“ファッション”が創り出す協力支援の新たな可能性

2023年11月、モデルでファッションプランナーの谷裕介さんを派遣、「ヴィジュアル・マーケティングから興す新たな協力支援」の可能性を探りました。

1.縫製業の現状を知る・伝統デザインを知る

ユニフォームを手掛ける縫製工場やイベント衣装を製作する個人経営工場を視察、現地の生産体制を調査しました。その後のドミニカ共和国の伝統服であるチャカバーナ(Chacabana)を製作するチャカバーナ職人協会との意見交換では、「国内では正装としての印象が強いチャカバーナを、最近ではカラフルなデザインやプリント技法を駆使して製作している」と若者に身近に着てもらうための工夫点を紹介していただきました。谷さんからは伝統衣装をモチーフに多種多様なデザインを手掛ける際には「基本のスタイルを変えないことが重要」とアドバイスしました。

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2.ファッションの力で、若者の農業離れを食い止める

若者の農業離れは世界的な傾向であり、ドミニカ共和国の農村地域においても大きな問題となっています。そこで、今回、ドミニカ共和国の特徴的な農産品であるカカオの生産・加工業者へヒアリングを行い、「農業着」の製作と広告手法について意見を交わしました。
現代ファッションは「生産者と消費者の距離を明確にすること」、「SNSとの親和性が高い」という背景から、農業に対する関心がない人たちに対しても、ファッションを通して、生産現場を知る機会をつくることによって、共感を生み出すことができる」と谷さんはいいます。
これまでの社会システムを基軸とした「フェアトレードやアグロフォレストリー」だけではなく、「かっこいい、かわいい農業」のようなヴィジュアル・マーケティングの視点から、「農業の魅力を伝えること、感じてもらえること」も重要であり、その切り口として若者にとって切り離すことのできないファッションをうまく取り組み「ブランディング」していく必要性を伝えていました。

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3.保健医療プロジェクト連携

一次医療機関に配属されている「ヘルスプロモーター」は、住民の健康な生活づくりを推進する役割を担う非常に重要な存在です。例えば、ワクチン接種の補助、住民へのアナウンス、家庭調査票の作成や栄養に関する助言等の活動をしています。地域住民の一番近くでコミュニケーションを図る、重要なポストであるものの、他の医療業種と比較して待遇は十分ではなく、ボランティアで勤務しているヘルスプロモーターも存在します。また、同様に他の医療業種とは異なり、指定の医療用ユニフォームではなく、各自が異なる服装で活動をしています。
そこで、谷さんはユニフォームを製作することで「ヘルスプロモーターの定義を明確にするだけでなく、医療IDのラベリングが期待できる」とし、“スタイル化”の重要性を伝えました。また、デザイナーとアクター(服を着る人)のつながりを明確にすることが、ユニフォームを纏う誇り(Uniform of Pride)の形成につながるといいます。

谷さんは、今回の視察を通して、①「農業従事者のリブランディング」②「国際文化・伝統×ファッションイベントの企画×発信=ブランディング」③「保健・医療×ファッション=地域医療力を高める」を柱として、各環境に適したファッションをスタイル化し、協力支援に展開していきたいと考えています。
ファッションを単なる消費的な視点だけではなく、"Clothes in Society"の観点での取り組みがドミニカ共和国発で世界各国にも波及することを期待しています。

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