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コメの自給達成に向けた改善計画づくりを通じて 食料安全保障へ貢献 -「黄金のインドネシア」への旅路に寄り添って-

2025.06.19

2025年6月19日(署名日)、国際協力機構(JICA)は、インドネシア農業省と技術協力プロジェクト「食料安全保障のための農業計画戦略策定プロジェクト(以下、本事業)」の討議議事録(Record of Discussions)に署名しました。JICAは本事業を通じ、インドネシアの食料安全保障の実現にむけて、農業省によるコメ等の主要作物の全国レベルの自給改善計画の策定とその計画の実施、モニタリング・評価能力の向上への協力を行っていきます。インドネシア政府は同じくコメを主食とする日本の計画策定や関連の調査及び評価等に係る知見・経験の共有に大きな期待を寄せており、本年9月(仮)以降18か月間の案件実施を予定しています。
インドネシア政府にとって、食料安全保障、特に同国民の主食であるコメの安定確保は、歴史的に重要な政策課題として考えられてきました。人口の増加や地理的な多様性などの特徴を抱える同国にとって、安定的かつ十分な食料供給を確保することは国家の安定と国民の福祉に不可欠であり、例えば「食料に関する2012年法律第18号」において国民の食料へのアクセス改善などが政府に義務付けられています。

一方、インドネシアでのコメの生産量は過去5年間年間3000万~3100万トン程度[1](中央統計局)で緩やかな減少傾向にあり、人口増加による需要増に見合った生産量の拡大ができておらず、特に2023年と2024年は近隣国からのコメの輸入量が大幅に増加しました。
こうしたなか、2024年10月に樹立したプラボウォ政権は2045年までの先進国入りを目指す「黄金のインドネシア」をスローガンに掲げ、食料自給を通じた食料安全保障を最重要課題の一つとして掲げています。同政権は2025年2月に公表した「国家中期開発計画(RPJMN)」(2025年-2029年)に基づいて、5年以内の食料自給達成を目指して、食料担当調整大臣府の設立やコメの政府買取価格の引上げなど食料自給達成に向けた体制整備を進めています。
本事業のカウンターパートである農業省計画局は、それらの取組の中心的な役割を担う存在として食料安全保障の実現に向けた戦略及び具体的な計画の策定が求められており、現在、国家中期開発計画(RPJMN)に基づく農業省全体の「戦略計画(RENSTRA)」(2025年-2029年)を策定しています。農業省の戦略計画の枠組みは食料安全保障含めた多岐にわたる農業分野の課題について、農業省全体の取組の方向性を示す極めて重要な計画として位置づけられています。

農業省は、天候等のやむを得ない理由による生産量の増減も考慮した安定的な自給確保のためには、不作時においても自給率100%を達成できるような生産量を確保する必要があると認識しています。しかし、このような考え方に基づいた具体的な計画とその評価・モニタリングの枠組みは作られていないため、本事業において産地の現状・課題分析、評価などの作業を通じて、農業省計画局による全国レベルでの自給改善計画づくりに協力していきます。
インドネシアのニーズが最も大きく、日本が長年自給を達成してきた知見が最も活かせるコメ等を対象に、最重要課題の一つである食料安全保障への協力を通じ「黄金のインドネシア」への旅路に寄り添いながら同国と日本の更なる関係強化に貢献していきます。

JICAインドネシア事務所竹田所長

インドネシア農業省Ali Jamil事務総長

案件基礎情報

・国名

インドネシア共和国

・案件名

食料安全保障のための農業計画戦略策定プロジェクト

・実施予定期間

1.5年間(18カ月)

・実施機関

農業省

・対象地域

インドネシア全土

・事業内容

食料安全保障を達成するためのコメ等の主要穀物の自給改善計画を策定することにより、農業省計画局の計画策定及び実施能力が向上し、インドネシア政府が最優先課題として挙げている食料安全保障の促進に寄与する

本件に関するインドネシア国内問合わせ先

◆本事業について
JICAインドネシア事務所担当 實方
TEL: +62-21-5795-2112 (ex.445)
E-mail:jitsukata.hiroaki@jica.go.jp

◆広報について
JICA Indonesia事務所広報担当 プトリ
TEL: +62-21-5795-2112 (ex.222)
E-mail:putrisiahaan.in@jica.go.jp

参考情報:コメ生産に関連する主なJICAの協力事業(実施中の案件)

【灌漑分野における施設整備の円借款事業】
1970年から延べ50件以上実施し、約37万haに及ぶ灌漑面積拡大に貢献してきました。現在は、ルンタン、コメリンでの灌漑事業を実施中です。(ルンタン:3.7 万ha対象、借款対象額:482億円。コメリン:8500ha対象、借款対象額:158億円※過去フェーズで整備した施設改修含)

【ルンタン灌漑近代化事業】
インドネシアの、コメの主産地であるジャワ島では、都市化・工業化に伴う農地面積の減少に伴い、恒常的に輸入が必要な状態であり、コメの自給率達成はインドネシアの喫緊の課題です。本事業の対象地である西ジャワ州チマヌック川流域のルンタン地区はインドネシア第二位の灌漑面積(約8万ヘクタール)を有する重要なコメの生産地ですが、灌漑施設の大部分が老朽化により破損しており、乾期には施設の約7割に水が行き渡らない状況です。この協力では、ルンタン灌漑地区において、灌漑施設の改修、水管理システムの構築および維持管理体制の強化等を支援します。これにより、コメなどの農業生産の増大を図り、農民の所得向上及びインドネシアの食料安全保障に寄与します。
https://www.jica.go.jp/oda/project/IP-573/index.html

【コメリン灌漑事業(フェーズ3)】
インドネシアのコメの主産地ジャワ島では、都市化・工業化に伴う農地面積の減少に伴い、恒常的に輸入が必要な状態であり、コメの自給率達成はインドネシアの喫緊の課題です。コメリン灌漑地区は、スマトラ島南部のコメリン川上流域でのコメ等の生産増大のために開発され、インドネシア第四位の灌漑面積(7.3万ヘクタール)を有します。日本は1979年から継続的にコメリン灌漑地区の整備を支援しており、この協力では、最終段階として未だ灌漑用水が供給されない農地への水供給および維持管理能力の強化、フェーズ2までに整備した施設の改修を行います。これにより、コメリン灌漑地区において、コメなどの農業生産の増大を図り、農民の所得向上およびインドネシアの食料安全保障に寄与します。
https://www.jica.go.jp/oda/project/IP-574/index.html

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