2024月6月6日
2022年度7次隊 髙梨 誠人
所属:ヒピハパ市役所 危機管理課
職種:防災・災害対策
背景
任地のヒピハパ市はエクアドルの西側に位置し、太平洋に面しているそれらの地域はまとめてコスタと呼ばれています。首都のキトと違い標高は低く気温も年中暖かいです。とても住みやすい地域である半面、災害被害に頻繁に見舞われます。海に面していることから津波被害に備える必要がありますし、日本と同じように地震も多いです。さらに雨季に大雨が続き、洪水や土砂崩れの被害に毎年遭っています。このことから住民の防災意識の向上と防災訓練の計画・実施・評価が求められボランティアの要請に至りました。
活動紹介
2年間を通して行ってきた活動は大きく分けて3つあります。
1. 地域や学校に向けての防災訓練の計画・実施・評価・防災教育ツールの提案
2. 救命講習の開催とインストラクター育成
3. 有事の際の被害状況の調査と支援物資の提供
- 1 . 防災訓練の実施では、現地の消防署と連携して防災訓練を行い、避難訓練や傷病者の搬送方法を中学校に教えにいき、さらに地震のメカニズムについての講座も行っていました。また防災教育ツールに関しては防災の歌(PATO BOUSAI)や防災かるたを使用し子どもたちにも楽しく防災に関わってもらえるような教育ツールを提供し実施することができました。
- 2 . 救命講習は元々要請内容にないものでしたが、日本と違いエクアドルでは救命講習を受講するためにはお金が必要であり、子どもたちに教える機会がなかったため、教育委員会と共同で救命講習を開催しました。訓練人形はJICAから提供してもらえたので、より実践的な講習を実施することができ、合計35回、延べ1691人の学生に救命講習を提供することができました。またヒピハパ市だけではなく同期隊員の任地に出張し救命講習を実施することもありました。この救命講習のゴールは単に教えるだけでなく『インストラクターを育成すること』と設定していたので、アウトプットする機会を提供するため、12の防災・環境団体を招待しヒピハパ市の防災強化フェリアを開催しました。そこで私が今まで教えてきた学生達が今度はインストラクターとなり参加者に救命講習を教えるという教育の連鎖を提供しました。
- 3 . 災害の被害に遭った地域を訪問し、被害状況の調査と支援物資の提供を行うことも危機管理課の仕事です。ヒピハパ市では技術が進歩しており被害者情報の入力時には、県が管理する防災アプリを使用します。これにより地域での被害件数、場所、被害程度、家族構成をPC上で管理することができるので日本よりも進んでいると思いながら活動していました。この背景には2017年~2021年までJICAとエクアドルの国家危機管理庁の間で実施されていた『地震と津波に強い街づくりプロジェクト』の存在があり、JICAのプロジェクトがエクアドルでしっかりと活かされていることを肌で感じました。
2年の時を経て、いま改めて思うこと
出国前はエクアドル=危ない国というイメージを持っていました。それは日本で取り上げられるエクアドルのニュースがデモなど暴力的で悪いものばかりだからです。確かに危ない面も持ち合わせています、ただルールをしっかりと守っていれば、気候が良く、街は美しく、人々は明るく優しく、活気にあふれていて、全てが刺激的でとても魅力的な国です。私はJICAボランティアとして何かエクアドルの助けになれないかと思いここに来ましたが、ずっと助けてもらってばっかりでした。日本人は市内に1人だけでしたが全く孤独を感じない2年間でした。この海外協力隊としての経験は一生忘れることができませんし、これからの自分のキャリアに活かしていきます。そして将来、日本とエクアドルを繋ぐ人材になり、また必ず戻ってきます。今度は恩返しをしに来たいですが、おそらくまたお世話になりっぱなしになる、そんな日を心待ちにしています。
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