2025月10月7日
2023年度2次隊 土原 裕人
所属:QUINDE (FUNDACIÓN CRISFE)
職種:障害児者支援
背景
皆様こんにちは、2023年度2次隊の土原と申します。私は現在、障害児者支援隊員としてエクアドルの首都キトにある特別支援学校で活動しています。エクアドルの特別支援教育は日本の様な行政主導体制がほとんどなく、特別支援学校の多くが保護者や財団によって設立・運営されているのが現状です。そのため、障害のある人たちのインクルーシブ教育や卒業後の社会参加などが大きな課題となっています。
そのような中で「先生たちの特別支援教育の専門性向上」を目的とし、2023年10月にエクアドルの地に足を踏み入れました。
活動内容
配属1週目、学校内を見学していると早速様々な生徒に出会いました。教室で泣き叫んでいる生徒、教室からの脱走を試みている生徒、教室に入れず1日中外で過ごしている生徒、自傷をしている生徒などなど。そして、そのほとんどが自閉スペクトラム症のある子どもたちでした。教室をのぞいてみると個別支援や視覚支援などの合理的配慮は見当たりません。どうやら集団活動をベースとした授業が主体の様です。そして2年間の活動の方向性はここで決まる事となります。
活動開始に向けて「自閉スペクトラム症の特性理解促進および支援アイデアの共有」「障害のある人たちの権利擁護やノーマライゼーションの啓発」の2つのゴールを設定。約2年の活動がスタートです。
さて、活動といえば幸運にも学校の空き教室を拝借することができ、その教室を活用して自閉スペクトラム症のある生徒たちへの個別支援を開始しました。
対象生徒については、学校内で特に行動課題が顕著にみられる生徒を先生たちに選んでもらいました。各生徒には1日30分から2時間ほど毎日教室に来てもらい、そこでTEACCHプログラム(ノースカロライナ州の自閉スペクトラム症のある人たちへの公的支援プログラム)や応用行動分析等のアイデアを活用した個別支援を実践します。最終的にそれらの実践を先生たちに直接見てもらい、色々と学んでいただくと同時に教室に支援アイデアを取り入れて貰おうという作戦です。
また、定期的に勉強会も開催。先生たちが毎回積極的に参加してくれるよう勉強会の日は必ずケーキを持参します。狙いどおり「次は何ケーキだ?レアチーズか?」と研修会の度に質問攻めされるようになりました。作戦は成功です。
活動を終えて
早いもので任期終了まで残り約1か月。さて、活動といえば学校のディレクターや心理士、そして一部の先生たちがそれぞれの立場で支援のアイデアを学校・教室運営に取り入れてくれるという現象が現れ始めています。特にディレクターや心理士においては、有難いことに今後の学校運営の方針として合理的配慮の拡充を示してくださいました。残念ながら全ての先生の意識や行動を変えることはできませんでしたが、学校全体に少しずつ変化が生じているように感じています。
さて、このようにまとめてみると2年間の活動は終始順調であったように見えるかもしれません。しかし、実際は計画通りに進むことはなく計画変更もたくさんありました。また、やり残した事や後悔もたくさんあります。しかし振り返ってみると、生徒や保護者、そしてスタッフの皆に助けられ、また、彼らから元気を貰い続けたことが2年間の活動を継続できた一番の理由なのかなと感じています。
エクアドルで出会った人たちは皆優しさに溢れた人たちばかりでした。素晴らしい経験を与えてくれた全てのエクアドルの方々に感謝です。
scroll