「地域の課題と真正面から立ち向かい、奮闘する人が必ず、いる」-球磨川が蒸発しそうなほどの坂本への熱い思いを共有できて光栄-

【写真】阪本竜也:2021年度3次隊 マラウイ 環境教育熊本県八代市坂本町配属 特別派遣前訓練生
阪本竜也:2021年度3次隊 マラウイ 環境教育

[訓練開始前]

復旧が進む球磨川沿い
(道の駅さかもと前)

1.特別派遣前訓練までの心境
 マラウイ派遣が1年間延期となったことを受け、2020年6月から2021年3月まで、大阪府のとある児童一時保護所にて働かせていただいておりました。この枠は、大阪府の吉村知事が、COVID-19による影響で職を失った方のために特別に用意された公務員非常勤職員の枠でした。マラウイへの思いを募らせながら、青年海外協力隊事務局のオンライン研修を受ける日々。初めての社会人生活ということもあり、不安を抱えながら、本当に落ち着きなく過ごしておりました。2021年2月、一時保護所での勤務が終わりに差し掛かった頃、特別派遣前訓練の案内が届き、すぐに応募しましたが、3月になって、一時保護所でもう少し働かないか、という話をいただきました。栃木で特別派遣前訓練に参加する予定でしたが、急遽お断りしました。しかし、年度をまたいで勤務する場合、再度面接を受ける必要があることがわかり、就職難を抱える方の枠を空け、自分の経験を積んでおくためにも、やはり特別派遣前訓練を受ける方がよいと判断し、JICAに特別派遣前訓練の枠がまだ余っているかどうか確認を取らせていただきました。そんな訳で熊本県八代市坂本町に派遣、ということになったのですが、奇しくもコロナウイルスが運んできた「さかもと」との縁にあやかる形となりました。非常に不思議な気持ちです。

2.特別派遣前訓練に向けて準備したこと
 3月までの業務で、かつ4月8日に熊本入りだったため、バタバタしてほとんど準備できませんでした。要請内容を拝見し、そこで初めて、坂本町も、人吉市に大きな被害をもたらした豪雨災害によりダメージを受けたことを知りました。あまり報道されていないと感じました。Google mapで上空から八代市と坂本町を見たのですが、坂本町から周辺地域へのアクセスが限られている印象を受けました。そういった情報をもとに、自分に何ができるだろうと、ちっぽけな想像力を巡らせるだけで精一杯でした。

[訓練や現在の生活]

つるばみ
ビニールハウス設営

1.実際の活動内容
 普段は①一般社団法人さかもと、②さかもと温泉センタークレオン(道の駅さかもと さかもと館)、③農事組合法人鶴喰なの花村、の3団体さんで活動させていただいております。具体的には、豪雨災害で被災した①、②は営業再開に向けてのお手伝い、スタッフの高齢化が課題となっている①、③はHP編集など、といった活動をしております。③については、田植えやにんにくの根切りなども体験させていただきました。また、要請内容に記載されていたことだけでなく、活動内容は多岐に亘っています。ラジオ番組出演や、ビニールハウス設営など、まさか自分がこんな活動をするとは、と驚かされました。と同時に、クオリティはともかく、自分が意外とやればできることにも驚かされました。さらに今後は、土砂崩れが起こった場所を中心としたVR動画の撮影・編集・発信、坂本中学校との交流会を行っていく予定です。

2.現在の生活の様子
 訓練開始当初は、3団体さんや坂本町の歴史や災害の現場を見て、頭と心を整理するのに時間を要しました。現在は坂本町に慣れてきたものの、国道219号線の一部が崩落したこともあり、雨の強い日に坂本町に向かうことに少し抵抗があります。しかし、3団体さんが待っていると思うと、じっとしていられない性格も作用し、活動に行きたい気持ちが抑えられません。また、そう思えるほど坂本町には魅力がたくさんあります。

