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橋を守る、暮らしを守る:エルサルバドルに根付き中米に展開するHASHIMORI

2025.10.10

エルサルバドルで実施中の技術協力「エルサルバドル海岸線の橋梁再建のための能力向上アドバイザー」(通称 HASHIMORIプロジェクト)は、2023年1月に活動を始めました。本技術協力は、橋梁の適切な維持管理を目的に、橋梁点検、診断及び補修に関する技術の能力向上を目指しています。2025年8月29日には最後の技術委員会とセミナーを通じて、事業の成果報告が行われました。

また、HASHIMORIプロジェクトの取組は、中米経済統合事務局(SIECA)を通じて、中米6カ国(グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、エルサルバドル、コスタリカ、パナマ)が参加する中米運輸交通大臣審議会(COMITRAN)でも紹介され、エルサルバドルのみならず、中米全域において橋梁管理の優れた事例として認知されてきています。本記事では、HASHIMORIプロジェクトの活動とその成果について紹介します。

HASHIMORIプロジェクトロゴ

HASHIMORIプロジェクトメンバー

・特筆すべき活動内容

HASHIMORIプロジェクトでは、エルサルバドルの橋梁維持管理に従事する技術者の能力向上を目指し、日本人専門家の指導のもと、On the Job Training(OJT)を実施しました。このトレーニングでは、橋梁の点検、診断、予防保全に関する技術移転が行われ、特に交通量が多い中、経年劣化や塩害により損傷を受けたコンクリートの補修技術が導入されました。

また、気温の上昇等により発生する伸び縮みで橋が損傷しないために、道路と橋梁の間に取り付ける伸縮装置に関するパイロット事業では、プロジェクトのカウンターパート機関である公共事業省・気候変動リスク管理戦略局(DACGER)をはじめとする、公共事業建設維持局(DCMOP)、道路保全基金(FOVIAL)、運輸交通副省(VMT)が連携し、施工と交通整備を行いました。日本製の伸縮装置や超速硬コンクリートが活用され、交通規制下の安全管理および交通早期解放の手法を習得しました。

詳細点検OJT

含浸材・表面塗布材の適用による予防保全OJT

パイロット事業:伸縮装置の設置準備

パイロット事業:超早強コンクリートの活用

さらに、HASHIMORIプロジェクトにより作成された橋梁点検のマニュアルが活用され、プロジェクト終了後も橋梁の点検業務の質が確保されるために、橋梁の点検資格の制度構築にも取り組んできました。

日本での事例や知見を参考にし、資格の対象者、試験の実施方針や講師の養成について議論を重ね、2024年12月に第一回「橋梁点検資格セミナー」を開催しました。同セミナーには、民間企業や学術機関から60名が参加し、セミナーの最終日に実施された試験では34名が合格しました。

将来的には、エルサルバドル公共事業省と道路保全基金が同点検資格の制度を主導し、大学などと連携した正式な点検員認定制度の導入が期待されています。

HASHIMORIプロジェクトで作成した点検シートを使用した試験実施の様子

点検資格セミナーの集合写真

・成果と今後の期待

2025年5月に東京で開催された国際構造工学会(IABSE)シンポジウムでは、HASHIMORIプロジェクトで策定されたマニュアル、橋梁点検資格制度などの成果が発表され、高い関心を集めました。

また、2025年8月には、ホンジュラスにて、同国の橋梁維持管理に従事する行政官、技術者および大学研究者を対象とした補修ワークショップが行われ、HASHIMORIプロジェクトによって育成されたエルサルバドルの技術官により、プロジェクトで開発された橋梁維持管理システムや橋梁点検アプリが紹介されました。

今後は、これらの成果がエルサルバドル全国の橋梁の維持管理に適用されていくこと、更には、中米経済統合事務局(SIECA)を通じて中米地域への水平展開が期待されます。

橋梁登録・点検・診断マニュアル

橋梁維持管理・補修マニュアル



リンク: https://dacger.mop.gob.sv/documentos/?wpdmc=manuales-y-fichas

技術登録リンク(中米道路保全技術研究会:GETCVC技術ポータルサイト)

リンク:https://dacger.mop.gob.sv/documentos/?wpdmc=getrrgivc


ホンジュラスでのワークショップの様子

IABSE参加時の集合写真

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