2026月6月17日
2024年度1次隊 早川 友康
所属:パスタサ市 上下水道公社
職種:下水道
【背景】物語が動き出す街・プヨ
~Puyo donde la historia comenzó a correr~
私の任地は、首都キトから南東へバスで6時間の場所にある、エクアドル・パスタサ県のプヨという街です。プヨはアマゾン地域の玄関口として知られ、アンデス山脈東側の山腹地帯から下った標高約900mの場所に位置しています。
私の配属先は市役所の上下水道局で、水道分野では、処理した水の半分以上が漏水などにより失われる無収水が大きな課題となっていました。配属先では、私の派遣以前からJICAエクアドル事務所と連携し、無収水対策に取組んできた経緯があります。
下水道分野では、水道分野に比べ組織体制が脆弱であり、普及率は約60%で下水道管総延長は約45kmを維持管理しているものの、下水処理施設はなく、家庭排水は近くの川へと直接放流されているという課題を抱えていました。
水道分野において、配属先とJICAとの信頼関係が構築されており、その結果、次のステップとして、水環境改善に向け下水道分野の体制強化への取組みが求められ、水環境を守るバトンが私に託されました。プヨという街で、まだ誰一人知る人もなく、自分の想いすら満足に伝えられない中、2024年9月11日、私の2年間は静かに動き始めました。
【活動内容】答えのない世界の中で
~Intentando ver lo invisible~
私は主に二つの活動に取組んできました。
一つ目は、下水道管網の図面台帳の整備です。着任当初、配属先には下水道管網のCAD図は存在していたものの、台帳として体系的に整備されていませんでした。そのため、事故や管路の不具合が発生した際に、その影響範囲を把握することが困難な状況でした。
まず、CAD図面と実際の現地状況に相違がないかを確認するための調査を実施しました。調査個所の中には人が立ち入ることが難しい場所もあったため、ドローンを活用した調査を提案し、効率的な確認を行いました。
その後、デジタル台帳としてまとめることができる事務所が所有していたArcMapを用いて、現地調査結果の下水道管網をまとめました。これにより、各排水地点の上流域や管路の接続状況を一元的に把握することができるようになりました。
活動内容の二つ目は、A地区における下水処理施設の導入に向けた検討です。検討するにあたり意識したのは、建設後の維持管理をエクアドル国内の技術や資機材で継続できるかという点でした。
最初に、エクアドル国内で採用されている下水処理技術について調査するとともに他の協力隊員から情報提供を受け、同僚とともに処理施設の現地視察や施工現場の見学を行いました。
同時に、対象地区の現地調査を実施し、計画汚水量の算定を行いました。その結果、A地区において経済的で合理的な下水処理方法として、「合併浄化槽
」 が有効な選択肢の一つであることを提案しました。
設計に向けた詳細調査を進めたところ、実測した汚水量が当初の計画汚水量を100倍以上上回っていることが判明しました。この結果から、汚水量の時間変動や上流域からの流入状況をより詳細に把握する必要が発生しました。しかし、ここで2年という月日を迎えつつあります。
【さいごに】この街に残る記憶の破片
~Recuerdos desde un rincón del mundo~
2年間の活動を振り返ると、私にとって最も大きな成果は技術的なものではなく、人とのつながりだったように思えます。
活動当初は、「何を残せるか」「どのような成果をあげられるか」といったことを考えていました。しかし、時間が経つにつれ、現地の人々とともに過ごした時間そのものが成果であるように感じ始めました。
地域のイベントやお祭り、屋台へ足を運び、できるだけ多くの人と交流することを心掛けました。その中には、過去の協力隊員を知っている人もいました。興味深かったのは、誰も活動内容について語るのではなく、「一緒に過ごした思い出」を嬉しそうに語ってくれた姿でした。
「この街で過ごした隊員との時間が、今も人々の記憶に生き続けている。」
そのことに気づいたとき、協力隊の魅力は技術協力だけでなく、人とのつながりを育んでいくことにもあるのだと感じました。
私自身もこの2年間で、多くの人たちと笑い、悩み、そして楽しい時間を過ごすことができました。いつの日か、新しくこの街にきた協力隊員が私のことを耳にし、この街のどこかに残る「私」という小さな記憶の破片に出会うことがあれば、それはとても嬉しいことです。
この街で生まれたつながりが、これからも誰かの笑顔やすてきな思い出となって、人から人へ受け継がれていくことを信じています。2026年7月30日。この街に優しい時間が流れ続くことを願いながら、千の夜を超えるたまゆらな物語は幕を閉じ、わたしは次の目的地に向かいます。