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【マレーシアのJICA海外協力隊の素顔に迫る!】 環境教育の現場で「気づき」を行動に変える―マラッカで奮闘する渡邊隊員インタビュー

2026.09.23

 マレーシア・マラッカ州にあるマラッカ工業大学で、環境教育の現場を支えている渡邊隊員。環境教育隊員は、人々が自然と調和した健やかな暮らしを送るために、身の回りから地球全体まで幅広い環境問題について学び、行動につなげる教育・啓発活動に取り組みます。そして、「ごみ問題」「自然保全」「環境理解」をテーマに、任地の課題改善に向けた活動を展開しています※。

 「環境問題は、知っているだけでは変わらない。気づいてもらって、行動を変えてもらうことが大切」。そう語る渡邊隊員は、日本で自治体職員として培った経験を生かしながら、異なる文化や価値観の中で工夫を重ねてきました。現地での活動の様子や、暮らしの中で感じたギャップ、そして読者へのメッセージを、インタビュー形式でお届けします!

※出典:環境教育 | JICA海外協力隊

Q :まず簡単に自己紹介をお願いします。どんな経歴で、現在どんな場所で活動していますか?

A : 2025年4月からマレーシアで活動しています。日本では事務職として自治体で働いていました。現在はマラッカ州にあるマラッカ工科大学 スマート環境センターで、環境教育に取り組んでいます。大学の中での環境関連の活動や授業に加え、州内の小学校・中高等学校や地域コミュニティに出向いて講座やワークショップを行っています。

Q :マレーシアでの活動を、読者にわかりやすく一言で言うと?

A : 環境教育は、「気づきを促し、行動を変えてもらう」ための活動です。環境問題は知識として知っていても、実際の行動に結びつくまでが難しいです。そこを少しでも後押ししたいと思っています。

Q :活動の現場はどんな雰囲気ですか?大学の中が中心ですか?

A : 大学が拠点ですが、実際の活動は「外」が多いです。学外プログラムは月に2~3回、学内イベントも月に1~2回ほどあり、週に1~2回は外出する感覚です。配属先のスマート環境センターはマラッカ州教育局と連携し、スタッフや大学生と一緒に小学校・中高等学校や地域コミュニティなどで環境教育を実施しています。現場では毎回、ワークショップを実施するメンバーが異なり、訪問先の学校もその都度変わるため、その場の空気をつかみながら進めています。

           小学校でのワークショップの様子

Q :現地で活動される日の、1日の流れも教えてください!

A :学外プログラムがある日の、午前中は小学校・中高等学校などへ行ってワークショップを実施します。午後は片付けをしたり、緑のカーテン(つる性植物で日差しを遮る取り組み)の施工・手入れやコンポスト作成などをしたりします。イベントや学外プログラムがない日は、朝に緑のカーテンやコンポストの手入れをして、その後はイベント用の資料づくりなど事務作業が中心です。活動内容について、配属先の先生方に相談をして「次はこうしたい」「これをやってみたい」と話し合いながら進めています。

Q :日本からマレーシアに来て最初に驚いたこと、意外だったことは何ですか?

A : 仕事の進め方と時間感覚です。日本では、事業の実施内容や実施時間は会議できちんと決めることが多いと思いますが、こちらではWhatsAppのグループトークの流れでどんどん決まっていくことが多いです。最初は戸惑いましたが、「この流れに乗る」ことが分かってきてからはストレスが減りました。相手が動きやすい形にするにはどうしたらよいか、考え方が変わりましたね。

Q :環境教育の面で、マレーシアの印象はどうでしたか?

A : 最初は「既に日本と同じような水準で環境教育が行われている。想像以上に進んでいる。」と驚きました。だからこそ、自分は何ができるのだろう、と悩んだ時期もありました。ただ、同じ内容でも「日本人としての視点」を加えることで、現地の先生方や子どもたちに新しい気づきが生まれると感じましたし、そこに自分の役割があると思うようになりました。

Q :具体的に、どんな工夫で「気づき」を生み出しているのですか?

