2026月3月25日
2023年度4次隊 田中 朋子
所属:ロハ県庁生産開発部
職種:コミュニティ開発
活動への動機
エクアドルとの縁は10年以上前に遡ります。当時、ロハ県のコーヒーに出会い、その品質の高さと個性的な風味に強い印象を受けました。この経験がきっかけとなり、将来エクアドルや中南米のコーヒーに関わる仕事をしてみたいと考えるようになりました。これまで私はコーヒー鑑定士として品質評価や、カフェテリアの運営やバリスタ教育に関わってきました。また、日本国内外のコーヒー農園で生産に関わる経験も積んできました。こうした経験を活かしながら、エクアドルのコーヒーが持つ魅力を地域の発展につなげる活動に挑戦したいと考え、渡航に至りました。
活動紹介
私はエクアドル南部のロハ県にて、スペシャルティコーヒーを活用した地域振興をテーマに活動しています。ロハ県は標高や気候条件に恵まれ、高品質なコーヒーが生産される地域として知られています。しかし、その品質の高さにもかかわらず、コーヒーを地域の観光資源として活用する取り組みはまだ十分に進んでいませんでした。そこで派遣先であるロハ県庁は「Ruta del Café(コーヒールート)」という農業×観光のプロジェクトを発足させました。これは、カフェテリアやコーヒー農園を訪れながら地域のコーヒー文化を体験できる観光ルートを整備し、地域経済の活性化を目指す取り組みです。
主な活動は、カフェテリアやコーヒー農園を対象とした研修の実施、観光コンテンツの開発、そして地域の情報発信の強化です。
このプロジェクトの実施には、多くの関係機関との連携が欠かせませんでした。プログラム全体は合計100時間のパッケージ型であり、外部の専門家との協働によって構成されています。デジタルマーケティング、お土産品開発、語学学校と連携した英語接客研修、地域大学や専門学校のガストロノミー部門と協働したカフェテリアのメニュー開発、さらに民間企業と連携したアプリケーション開発など、多岐にわたります。
本研修において、私個人は主に、調査・評価およびコーヒーの品質管理に関する研修を担当しました。更に、関係機関であるエクアドル観光省、ロハ県庁、教育機関、カフェテリアオーナー、コーヒー生産者とのやりとりや、事務作業を担当しました。
着任して最初は、ロハ市内の約30店舗のカフェテリアを対象に、スペシャルティコーヒーに関する研修を実施しました。コーヒーの品質評価(カッピング)や抽出技術、接客方法、コーヒーのストーリーの伝え方などをテーマに研修を行い、観光客にコーヒーの魅力を伝えるための基礎づくりに従事しました。カッピングはコーヒーの品質や特徴を客観的に評価するための重要な手法であり、生産から抽出、消費までをつなぐ共通言語でもあります。
次に、県内のコーヒー農園を対象にアグロツーリズム(農園観光)に関する研修を実施しました。農園見学ツアーの構成、来訪者への説明方法、安全管理、体験型コンテンツの作り方などをテーマに、農園が観光客を受け入れるための体制づくりを支援しています。また、エクアドル観光省と連携し、観光農園として受け入れを行うための基準やチェックリストを作成しました。ロハ県の全ての16カントン(郡)を訪問することができたことで、地域の地理的な理解が深まり、現地の方々との会話や業務を進める上でも大きな助けとなりました。学生時代に一般財団法人でスタディツアーの企画・販売やツアー引率に携わった経験や、旅程管理者資格の取得過程で学んだ観光運営の知識を活かせたと感じています。
大変だったこと
活動を始めてまず感じたのは、想像していた以上にロハ地域のスペシャルティコーヒーの知識や技術が進んでいたことです。生産者の中には微生物や酵母を自家培養し発酵プロセスを研究している人もおり、バリスタの分野でも国際大会を目指してトレーニングを行う人が多くいました。その環境の中で活動を続けるため、私自身も国内外の生産・品質管理に関する研修や競技会に積極的に参加し、新しい知識を学びながらロハでの研修に活かしてきたつもりです。
また、言語や文化の違いから会議で思うように発言できず残念な思いをすることもありました。その中で周囲に私の存在意義を認識してもらうためにも、「コーヒーのことならこの人に聞こう」と思ってもらえるコミュニケーションを心がけたことで、突破口がみつかることもありました。
活動を振り返って
振り返れば、エクアドルに到着してから数えきれないほど多くの方々と出会い、多様な形で仕事の機会をいただきました。活動の中では、出会った当初は具体的な協力関係に至らなくても、時間が経って新たな形でつながることもありました。どのタイミングで協働が生まれるかは分からないからこそ、日々の出会いや人とのつながりを大切にすることの重要性を強く感じています。現在までのプロジェクトの結果としては、登録されている20のカフェテリアと13の観光農園では、経済的にも収入向上が見られています。中にはカフェテリアの増築や、2店舗目のオープンにつながった事例、新規の海外バイヤーにつながった農園もあります。一方で、プロモーション不足や、ローンチしたアプリケーションの改善など、今後取り組むべき課題も山積みです。しかし、自分が関わってきた人たちが達成感を持って活動している様子を見ると、私自身もこのプロジェクトに携わることができたことを誇りに感じます。
ロハのコーヒーは品質だけでなく、文化や人々の営みと深く結びついた地域資源です。今後もコーヒーをきっかけに地域を訪れる人が増え、農業と観光が結びついた持続可能な地域づくりにつながることを願っています。JICAエクアドル事務所の皆様にも多くのご支援とご協力をいただきました。この場を借りて心より感謝申し上げます。