2025月7月15日
2023年度 1次隊 升本 多美
所属:社会発展促進財団フィデス
職種:コミュニティ開発
活動紹介
私の任地であるマナビ県はエクアドル西部に位置し、太平洋に面している地域である。気候は年中常夏で、街路樹にマンゴーやパパイヤ、ドラゴンフルーツが生えており、人々の性格はオープンで軽快な、「ラテンな街を想像して!」と言われたときに想像するような街、それが私の大好きなマナビ県である。
そして私は地域密着型のNGO (Fundación para la Investigación y Desarrollo Social: FIDES)でデジタルマーケティング担当として配属になり、その仕事はまさに任地であるマナビ県の”ランドスケープ”やそれに伴う魅力をカメラマンとして、動画編集者として、SNSを通じて発信することであった。主な内容としては、配属先が支援している米農家や海水塩の生産者、コミュニティが保護しているマングローブでの活動、グリーンツーリズム、そして地産地消と現地文化の継承をテーマにしているカフェテリアの知名度向上・販売促進・イベントサポートである。
ランドスケープを継承するために
まず、任地の魅力を発信する者として、任地の魅力を知らねばと思い、同僚と共に現場に赴いたり、コミュニティのメンバーとの親睦を深めたり、任地の自然や文化についてとにかく積極的に学ぶ姿勢を心掛けた。最初は仕事の一環として学んでいたが、いつしかそれが趣味になり、今では心の底から「マナビ配属で、魅力を発信する担当で良かった!」と感じている。時にはお米の生産者のインタビュー中に田んぼのぬかるみに落ち、マングローブの撮影ではそこそこ値段のしたサングラスを太平洋に落とし(今頃日本に流れ着いていないかなあ…)、サウナのような熱気立ち込める厨房に立って任地の伝統料理を覚え…、まだ社会人としての経験も浅く、割と地方部での活動のため、人との関わりが重要であると認識していたからこそ身体を張って日々過ごしていたら「マナビのことが大好きな日本人の女の子がいるぞ」と、某プロジェクトの方から直々に仕事のオファーを頂けるまでになった。
もちろん最初から活動がうまく行っていたわけでは決してない。エクアドルの中でも特に方言が強く、理解が難解と言われる地域にあたるため、赴任から半年くらいはコミュニケーションが上手く取れず、帰り道人知れず泣きながら帰った回数は両手の指の本数ではとても足りない。外交上の不可抗力的な理由により多くのプロジェクトが打ち切りになり、同僚と共に職を失いかけたこともある。それでも、今やれること、今やるべきことをとにかくこなしていたら、いつの間にか帰国まで残り1週間になっていた。
当時は苦労し落ち込む日もあったが、今思い返すと全てが自分自身の成長のためになっていると感じられるくらい、実りの多い日々であったと思っている。
活動をすればするほど感じた課題
前述のように、私のマナビ愛は地元民に勝るくらい大きい。そのためこの場を借りて、今マナビ県が面している問題についても取り上げたい。
多くの人が目にしているように、エクアドルの特に海沿いは治安がかなり不安定になってきている。マナビ県ももれなく危険地域に該当し、エクアドル人も訪問を敬遠している傾向にある。治安が私たちのようなNGOに及ぼす影響は大きい。外部からの訪問者が減っているため、集客や販路の拡大が難しく、現地で生産している商品を大都市圏の人に見てもらう機会もかなり限られてきている。そして、私たちのような海外ボランティアや国際協力団体の撤退も始まっている。
私はたくさんの声を聞いてきた。収入が多くない地域のため、安定しないインフラ、伸びない教育水準、頻繁に起こる事件、お金のために巻き込まれる人々…そういった人たちの収入向上のために私の仕事があるのではないか、どうやったら誰かに響く広報ができるのか、2年間考え続けていたが結局何が正解なのか、果たして何かを任地に残せたのか、目の前にたくさん支援が必要な人がいるのに何もできない自分自身に対する悔しさが、活動をすればするほど、そして任地を知れば知るほど湧き出てきていた。
2年間を生かして
2年間活動し、改めて感じたのは生活の基盤であるインフラ整備が重要であるという点である。元々都市計画を学んでいたということもあり、帰国後の進路は建設系に進み、今はまだ少ない南米の案件を形成できるような人材になっていきたいと感じている。
そしてもちろん、私を快く受け入れてくれた任地の皆さんへの感謝を込め、仕事であれプライベートであれ絶対にまたこの国を訪れたい。人との繋がりの大切さ、エクアドルの魅力、そして日本人としての在り方を学べたこの2年間は私の人生においてとても貴重なものであると、もうすでに感じているからである。また、エクアドルという素敵な国のランドスケープを継承するために、帰国後も積極的にエクアドルの情報を発信したり、離れていても何かエクアドルに協力したりできることを探っていけたらと考えている。
scroll