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○年後の未来のために

2024月11月8日

2018年度3次隊、2024年度9次隊(再派遣) 中橋沙帆
所属:チュンチ市役所 教育文化ユニット
職種:体育

背景

私の任地チュンチは、「霧の町」といわれるほど霧がよく発生する町で、人口約1万人と少なく、その半分を子供が占めています。この町の社会問題として都市や海外への出稼ぎが多く、残された子供たちは祖父母や親せきなどに預けられ両親と離れて生活しています。そのため精神的に不安定になり非行に走ってしまったり、また放課の時間暇を持て余し、インターネット機器に依存してしまっています。その問題を改善すべく、配属先のチュンチ市役所の教育文化ユニットでは、「放課の時間の適切な活用プロジェクト」により音楽やダンスのクラブ活動が行われており、以前派遣されていたボランティアも美術や折り紙等の文化的クラブ活動を行ってきていました。そして今回、私は体育という職種で派遣されたので、スポーツ分野でのクラブ活動を実施しました。

活動内容・結果

主な活動は以下の2つです。

  1. 放課後のクラブ活動を実施する
  2. 市内の学校を巡回し、体育の授業を現地の先生と協力して行う
また、クラブ活動や体育の授業をとおして、学校教育の質の向上や子供たちの感受性、創造性を養うことも目的に活動してきました。

クラブ活動では、バスケと水泳を指導しました。現地の子供たちは集中力が続かず、また地道な基礎練習やドリル練習は嫌う反面、ゲーム性のあるものには大変意欲的でした。基本的に基礎ができていないので、上手く遊びの要素やゲーム形式を取り入れながら基礎の定着を図り、また継続的にクラブに参加することで、成功体験に繋がっていくようこだわって指導し、多くの子供たちがほぼ毎日参加してくれました。

こちらの体育の授業ではサッカーをしていることが多く、休み時間化していることが課題でした。そのため、運動会を企画し、体育の授業で目的をもって種目の練習をクラスメイトと協力しながら取り組むよう、現地の先生と協力して行いました。基本的には体育が好きな子が多く、意欲的に取り組んでくれましたが、熱くなりすぎるばかりに失敗したクラスメイトを責める声が上がることもあり、そのたびに何度も子供たちと話し合ってきました。日を重ねるごとに意欲的に種目練習に取り組むクラスが増え、先生たちの体育の授業に対する意識も変わっていきました。そして運動会を2校の学校で行うことができ、練習の成果を発揮できたクラスがほとんどでした。あるクラスは大縄で優勝できなかったものの、クラスの自己ベストを更新したことで、運動会後も体育の授業で引き続き先生と一緒に取り組むなど変化が見られました。また、クラスメイトに対して応援する声や、成功を一緒に喜ぶ声が増えていき、いい変化も見ることができました。

未来の隊員のみなさんへ

コロナによって4年後に再派遣され、活動期間は合計2年間でしたが、エクアドルを2回経験させてもらいました。1回目の派遣時に、果たして自分のやっていることに本当に意味があるのか、子供たちのためになっているのか、すぐに結果が出ないものだからこそ日々不安でした。ですが、もう一度エクアドルに戻ってくることができ、4年前に教えていた子たちや関わっていた子たちが、今もなおバスケットを続けている姿を見ることができて、4年前の自分のやってきたことが草の根レベルであったとしても、数人、たった1人にでも心を動かすきっかけになっていたのなら、私の活動に意味があったのだと思うことができました。

2年間は長いようで短く、短いようで長い。感じ方は人それぞれです。そのたった2年間で結果は出ないかもしれないですが、それでも今の自分の活動が、今後の、○年後のボランティアに引き継がれたときに成果として現れたり、○年後に任地の人が今の自分の活動を繋ぐきっかけになっているかもしれません。活動を通して、現地の人と協力して一緒に何かを作っていき、共に分かち合っていくことが○年後の未来に繋がるきっかけになっていくと思います。無駄なことなんて一つもないと思わせてもらえたボランティア活動でした。