皆さん、こんにちは。

ニジェールは、サハラ砂漠の南縁部に位置する、いわゆる「サヘル地域」を構成する国で、国土の3分の2が砂漠で覆われた内陸国です。人口は約2,600万人(2022年、世銀)。降水量が乏しく、砂漠化の脅威や干ばつにたびたび見舞われる厳しい自然環境にあります。耕作可能な土地も国土の1割程度と少ないなか、8割の住民が農業に従事していますが、生産は不安定で食料の安定確保が大きな課題となっています。ニジェールの1人当たりの国内総生産(GDP)は530ドル程度(2022年、世銀)です。また、国連による人間開発指数は0.400(2021年)で、191か国中下から3番目と、最貧国のひとつに数えられています。

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我が国は1976年以来、継続的な食糧援助に加え、医療施設・機材整備や地下水開発、小中学校の建設などの無償資金協力や、学校運営の改善、理数科教育の質の向上、医療人材、農業普及員の育成、日本への技術研修員の受入れなどの技術協力を実施してきました。1985年から派遣を開始した青年海外協力隊は、2011年の治安悪化による派遣中断までに700名を数え、厳しい環境のなか各地で地元住民とともに生活しながら協力活動に情熱を傾け、草の根レベルでニジェールと日本との信頼関係を築いてきました。かつて協力隊員として派遣された方の中には、現在も専門家としてニジェールの発展のために活躍されている方がいます。

ニジェールを含むサヘル地域では、近年不安定な治安情勢が続いています。7か国と国境を接するニジェールでは南部、西部で国境を越えてくるテロ事件がたびたび起きており、我々や国際社会による協力活動も制限を余儀なくされています。ニジェール政府は、欧米諸国の協力を得て治安対策に重点的に取り組む一方、「経済社会開発計画(2022-2026)」を策定し、食料安全保障の達成や、基礎的社会サービスの拡充に取り組んでいます。

そのような状況で、JICAはニジェールでこれまで培ってきた絆を途切れさせないよう工夫しながら活動を続けています。現在は、「教育へのアクセス・質の向上」「農村開発を通じた食料安全保障の達成」「サヘル地域の平和と安定のための支援」の3つが協力の重点分野です(具体的なプロジェクト活動を是非本HPでご覧ください)。キーワードは参加型。現下の不安定な治安状況で、日本人専門家のニアメ市外での活動は制限されていますが、ニジェール政府関係機関や国際機関と緊密な関係を築き、また現地コミュニティとの関係も大事にして、活動を展開しています。

ニジェールにおいて我が国の協力を振り返るとき、JICA専門家であった期間を含め30年以上にわたりニジェールに滞在され、地方の外科医療人材の育成に尽力されて2017年3月に当地で逝去された谷垣雄三先生を忘れることはできません。

私たちは、これまで様々な人々の努力により築かれてきたニジェールとの信頼関係を一層発展させられるよう、関係機関とも協働しながら、今後もニジェールにおける「人間の安全保障」への貢献と「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に向けて取り組んでまいります。

ニジェール支所長
野田 久尚