【JICA専門家のカリブ奮闘記(6)】ハイエンドのバルバドスを味わう

2023.08.22

本邦もようやく前稿から時間が空いてしまいました。ちょうど健康管理休暇のために本邦に一時帰国をしていたのですが、コロナ規制が完全に撤廃されて、インバウンドの外国人訪問客により、特に観光地はにぎわっているのを拝見しました。カリブと言えば観光は外せません。防災の専門家として当地に着任していますが、観光はバルバドスだけではなく、カリブの多くの国で経済の大きな部分を占めているところ、観光業が災害やそのほかの災難があろうともしっかりと回ることは、カリブの人たちの日々の暮らしに係わります。メインの観光シーズンはハリケーンのリスクのない日本でいう晩秋~春先に限られますが、そうでない時期もクルーズの寄港やイベントなどを通じて盛り上げることで、年間を通じたビジネスとして展開されています。

そうした中で、8月上旬にはカリブ各地はカーニバルの時期を迎えます。当地では「収穫祭Crop Over」といった言葉が用いられ、メインは8月上旬でありつつも、今年は報道によると1,2か月前から週末ごとのイベントが催され、最終週はパレードで盛り上がるといった予定に組まれているようです。東カリブ、特に隣国のトリニダード・トバゴはスティール・パンの発祥故、こちらバルバドスでも小中学校のチームからプロチームまで様々なスティールパンの饗宴が予定されています。年末年始はクリスマスのためにカーラジオをつけてもどこだか眠たげなクリスマスソングだったのが、このところは(スティールパンに限らず)ずっと速いソカのリズムがラジオから流れてきており、日々の通勤の運転にも気合が入ります。ハリケーンシーズンの真っただ中にあり、時折激しい雨あり、湿気のむんむんとした空気ありといったところで、決して観光に最適な環境ではない中で、この時期は少なくとも「聴く」ための観光には最適な時期なのかもしれません。

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昨年のCrop overにおける地元のスティールパン演奏)

Crop Overの時期を迎えると、休みをどんととる人たちも職場にはちらほらと見受けられます。各国防災局に派遣されているような協力隊員に話を聞くと(ハリケーンシーズンと言えども、本格的なシーズンではまだないことから)カーニバルを前に幾分ゆるみが出ているような状況のようです。私が勤務している地域機関ではカリブの文化を反映してか、長めの休暇を取る職員もちらほらいますが、ローテーションを組みながら普通に業務が入っています。

一方、本邦とやり取りをしているようなJICA事務所の職員は本邦のペースで業務をされており、しかも夏の時期は来年度以降に向けて各国・各地域の今後の協力を取りまとめなくてはいけない大切な時期ですので、仕事のピークが訪れる時期でもあります。それに合わせて、ポストコロナということもあり、周辺国のJICA所員も、コロナ禍のこれまでと比べると幾分バルバドスにお越しいただくケースが増えてきました。当国への訪問者を案内していると、ここ数か月のことですが、バルバドスが周辺国の居住者にとっては意外な楽しみがあることがわかりました。グルメです。リゾート地にあるというのにスターターから、メイン、デザートまで並ぶようなコース料理が出てくるようなレストランからバー、フードトラックまで、観光客や出張者のようなビジターが泊まるようなホテルのある地区にはそれなりにそろっています。昨今の円安を反映してか物価を見ると日本の数割増しといった状況ではあるのですが、そのような選択肢がこの小さな島にしっかりとそろえられていることこそが、バルバドスに来るメリットとなっているのです。確かに、近隣諸国に行ってもこれといったレストランはそれほど多くないのに対し、当地ではどなたかが来た際のオプションがいくつかパッと思いつきます。加えて、遊泳ができないほど荒々しい形相を見せる東海岸のビーチ沿いのホテルでは、食べて飲んでゆっくりするためだけのホテルというのもあります。

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海沿いのホテルやバーにて。決して安くないが「それなりの」食事やお酒、飲み物をビーチの形式とともにたしなめるところが各所ある。

フライトスケジュールの関係上、週末にバルバドス入りをした別の島のJICA所員は到着するや否や、当地のクラフトビールの写真とともに安着連絡を寄せてきました。クラフトビールの存在はもちろん知っており、毎日飲むというよりも普段飲む普通のラガーに加えて、月に1本ほど、自分へのご褒美程度でたしなむものではあったのですが、やはりものがあること自体が周りの国にとってはバルバドスがキラキラとして見える事のようです。

昨年の観光シーズンが始まる10月には、数年ぶりのバルバドス・フード&ラムフェスティバルが行われ、ビーチ沿いのホテルやレストランでは多くの特別メニューがふるまわれました。最低一人100数米ドルもするような何日も前から人気シェフのプランでのディナーを予約し、同僚でもそうしたところにビシッとスーツで出向くのを楽しみにしている人たちもいました。最も、食事代、服装代だけでなく、そうした場所ではバルバドス自慢のラムなどもふるまわれるところ、住人にとっては帰りの交通手段やら考えなければいけないので、正直自分向けではないなと思っていました。ポストコロナで同僚を案内する中、こうしたバルバドスのちょっとした「高級志向」を改めて見直しています。

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左:昨年のCrop over前の空港での荷物受取所。この時期の観光を盛り上げるべく飾りがされていた。右:バルバドスのクラフトビール(ペリカンエール)を自宅でいかにんじんとともに。

Crop Overが終わると任期はあと1月、残念ながら今年のフード&ラムフェスティバルにはもちろん参加できません。加えて、私はバルバドスにたどり着くまでに、JICAの業務でフィリピンといったビーチリゾートがたくさんある東南アジアにいたこともあり、治安や運転の不安のある中わざわざ島中のビーチを探訪するようなことはしておらず、まだまだ見切れていないバルバドスがたくさんあります。バルバドス出身の同僚の一人によるとバルバドス人はそれぞれお気に入りのビーチがあったりと、ビーチ探訪は欠かせないところで、私がこれまで行ったバルバドスのビーチがあまりにも少ないと、「全くちゃんとバルバドスを見ることができていない」と言われたこともあります。物価高、レベルの違う高級志向の観光地にありながら、無理してあれこれを見ずにいれば、またバルバドスに戻るチャンスはあるかなと思いつつ、今まで月1回程度だったクラフトビールの頻度を上げていこうかと思っている今日この頃です。

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