A : 例えばエコバッグづくりです。私は日本語クラスの授業で、風呂敷を使ったエコバッグ作りを紹介しました。その際、マレーシアなら古いトゥドン(イスラーム教徒の女性が髪や首を覆うスカーフ)を使ってエコバッグを作ることが出来ると説明し、新たな「気づき」を感じてもらいました。ただ、宗教や文化への配慮は欠かせないため、「トゥドンの使い方として問題ないか」を先生方に確認した上で実施しました。異なる文化を「押しつけ」ない一方で、新しい視点はきちんと届ける、そのバランスを意識しています。

         日本語クラスでのエコバッグ作りの授業後、学生とともに

Q :具体的に宗教・文化面で気をつけていることはありますか?

A :イスラーム教では、家族ではない男性と女性は身体的接触を避けます。
例えば、ろうそく作りのワークショップでは、子ども達に材料を渡す際、手渡しせず、机の上に置いて、取ってもらうようにしています。こちらでは「当たり前」のルールが日本と違うこともありますが、適切に対応していくことで、お互い心地良い環境を作り出せると感じています。

Q :子どもたちに伝えるうえで、反応が良い授業スタイルはありますか?

A : 体験型(ハンズオン)がとても効果的です。講義形式で話すだけでなく、手を動かして理解する活動のほうが興味を持ってもらえます。折り紙を使って折る楽しさを体験してもらった後、そこから紙パックや紙箱を小さくたたんで捨てることへと説明を結びつけると、子どもたちの表情が変わる瞬間があります。

  折り紙を楽しむ子どもたちに、ごみをたたんで捨てることで容積を減らせることを説明する様子

Q :一方で、難しさを感じる場面はありますか?

A : 学外プログラムでは、初めて訪問する学校に行くため、参加人数や学年、子どもたちの雰囲気が当日まで分からないことがほとんどです。どんな話が響くか、試行錯誤の連続ですね。言語面も簡単ではありませんが、周りの先生方が助けてくれますし、少しずつできることが増えてきました。

Q :教育が進んでいる一方で、課題だと感じたことは?

A :「知っている」と「行動する」の間にギャップがあることです。街中でポイ捨てを見かけたり、食堂では使い捨てプラスチック製品が多く使用されたりしています。そのため私は、まず自分がマイボトルを持ち、「これに入れて」と頼む姿を見せています。小さなことでも「そういう方法があるんだ」と気づく人が増えれば、行動が変わるきっかけになると思っています。

Q :マレーシアでの暮らしについても教えてください!

A : 通勤はスクールバスで、20分ほどで到着します。買い物は配車アプリのGrabを使い、20分ほどの距離にあるスーパーでまとめ買いをしています。休日は、地元のイベントに参加したり、美味しいお店を開拓したりしています。生活しているからこそ、結婚式やイスラームの宗教行事に参加したり、お宅に招かれて食卓を囲んだりできるのも、貴重な経験です。

Q :ちなみに、マラッカでおすすめの名物料理や観光地はありますか?!

A : 辛い料理のアッサムプダスや、ココナッツシェイクが有名です。観光ならオランダ広場、ザビエル教会、マラッカ海峡モスク、ジョンカー・ウォークの夜市などが楽しいと思います。

Q :活動も折り返しを迎えた今、感じている変化を教えてください!

A : 自分の「適応能力」が向上したと思います。文化や仕事の進め方の違いを、以前より自然に受け入れられるようになりました。また、マレーシアでは多民族の人たちが共に暮らし、お互いの文化を尊重している姿が強く印象に残っています。帰国後は自治体の仕事に復帰しますが、多文化共生の視点を生かしていきたいと考えています。

Q :最後に、読者へのメッセージをお願いします。

A : 海外への最初の一歩は、その国に興味を持つことだと思います。きっかけは何でも構いません。現地の人と友達になる、好きなコンテンツから入る、そこから世界が広がっていきます。マレーシアも、自然・文化・歴史など多面性のある国で、知るほどに面白さが増します。興味のあるところからでいいので、一歩踏み出して世界を広げてみてください!

                 インタビューの様子

聞き手(インタビュー後の感想)

 授業や学外プログラムを通じて、渡邊隊員が届けているのは環境の「知識」だけではなく、暮らしの中での小さな行動の変化でした。お話からは、日本の視点を加えつつ宗教・文化にも丁寧に配慮しながら、体験型の工夫で「気づき」を引き出していく姿が伝わってきます。今後も、マラッカの現場で積み重なる実践が、周囲の行動をどう動かしていくのか注目です!!


語り手:渡邊隊員

聞き手:JICAマレーシア事務所インターン 
山田のぞみ 佐藤美友

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