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学び助け合う温かいコミュニティの実現へ(第2回JISR Friendly Reunion)

第2回JISR Friendly Reunion開催

2024年2月17日、JICA竹橋は子どもから大人までたくさんのシリアの人々が集まり、賑やかな雰囲気に包まれていました。この日、「シリア平和への架け橋・人材育成プログラム(JISR)」第1期生から第7期生の研修員が一堂に会する第2回同窓会設立支援イベント「JISR Friendly Reunion」が開催されました。日本各地から修了生24名とその家族21名に加え、研修員18名とその家族4名が集結しました。

シリアと日本の架け橋となる人材に対し、日本の大学院修士課程で学ぶ機会が提供されるJISRプログラムにおいては、その研修員の多くが、母国の現状から卒業後すぐに帰国することが困難なため、日本で就職し生活しています。プログラム開始から7年が経過し、来日したJISR生が繋がり続けることで、将来的なシリアの復興に役立てるネットワークを作れるよう、また日本国内でも助け合えるよう、JISR生が一堂に会するイベントが開催されました。昨年の第1回目( JISR Friendly Reunion研修員大集合!‐日本とシリアの「架け橋」としての活躍へ-)に続き、第2回目の開催となる今回は、JISR生が自ら内容を考えた「手作り」の会となりました。立候補により選定されたJISR生代表者8名から成る「運営委員会」が中心となって、修了生・研修員の要望を事前に聞き取り、皆がやりたい・知りたいと思う事柄を網羅したイベントを計画したのです。

第2回JISR Friendly Reunionの概要

第1部ではJICAによる開会挨拶に続き、運営委員会メンバーから流暢な日本語でJICAやプログラムの運営支援スタッフに対しお礼の言葉がありました。その後、JISR同窓会のビジョンとして「仕事やプライベートで協力しサポートし合える活気あるJISR修了生・研修員のコミュニティを作り育てること」が発表されました。続いて、JISR生がこれまでに達成してきたこととして、就職、会社での昇進、博士号取得、日本語能力検定試験合格、結婚など様々な祝福すべき事柄が紹介されました。紹介されたJISR生には出席者全員から温かい拍手が送られました。また2023年に起きたトルコ・シリア地震の被災者のための住居建設プロジェクト(Japan Bridge)はJISR生が中心となって実施されており、その活動成果も報告されました。

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その後、IT・建築・MBA・博士課程進学といった各々の専門性・特性に応じた小グループに分かれて、専門的経験を活かしてどのような貢献ができるか、活発な意見交換を行いました。どの小グループでも、日本企業における仕事上の経験について定期的に学び、情報発信したり、同じ分野で働く日本人と交流する、といった今後1年間の活動計画について話し合いがされました。各グループからの発表では、以下のようなアイデアができました。

  • IT分野のグループ:JISR生に限定せず在日シリア人のIT専門家とも交流を図る。
  • 建築分野のグループ:日本の建築業界のトレンドや、キャリア形成に必要な資格・スキルについて定期的に紹介するニュースレターを発行する。
  • 博士課程進学者のグループ:奨学金の取得方法、助手等の大学でのアルバイト、学会参加のための準備等について情報共有をする。
  • MBAのグループ:日本で働きたいシリア人向けに日本のビジネス慣習等を学ぶ研修を実施する。

どれも日本での経験から得た知識を、シリア人同士惜しみなく分け合い、助け合いたいという思いが溢れる計画でした。

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グループワークで話し合うJISR生

第3部は“Worth to Know”と称したコーナーで、日本語習得や帰化、不動産制度など、皆の関心が高い事項について、それぞれを既に成果を上げている修了生から、そのコツやアドバイスが共有されました。特に日本語検定試験1級に合格した研修員からは、ポッドキャストやラジオの活用方法など具体的な勉強法や実際使用したお勧めテキストが紹介されました。多くの研修員が熱心にメモを取ったり、発表画面をスマホで撮影したりしていました。どの話題も参加者は皆一様に真剣な眼差しで耳を傾け、関心の高さが伺えました。

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日本語の勉強方法について話すJISR修了生Ahmad Alkattaaさん

さらに、今回は、研修員の家族も同様に繋がり助け合うことが重要であるとの観点から、運営委員会からの強い希望もあり、JISR生のグループワークと並行して配偶者向けアラビア語によるプログラムも実施しました。日本在住期間が長いシリア人講師から、日本で生活していく上で日本人との交流は大切であり、そのための日本語の習得は極めて重要であることが強調され、自治体が提供している日本語講習の紹介がありました。仕事の探し方、小規模ベンチャーを始める際の手続き、税金の支払いなどの実用的な話題に参加者は皆興味を持ち、質問がたくさん出ていました。その他、出産時や病院利用時の補助制度、保育所の入所申込方法等の具体的な情報が共有されました。参加したJISR生の配偶者Ruba Alerib Almureeさんは、「知らないことがたくさんあり、有意義な情報を得られてとてもよかった。」と感想を話していました。今回初めて顔を合わす配偶者たちもいて、そのネットワーク構築にもつながったようです。

また、メインプログラム終了後には、懇親会が開かれ、JISRの協力機関であるUNHCR駐日事務所や、過去にシリアに派遣されたJICA海外協力隊OB・OGで組織されているシリアOV会の方々も交えて、アラブ料理を囲みながら楽しいひと時を過ごしました。

参加者の感想

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感想を話すJISR修了生Hussam Fattoumさん(右)

運営委員会メンバーとして今回のイベントの事前準備から携わったJISR修了生のHussam Fattoumさんに感想を伺ったところ、「なかなか修了生や研修員が全員一堂に会する機会を作るのは難しいので、実現できて嬉しいです。運営委員会メンバーとして、事前の話し合いを何度も行いました。仕事があるので時間を作るのが難しかったですが、その努力が報われるような良い会だったと思いました。発表者のプレゼンも上手で、知りたい情報が共有されました。今後は、このようなイベントを自分達だけでもできたらよいと思います。まずは、小グループを作って活動し、日本にいるシリア人とシリアにいるシリア人もつながれるようにしたいです。」とのコメントがありました。

更なる活躍を期待して

第2回JISR Friendly Reunionは、JISR生がイニシアティブを発揮し、参加者が有意義に感じられる会となりました。最後には、4つの専門グループ(IT・建築・MBA・博士課程進学)から各3名が代表として選出され、合計12名が新たな運営委員会メンバーとしてこれからJISR同窓会を牽引する役割を担うことになりました。今後はグループで決めた活動計画に従い、定期的なミーティングを通して計画が実行に移されることや、JISR同窓会の運営が自走していくことが期待されています。留学生として来日した当時は支援を受ける側であった元JISR生は、気が付けばいつの間にか支援する側になっている姿を見て、非常に心強く感じました。後進の努力を応援し、お互いの達成をお互いが喜び合い、助け合う温かいコミュニティに成長を遂げたJISR同窓会。今回の第2回JISR Friendly Reunionを経て、助走から離陸する瞬間を参加者皆が共有できたように思いました。JISR同窓会の今後の益々の発展を期待したいと思います。