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ASEAN加盟に向けた調整及びモニタリング能力強化プロジェクト

1.案件名                                               
ASEAN加盟に向けた調整及びモニタリング能力強化プロジェクト

2.事業の背景と必要性                                  
 東ティモールは、2002年の独立回復以降、ASEAN加盟を目標としてきており、2009年1月には、東ティモール国外務協力省内にASEAN総局を立ち上げ、ASEAN加盟に向けた体制構築を進め、2011年3月にはASEAN加盟への申請を行った。2022年11月のASEAN首脳会議にて、東ティモールの11か国目としてのASEAN加盟が原則として承認され、すべてのASEAN会議への出席が認められるオブザーバーとしての地位が東ティモールに与えられた。加えて、2023年5月には、3つのASEAN共同体(「政治・安全保障」「経済」「社会・文化」)が実施したファクトファインディングミッションの調査結果に基づき、ASEAN正式加盟に向けて必要な対応事項が明記されたロードマップが採択されている。
 ラモス・ホルタ大統領はASEAN加盟を東ティモールにおける最優先課題の1つと位置づけ、加盟のターゲットを2025年とすることでシャナナ・グスマン首相とも一致しており、ASEANの早期加盟に向けた上記のロードマップに示されたASEAN関連の国際約束等の締結、公務員の英語力を含む能力開発、空港や国際会議場、病院などのインフラ整備が喫緊の課題となっている。特に、技術や経験を持つ中間層の薄さから、政府・公共セクターにおける人材不足・人材育成がASEAN加盟実現へ向けての大きな課題となっている。
 これまでJICAは「東ティモールのASEAN加盟支援に係る情報収集・確認調査」(2013年)を通じて、ASEAN加盟がもたらす経済的インパクトの分析や、ASEAN加盟に向けて対応しなければならない事項のリストアップを試みてきた。また2014年に産業政策アドバイザー、2016年以降は産業開発アドバイザーを通商産業省に対して派遣し、同省のASEAN及びWTO加盟に必要なアクションにも貢献する支援業務を実施してきた。
 しかしながら、過去の協力はASEAN加盟に必要な経済分野での部分的な情報収集や支援など部分的であり、東ティモールのASEAN加盟に向けてはロードマップで示されている通り依然として課題が残っている。また、オーストラリアやADB、ASEAN加盟国は東ティモールのASEAN加盟支援を行っているものの、それぞれの協力は3つの共同体のうち経済分野が中心でドナーの協力に偏りがある状況であり、またドナー間で連携や調整が図られておらず、ASEAN加盟支援のコレクティブインパクトが発現しづらい状況にある。
 こうした点に鑑み、本事業は、ASEAN加盟のためにロードマップで示された東ティモール国内で批准が必要な国際約束(ASEAN Agreements及びInstruments)を国内で批准できるよう英語からポルトガル語およびテトゥン語に翻訳するとともに、ジャカルタに本部を設置するASEAN事務局のリソースパースンと協力をして、東ティモールやインドネシア、ASEAN加盟国でのセミナーや研修、インターンを実施し、上記の国際約束を理解し東ティモール国内で批准するために必要な東ティモールの公務員のキャパシティ・ディベロップメントを図る。加えて、東ティモールのASEAN加盟を支援する各ドナーや各国の協力がコレクティブインパクトを発揮するよう、その連携や調整をリードし、ASEAN加盟に向けた様々な協力が効果的・効率的に実施されることを目指す。更に、ASEAN加盟に向けたロードマップの進捗状況をASEAN事務局が適時に適切にモニタリングできるよう支援する。

