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素敵な出会いに感謝

2024年4月20日

2019年度1次隊、2023年度7次隊(再派遣) 三輪美咲
所属:グアノ・ペニペ教育事務所
職種:小学校教育(算数)

コロナ禍を乗り越えて

私は2019年度1次隊としてエクアドルに派遣され、下記の配属先で活動をしていました。

順調だった活動もつかの間で、コロナウイルスの蔓延によるエクアドル政府のロックダウン政策が始まり、緊急帰国を余儀なくされました。海外で経験するパンデミックに、帰国まで不安な日々を過ごしました。今でも忘れられないのは、帰国の際に、国民全体が外出禁止だったため、お世話になった方々にお別れを言うことができなかったことです。誰を責めることもできないのに、自分の活動が中途半端であったことや、同僚や子供たちに「ありがとう」「さようなら」も直接言えずに日本へ帰国することが悔しくて、「絶対にまた戻ってくる」という思いで、再派遣を待ちました。

今回再派遣が叶い、同じ配属先で任期を全うできたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

背景

私の任地は、首都から車で4時間ほど南に位置するチンボラソ県グアノ市です。配属先は、教育事務所(日本でいう教育委員会)で、グアノ市内の小学校を巡回指導し、算数指導の充実を目指すというビジョンのもと、活動内容を配属先と考えていきました。

活動内容とその結果

私が行った活動は、主に2つです。一つ目は、グアノ市内の先生方を対象に、日本の教育や算数の教授法についての研修会を開催することです。任期中に複数回、大規模な研修会を配属先と開催し、総勢200名近くの先生方が参加してくださいました。研修会の間も、積極的にワークショップに参加してくださり、研修で学んだ内容を自分の教室で実践してくださる先生方の姿を見て、嬉しく思いました。

二つ目は、子供たちの四則計算(+、-、×、÷)の計算能力の向上です。この活動を行うためには、担任の先生と一緒に授業を行うことが不可欠でした。なぜなら、私が一人で授業をしていても、現地の先生方の指導力向上にはつながらないからです。しかし、はじめのうちは、担任の先生は私のことを「担任の代わりに算数を教える先生」だと勘違いして、教室から出て行ってしまったりするなど、協力してもらうために何度も私の活動について説明をして、理解してもらうまでに時間がかかりました。子供たちの計算能力も着任当初は低く、コロナ禍で2年間に及ぶオンライン授業は明らかな学力差を生み、貧困層や兄弟の多い子供たちは、まともにオンライン授業を受けることができませんでした。その代償は大きく、高学年のクラスでもほとんどの子供たちは掛け算の九九を覚えていませんでした。担任の先生と協働しながら、活動を進めた結果、当初は高学年全体の約2割の子供たちしか達成できなかった計算問題を、現在は全体の約8割の子供たちが、短時間でできるようになりました。

先住民族、メスティーソ、ベネズエラからの移民など、様々な家庭背景を持つ子供たちが、これからもどうか幸せに生きてほしいと、強く願います。

活動以外にも、先生方と一緒に肉じゃがを作って食べたり、子供たちと折り紙や習字の授業をしたり、他の隊員の任地に行き、活動を見学したりしたことも、エクアドルの自然豊かな地域を旅行してまわったことも、良い思い出です。

未来の隊員のみなさんへ

私は、心からエクアドルに戻って来てよかったと思っています。今このページを読みながら、ボランティアの参加を検討している方々に、そしてこれからエクアドルに来られる隊員の方々に、この思いが少しでも届けばうれしいなと思っています。エクアドルは、日本の生活に比べれば、不便なこともあるかもしれません。でも、その不便さを感じさせないくらい、優しい、あたたかい国です。抽象的な言葉かもしれませんが、来てくだされば、この言葉の意味が分かると思います。精一杯活動し、エクアドル国内の隊員さんやエクアドル事務所のみなさんにもお世話になりながら、決して「独りだ」とは感じたことのない二年間の任期でした。みなさんにもエクアドルで素敵な出会いがたくさんあることを願っています。