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JICA海外協力隊発足60周年について 

2025.04.03

 JICA海外協力隊*、皆さんも一度は名前を聞かれたことがあると思います。
 
 2025年、JICA海外協力隊は発足から60年の節目の年を迎えました。JICA海外協力隊は1965年に発足し、ラオス・カンボジア・マレーシア・フィリピン・ケニアの5か国へ29名を派遣したところから始まり、2024年12月時点で派遣国累計99か国、派遣人数累計57,000人に到達。

 マレーシアには1966(昭和41)年1月15日、体育隊員、稲作隊員(2名)、野菜隊員(2名)の計5名が到着しました。それから60年、現在までに1,660名の隊員が派遣されています。職種別では日本語教育が最も多く160名、次いで幼児教育(74名)、電気・電子機器(電子設備)(71名)、野菜栽培(56名)、食用作物・稲作栽培(54名)、環境教育(52名)、作業療法士(48名)、自動車整備(46名)、体育(43名)、コミュニティ開発(41名)と続いています。

日本語教育隊員(2024年)

 派遣者数第1位の日本語教育(日本語教師)隊員は、1966年のマラヤ大学派遣を皮切りに、現在のマレーシア日本国際工科院(MJIIT:Malaysia-Japan International Institute for Technology)派遣まで途切れることなく派遣しています。1960年代後半以降、マレーシアでは日系企業に勤める人たちや日系企業への就職を望む人たちの間で日本語学習熱が高まったこと、また1981年にマハティール首相(当時)が東方政策を提唱したことも、日本語教育隊員に対する要請が増えた背景にあります。ちなみに、現在JICAマレーシア事務所で勤務しているマレーシア人スタッフの一人は、Secondary School在学中に協力隊員から日本語を学んでいます。

幼児教育隊員(1986年ごろ)

 第2位の幼児教育(幼稚園教諭・保育士)隊員の多くは、1980年代を中心に連邦土地開発公団(FELDA)と連邦土地統合整備公団(FELCRA)へ派遣されました。当時、FELDAは入植地における幼児教育に関する責任を担っており、隊員たちは幼稚園や保育園で子どもたちが「遊びながら学ぶ」ことの重要性を一貫して訴え、子どもの成長にあわせた生活習慣の指導を実践していました。

自動車整備隊員(1984年ごろ)

 2025年2月末現在、マレーシア全土に19名の隊員が派遣されており、そのうち約半数が社会福祉分野(障害児・者支援、理学療法士、作業療法士、高齢者介護など)で活動しています。そのほか、職業訓練、日本語教育、環境教育、理数科教育、スポーツの分野で隊員が派遣され、それぞれの専門技術を活かして活躍しています。 

数学教育隊員(2024年)

 今後のマレーシアへの海外協力隊派遣については、外務省の定める「対マレーシア 国別開発協力方針」に基づき、「産業人材育成支援」、「環境保全」、「社会的弱者支援」を中心に、理数科教育や日本人の強みを活かせる分野としてスポーツ(柔道、新体操など)の派遣も継続していく計画です。

 海外協力隊の派遣には以下の3つの目的があります。
(1)開発途上国の経済・社会の発展、復興への寄与
(2)異文化社会における相互理解の深化と共生
(3)ボランティア経験の社会還元

 マレーシアの経済・社会の発展に貢献することはもちろん、草の根活動としてマレーシアの人々と同じ言葉を使い、共に生活し、共に活動する中でお互いを理解し、友情を育み、信頼を築き上げることも海外協力隊派遣の柱の一つとなっています。また、多くの隊員が、それぞれの任期を終えて帰国する際に「教えるよりも学ぶことが多かった」と述べて帰国します。このことも、海外協力隊派遣の特性を表していると言えます。
  
 高所得国入りを目前に控えたマレーシアにおいても、特に地方を中心に協力隊派遣が求められるところはまだまだ多くあります。マレーシアの皆さん、そして日本の皆さんの期待に応えられるような事業を継続していきたいと考えていますので、引き続きご支援いただけますようお願い申し上げます。

* JICAボランティア事業によって派遣される方々の総称。青年海外協力隊の他、シニア海外協力隊、日系社会海外協力隊などがある。
https://www.jica.go.jp/volunteer/60th/

 本稿は、KL日本人会ニュースレター2025年4月号にも紹介されています。

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