3.事業の枠組み
                      
(1)上位目標
東ティモールのASEAN正式加盟が達成される。

(2)プロジェクト目標
ASEAN加盟の協力が円滑に調整され、ロードマップに明記された項目が実施される。

(3)成果
成果1:ASEAN加盟に必要なASEAN Agreements and Instrumentsが東ティモール国内で批准されるために、英語からポルトガル語およびテトゥン語に翻訳される。
成果2:ASEAN事務局等へのインターンシップや東ティモールでの研修を通じて、東ティモールの各省庁のASEAN加盟の担当職員がASEAN Agreements and Instrumentsの理解を深め、東ティモール国内での批准プロセスに貢献する。
成果3:東ティモールのロードマップのうち、特にASEAN Agreements and Instrumentsの批准に係る進捗状況が適切にモニタリングなされ、ASEAN事務局に十分な情報が共有される。
成果4 :東ティモールのASEAN加盟を支援する各ドナーや各国の協力がコレクティブインパクトを発揮するよう、ASEAN加盟に向けた様々な協力のより良い調整が実現される。

(4)活動
1.1 ASEAN加盟に必要なASEAN Agreements and Instrumentsの批准の優先順位を特定する。
1.2 優先順位に基づいて、ASEAN Agreements and Instrumentsがポルトガル語およびテトゥン語へ翻訳する。
1.3 ASEAN Agreements and Instruments以外にASEAN加盟のために翻訳が効果的な法的文書やガイドライン等の文書があれば翻訳する。

2.1 ASEAN Agreements and Instrumentsの理解を深め批准プロセスを加速するために、東ティモールの各省庁のASEAN担当職員のASEAN事務局・ASEANセンター等での1か月の短期インターンシップを企画する。
2.2 インターンの選定基準について、既存のASEAN加盟支援の研修事業(ATRPP等)と相乗効果をもたらす形で検討・決定する。
2.3 インターンシップの内容及びインターンの選定基準がMOUとしてまとめられ、ASEAN事務局と合意をする。
2.4 ASEAN加盟国から短期インターンシップの承認を得る。
2.5 インターンが決定される。
2.6 インターンシップ実施前に、インターン派遣予定者から、ASEAN Agreements and Instrumentsの批准のために具体的に何の貢献をするか、そのためにインターンを通じて獲得すべき知識や経験何かについてのプレゼンテーションを外務協力省、所属省庁、JICA、関連ドナー、ASEC(オンライン)、その他の関係機関に対して実施する。
2.7 インターンを実施する。
2.8 インターンの東ティモールへの帰国後、予算等の外部条件の制約が少なくインターン自身が実現可能でASEAN加盟に貢献する効果的なアクションプランの策定の支援を行う。
2.9 インターンの結果及びアクションプランについてのプレゼンテーションを実施する。
2.10 アクションプランの実施状況をモニタリングする。必要に応じてアクションプランの実施を支援する。
2.11 インターン計画、インターン実施状況、アクションプランのモニタリング結果等をJCCにおいて東ティモール政府や各省庁、ASEAN事務局、他ドナーと共有し、教訓や提言を得る。
2.12 ASECにインターンの結果及びインターンのASEAN加盟に係る貢献を共有し、ASEAN調整理事会作業部会(ASEAN Coordinating Council Working Group)への成果報告を支援する。
2.13 ASEAN加盟に向けた研修やその成果について、東ティモール国内及びASEAN加盟国にて積極的に広報を行う。
2.14 ATRPPについて、必要に応じて追加の講師派遣やプログラムの延長について支援する。

3.1 ロードマップのうち、特にASEAN Agreements and Instrumentsの批准に係る進捗状況が適切にモニタリングされASEAN事務局に報告されるように、外務協力省ASEAN総局及びASEAN事務局に対し側面支援を行う。

4.1 東ティモールのASEAN加盟に対する各ドナーやASEAN加盟国、ASEAN事務局からのそれぞれの支援内容(対象、期間、内容、協力金額等)を特定する。その結果を表などでまとめ、定期的に更新を行う。
4.2 外務協力省、各省庁、ASEAN事務局、ASEAN加盟支援を行う各ドナーからなる作業部会の外務協力省による組織化を支援し、ASEAN加盟に係る課題やロードマップの達成状況について関係者間で共通理解を醸成する機会が定期的に開催されるよう支援する。