プロジェクト名
(和)家畜衛生対策及び動物由来食品検査サービス向上プロジェクト
(英)Project for Improving Servicies for Animal Safety of Foods of Animal Origin
対象国名
パラグアイ共和国
署名日(実施合意)
2023年5月16日
プロジェクトサイト
全国及び適切な薬剤使用に関する活動についてはゾーンユニット(地方事務所)単位のパイロット地域
協力期間
2023年10月24日~2027年10月24日
相手国機関名
(和)国立家畜品質・衛生機構(SENACSA)
(西)Servicio Nacional de Calidad y Salud Animal (SENACSA)
背景
農業立国であるパラグアイにおいて、畜産業は国家経済を支える主要産業であり、畜産物が農産物輸出額に占める割合は大豆に次ぎ第2位の地位にある。なかでも、牛肉を中心とする食肉生産が重要であり、世界における牛肉主要輸出10カ国の一つとして、年間27万トンを超える牛肉が50カ国以上に輸出され、約11億米ドルの外貨収入をもたらす(パラグアイ中央銀行統計、2022)とともに、域内外の食料安全保障の重要な一翼を担っている。国内には約15万の家畜生産農家の他、と畜・流通・輸出関連産業に従事する者も多く、同セクターの雇用に果たす役割も大きい。動物由来食品1の需要が伸び続け、大規模集約型の農場では効率的な生産体系の改善が進む一方、約90%を占める中小規模農家2では、厳しい自然環境と家畜疾病対策を含む飼育管理技術の欠落により、生産効率が低い状態が続いている。また、拡大する需要の一方で動物由来食品の安全性検査体制は脆弱であり、食品の安全を担保するには検査能力、データ管理能力が不足している。HACCPを導入している輸出対応食肉処理施設と、そうでない国内消費向けと畜場との衛生管理レベルの差も大きい。
パラグアイ政府は、2014 年から 2030 年までを対象期間とする国家開発計画(「Plan Nacional de Desarrollo Paraguay 2030」)を策定し、3つの戦略軸として「①貧困削減及び社会開発、②包括的な経済成長、③パラグアイの世界への適切な参入」を掲げ、畜産農業分野の生産性・競争力の向上、パラグアイ製品の輸出促進などに重点的に取り組んできている。この中で、重要な家畜感染症の診断のためのインフラ整備やトレーサビリティシステムの構築、ワクチン接種による予防などの家畜衛生対策、そして食肉処理施設での食肉衛生検査や残留物質モニタリングなどの食品衛生対策を実施している。2019年には、「パラグアイ薬剤耐性(AMR)計画2019-2023」を策定しており、同計画は家畜と人の医療上重要な抗菌剤に対する耐性菌の薬剤耐性率を低く抑えることを目的としている。畜産分野における、啓発・教育、サーベイランスの実施、感染予防・管理、抗菌剤の適正使用に取り組むことが示されているが、生産現場での対策に取り組む段階には至っていない。
畜産を主要産業とするパラグアイにおいて、家畜感染症は同国の経済に甚大な損失をもたらすことから、我が国は「広域協力を通じた南米南部家畜衛生改善のための人材育成プロジェクト」(2005~2010年)等を通じて、近隣国との連携のもと家畜感染症対策に資する人材育成を行ってきた。また、2019年から国立家畜品質・衛生機構(SENACSA)に「家畜衛生対策強化アドバイザー」を派遣し、SENACSAの強化に向けた現状診断を行い、食肉衛生検査モバイル情報システム開発を支援するなど同機構の機能強化を図ってきた。その結果、家畜疾病対策と動物由来食品の品質・安全性管理のための同機構の技術向上と、同機構本部の総局と地方事務所の連携強化の必要性が明らかになった。
パラグアイにおいて国内消費および輸出向けの動物由来食品の安全性と安定的な供給体制を改善し、国家開発計画で掲げられた目標を達成するためには、SENACSAの食品安全と家畜衛生にかかる能力強化が重要である。こうしたなかパラグアイ政府は、畜産農家に経済的損失を引き起こし、食料安全保障を脅かす家畜疾病と、動物由来食品の価値を低下させ消費者に健康被害をもたらす病原体や残留物質の制御に向けて、動物由来食品の安全性検査の強化や、地方事務所及び民間フィールドサービス提供者との連携強化、さらには食の安全と持続可能な開発の観点から薬剤耐性対策にも取り組む本事業の支援を我が国に要請した。
目標
上位目標
パラグアイにおいて質の高い家畜衛生および食品衛生サービスが提供される。
プロジェクト目標
国立家畜品質・衛生機構(SENACSA)の、サーベイランスに基づく家畜衛生と動物由来食品衛生の管理能力が向上する。
成果
- 1 . 動物由来食品の安全性検査および提携ラボに対する監査機能が向上する。
- 2 . SENACSA関係総局と関連機関の連携のもと、動物由来食品の安全性検査データが効率的に解析・管理・共有される。
- 3 . 動物用医薬品の適正使用に関するSENACSAの指導機能が強化される。
投入
日本側投入
- 1 . 長期専門家
- 2 . 短期専門家
- 3 . 本邦研修、第3国研修
- 4 . 必要な機材
- 5 . 運営費(専門家の旅費や日当など)
相手国側投入
- 1 . カウンターパート(C/P)の配置:プロジェクトディレクター、プロジェクトマネージャー、家畜疾病診断技術、食肉安全検査技術、食肉検査データ管理、啓発・普及活動計画
- 2 . プロジェクト事務所及び執務環境(IT機器、家具、インターネット環境、会議室、他)
- 3 . プロジェクト実施のためのサービスや施設、現地経費(C/P旅費、燃料費、光熱費など)
- 4 . 専門家とC/Pの移動手段
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