日光の棚田

3.坂本町の魅力
 坂本町は球磨川やその支流沿いに発展してきた地域で、山と川に挟まれたような地形に集落が点在しています。荒瀬ダムの撤去が行われ、日本で初めてダムを撤去したことや、美しい日光の棚田が有名です。坂本町の魅力は、不知火海に面する八代市の市街地から、車で30分ほど走れば、山奥に来たかのような気持ちにさせてくれるところにあります。また、もち米をベースにした生地であんこを包み、きな粉をまぶしたぼたもちは絶品です(各家庭で味や食感が微妙に異なるらしいです。そこも面白い)。八代市で物販のお手伝いをしたところ、すぐに売り切れてしまうほど、八代市では有名で、坂本の特産品となっています。

4.坂本町の課題
 山と山の間を球磨川が流れているため、球磨川の水位が非常に上昇しやすい地形であることは間違いないのですが、吸水する土壌が失われつつあることも、今回の豪雨災害の被害を助長した原因の1つでもあります。本来の森は、木や、木々の間の草本や低木の根が密接に絡み合い、斜面でも土壌が流失しにくくなっています。しかし、行き過ぎた間伐や皆伐、間伐後の管理不足により、木々が細くなり、根は短くひげ状になります。さらにシカが木々の間の草本や低木を根こそぎ食べてしまい、土壌が露出しかつ流失しやすくなります。これらの影響により、数多くの谷に降った雨がそのまま球磨川に流れ込んで球磨川は一気に増水し、土砂災害を併発しました。この災害を機に、さらに人口は3000人を下回り、坂本村発足時の1961年の人口18000人から6分の1にまで減少しました。この状況を改善するには、まずは坂本町の山の状況を知ってもらう必要があると感じています。

道の駅さかもと 窓ふき

5.活動の目標
 3団体さんには、これからも継続的に、変わらず営業していただきたいです。特に、①の鮎やな食堂が営業を再開する復興商店街のオープニングセレモニー、さかもと館復興イベントが行われる7/3に向けて頑張っていきたいです。私の願いは、坂本町が復興し、坂本町で存分に遊べるようになることです。いつか坂本町で球磨川下り(ラフティング)をしたい…!そのためには、坂本町が復興し、安全だということをアピールしなければならない、と考えております。しかし、坂本町が被災したということは、ほとんど知られておりません。その周知から始める必要があると感じており、VR動画の発信によりそれを担えると考えております。自分ができることを最大限やりきり、それが坂本町復興の一端となることがこの訓練の目標です。

[今後に向けて]

1.特別派遣前訓練に参加される方へ
 地域の課題を発見し、それに向けて自分ができることを探し、行動していく、という点では、海外での活動に通ずるところがあると思います。その地域の課題と真正面から立ち向かい、奮闘する人が必ず、現地に1人はいるはずです。そのような方々と1人でも多くつながり、地元住民の方の声を聴けば、自ずと自分がすべきことが見えてきます。その中で自分ができることを1つずつやっていくことが最も重要であると気づかせてくれたのは、現地で協力してくれた方々であり、この訓練のおかげです。また、地元メディアの力も借り、自分たちが何をしているのかを認知してもらうのも大切だと思います。海外での活動に向けての実践訓練になるので、是非ご参加ください。決して回し者ではございません。

2.受け入れ自治体の方々へ
 お忙しい中にも関わらず、どんな性格や能力があるかわからない「よそ者」を受け入れてくださり、ありがとうございます。失敗しても受け止めて下さりありがとうございます。本来支援する側の私が、いろいろな面で支えられ、今までより多くのことができるようになりました。本当にありがとうございます。様々な「ありがとう」がありますが、やはり3か月しか一緒にいられないこと、非常に残念です。しかし、球磨川が蒸発しそうなほどの坂本への熱い思いを共有していただけていること、大変光栄です。訓練終了後もお体に気をつけて、くれぐれもご自愛ください。応援し続けます。まだもうしばらくお世話になりますが、よろしくお願い致します。