インターンのアリーナさんが母国ウクライナを紹介します

2020年10月1日

アリーナさん

 ウクライナはポーランドとロシアの間に位置し、面積は日本の二倍ですが、人口は約1/3(4,198万人)しかいません。共通語はウクライナ語とロシア語で、ウクライナ人は両言語を自由に使い分けます。ウクライナ語はロシア語にかなり近いですが、ベラルーシ語やポーランド語の方がより近いです。共通語の普及度や方言、文化の特徴は地域によってかなり違います。例えば、ウクライナの西部に住んでいる人の母語はウクライナ語ですが、方言がたくさんあり、民族衣装の種類もとても多いです。その反面、東部は長い間ロシア帝国に支配されていたため、多くの人はロシア語で話すようになり、方言や文化の特徴が多く消えてしまったようです。しかも、ロシア語は方言がないため、遠く離れた地域の人に会っても、言語上の違和感を感じることがありません。でも、逆に私は、日本の方言をうらやましく思います。地域の特有な言葉があれば、他の地域の人との出会いはさらに面白くなると思うからです。

キーウの中心部

 ウクライナ人の気質ですが、傾向としてとても気さくで率直な人が多いという印象です。あまり親しくない人とでもあらゆるテーマについて良く話します。政治やお金がタブーだという考え方もありません。初対面の人でもプライベートなことや、デリケートな話題について本音で語り合い、その結果すぐに仲良く(または仲が悪く)なります。ウクライナ人は空気を読めないわけではありませんが、人間関係に関する価値観は日本と大きく異なります。調和よりも、親しさを重視している人が多く、意見の衝突によって絆を強めるという考え方といえます。人間関係の構築は日本に住むウクライナ人にとって最もハードルが高い問題です。ウクライナ人は周りの人を深く知り、親密な関係を持ちたがりますが、日本でこういう関係を築くのには長い時間が必要です。

キーウの独立広場

 ウクライナの多くの伝統は大昔に信仰されていた多神教や10世紀に普及したギリシア正教に根付いています。多くの祝日は公式に正教と関係があっても、その祝日の儀式やしきたりは多神教から発生しています。例えば、ウクライナには、クリスマスに動物の衣装を着て太陽の形にした飾りを持ち歩き、他人の家を訪れ、祝い歌を歌ってお菓子をもらうという伝統があります。こうした習慣は大昔から存在しているので、そもそも正教とは関係ないと言われています。また、復活大祭にきれいな装飾のついたイースターブレッドや色彩に富んだエッグを食べる習慣がありますが、これも多神教の伝統とキリスト教の信仰が混在したものと言えます。

ウクライナのカルパチア山脈

 日本とは違い、ウクライナでは宗教を信仰している人が増えつつあります。その主な理由はソ連時代に宗教が禁止されており、禁断の果実のようなものだったからです。ウクライナが独立したとき、信教の自由が保証され、ウクライナの「自由」の一つの象徴にもなったと思います。特に2014年にロシアとの間に発生した領土問題によって主権の危機が訪れた後、ウクライナ人はこうした自由の象徴を非常に重視するようになりました。そのため、宗教だけでなく、ウクライナの民族衣装やウクライナ語、ウクライナ文化の復活運動などが一層広まりました。

建物が美しいチェルニウツィー大学

 ウクライナにはナショナル・アイデンティティの確立に向けた動きや独立の強い意志がある反面、ロシアや他の旧ソ連の国と文化的な共通点は多く見受けられます。容姿だけでは旧ソ連のどこの国の人であるのかを見分けられませんし、料理もロシアと全く同じです。例えば、ボルシチというビーツで作られた赤色のスープは日本でロシア料理として知られていますが、ウクライナ人はこれがウクライナから伝わった料理だと信じています。また、餃子に似ている「ヴァレニキ」という料理があり、中身はさくらんぼう、ジャガイモ、キャベツなどがありますが、これも周りの国のどこにでもあります。また、ウクライナ人はお正月や他の祝日に材料の多く入った様々なサラダを食べていますが、これも完全に同じです。読者のみなさんには少なくともボルシチはウクライナ料理であることを覚えていただきたいです!

ボルシチやイクラのサンドイッチなど

 最後にウクライナの経済状況について少し書きます。ソ連が崩壊した後、ウクライナは市場経済への移行を進めましたが、いまだに多くの問題を抱えています。平均月収は4万円ほどで、企業の社会的責任の考え方がまだ一般的ではありません。そのため、社員の不当解雇、劣悪な労働条件、環境汚染などの問題がいまだに多く見受けられます。しかし、ウクライナの教育は優れており、多くの人は高度な専門知識を持っているため、最近外資系企業の多くがウクライナに直接投資をしています。特にIT産業の発展が著しく、これに従事している人々の生活水準は向上しています。このような国の発展や、強い愛国心により、ウクライナの様々な面での改善が続いており、ウクライナ人は母国に希望を持てるようになりました。EUへの参加を目指しているウクライナにはまだ多くの改革が必要ですが、国民の努力や世界各国からの協力により、ウクライナは目覚ましい発展ができると信じています。

文章 JICA九州インターン ドロジュキナ・アリーナ(京都大学)