じていました。それと同時に、あらゆる立場の人々との交流を通して、高度な教育の必要性を感じるようになり、JICAの奨学金プログラムに応募することを決意しました。

研究について

アニメキャラクターとホセインさん

 私の卒業研究のテーマは「磁気渦系のスピンダイナミクスに関する数値的および実験的研究」です。とても専門的で難しいと思うので深くは説明しませんが、テーマにある通り研究のおおよそは実験に依るものです。理論的に示されていることを実験で確かめるというサイクルを繰り返しました。幸い私の研究室には、特殊な実験に必要な器具が揃っていたので、そこで研究に没頭することができました。ただ、教授から実験結果の誤差を指摘され、ちょうど今部分的に再実験を行っているところです。

日本での生活について

 多くの留学生にとっては、日本語ができないとかなり生活がしにくいと思います。しかし私の場合は特殊で、日常会話であれば日本語が話せます。実はバングラデシュにいたころ日本のアニメを7,8年ほど観ていました。当時は覚えようと思って観ていた訳ではないのですが、自然と理解できるようになりました。これは言うまでもなく、留学中大いに役立ちました。また同じ研究室には日本人学生が大勢いたり、留学の1年目は九州大学の寮で生活したため、日本人のルームメイトと過ごしたりするうちに、さらに日本語は上達していきました。しかし就職する際に日本語のスコア提出は求められず、代わりに英語のスコアが必要でTOEICを受験しなければなりませんでした。

就職活動について

 就職活動はとてもスムーズなものでした。就職する予定の会社では私の友人が既に働いていることもあり、もともと興味がありました。2日間のインターンシップも体験し、最終的に出願することにしました。しかし一番の決め手は、私の知識を最大限に生かすことができると考えたからです。私は化学工学やソフトウェア工学、そして物理学といった幅広い学問の教養を蓄えてきました。そのため、会社の規模が大きく、あらゆる分野の技術が結集した製品の生産に携わりながら働きたいと考えて就職活動に臨みました。また、昔日本で働いていた父親が購入したテレビやラジオなどの日本製品が身近にある環境で育った影響もあり、日本の大企業で働きたいという意思をもつようになったのではないかと思います。

専門性の高い内容の話もかみ砕いて伝えようとしてくださったホセインさん。自身が築いてこられたキャリアに強い誇りをもっておられる姿勢が印象的でした。留学を通して深まった日本とのつながりが、今後のホセインさんの人生をより一層素晴らしいものにすることを願っています。

 取材/文章 JICA九州インターン 鳥羽乃愛(長崎大学)