- トップページ
- 海外での取り組み
- シリア
- シリア平和への架け橋・人材育成プログラム
- JISR Friendly Reunion研修員大集合!‐日本とシリアの「架け橋」としての活躍へ-
2023年4月1日、JICA東京で「シリア平和への架け橋・人材育成プログラム(JISR)」の第1バッチから第5バッチの研修員が一堂に会する初めてのイベント、JISR Friendly Reunionが行われました。JISRプログラムを修了した51名の研修員のうち、全国から34名が45名の家族とともに集結し、現役研修員15名とその家族との交流を楽しみました。
第一部では、「シリアと日本をつなぐ」活動の紹介として、過去にシリアに派遣されたJICA海外協力隊OB・OGで組織されているシリアOV会の活動紹介と、第2バッチ研修員が執行役員を務める(株)BonZuttnerの取り組みが紹介されました。
海外協力隊・シリアOV会からは、森野謙氏と小林ますみ氏に登壇いただき、OV会の概要、各種イベントやJISR研修員の配偶者への日本語学習支援、シリア人留学生への学習支援やシリア人同士の交流会等の活動についてお話しいただきました。
イベントに参加したことがある研修員や、配偶者が日本語学習支援でお世話になっている研修員もいましたが、これまであまり同会の活動を知らなかった研修員からは、母国での生活経験を持つ方々がシリアとの繋がりを大事にしながら活動していることを知ることができ、喜びの声が聞かれました。また、日本語学習機会の提供に関心を寄せた研修員も多く、同会活動への参加を希望する声も多く挙がっていました。
森野氏によるシリアOV会によるご発表
(株)BonZuttnerからは、代表取締役の坂下裕基氏とJISR第2バッチ研修員のイスカンダル氏が、参加してくれました。坂下氏からは、社名に秘めた想い(フランス語の“Bon=良い”、日本語の“Zutt=ずっと”、英語の“ner=実行する人”を合わせて、「良いことをずっと実行する人」が表されています!)や同社の『避難民「問題」を社会「資産」に』というミッション、そして日本企業より受注した業務をシリア在住エンジニアに委託しシリアの雇用創出に貢献する同社のビジネスモデル等を紹介いただきました。また、2023年2月に発生した「トルコ・シリア大地震」を機に、JISR 修了生等の在日シリア人が立ち上げた募金プロジェクト「Japan Bridge」へ同社の売り上げの5%を寄付する貢献についても、触れられました。
坂下氏による(株)BonZuttnerのご紹介(右:イスカンダル氏)
その後、イスカンダル氏からは、JISR研修員の日本企業でのインターンシップの様子、日本人コミュニティとの文化交流に関する新聞記事、就職先での活躍記事や、ドキュメンタリー映画を作成し上映した研修員等、これまでのJISR生の多岐にわたる活躍が紹介されました。
「かつて難民であった自分達には、今、様々な可能性がある。紹介した事例のように、一人でも素晴らしいことを達成することができるが、皆で協働すれば、より影響力のあることが実現可能になる。」として、「トルコ・シリア大地震」で被災したシリア北東部の方々へ、住まいを提供するためのJapan Bridgeの活動概要や現在までの取り組み、成果が報告されました。
イスカンダル氏は、「JISR プログラムの各参加者は、その独自の成功ストーリーを持っています。100を超える応募者からいくつもの選考過程を経て選ばれ、日本に到着し、修士号を取得しました。 この道のり自体が素晴らしい功績であり、称賛に値するものです。
そして、今、日本に生きる私たちの使命は、日本の人々に私たちシリア人は、“難民の背景を持つシリア人”ではなく、それ以上の存在であることを示すことです。それは、私たちが社会に付加価値を提供できる存在であり、どこに行こうとも自分たちで成功をつかみ、情熱に満ちた未来を切り開いていける存在だということです。」と力強く語り、会場の研修員たちからは、賛同と共感の大きな拍手が巻き起こりました。
その後行われたグループワークでは、5つのグループに分かれ、「シリアと日本をつなぐためにわたしたちにできること」というテーマについてグループごとにアイディアを出し合い、それぞれのグループから発表が行われました。
研修員から出たアイディアは多岐にわたりましたが、主に、シリアと日本の相互理解を深めるための文化交流、シリアの復興開発・経済発展のための活動、日本語を含めた教育関連、そしてJISR研修員(在日シリア人)への支援といった内容でした。
例えば、日本人にシリア文化への理解を深めてもらうことを目的に、各自の職場やコミュニティ、またはJICAやシリアOV会と協力し開催するイベントで、シリアの食・音楽・ダンス・衣服・歴史等の発表を行うといった案や、シリアと日本それぞれのドラマを翻訳し紹介し合うといったユニークなものもありました。また、日本の専門家から耐震・防災・平和構築、都市計画・開発(交通システム・信号・視覚障害誘導ブロック等)技術等について学び、シリアで広めていきたいという中長期的なJICAとの連携を見据えたアイディアの他、日本語学習機会の拡充、配偶者への就労支援、子どもへのアラビア語教育機会の提供といったJICAへの支援を期待する声も寄せられました。
自身ができることを少しずつでも行動に移していくこと、それこそがプログラム目的である「シリアと日本の架け橋となる」ことに繋がっていくと信じています。JICAとしても、何ができるのか、考えていきたいと思っています。
グループワークの様子:まずは各々がアイディアを書き出します
グループごとの発表の様子
第二部では、JISR研修員の家族も参加し、懇親会が行われました。大学院を修了し日本社会で新たな道を歩んでいる第1バッチから第3バッチの研修員は、日本での仕事や家族との暮らしについて報告し合い、大学院在籍中の第4バッチ、第5バッチは、まだ想像することしかできていない未来について、実際に経験している先輩研修員たちから話を聞き刺激を受けていました。
参加した子どもたちはみな、来日時から大きく成長した姿を見せてくれました。研修員の配偶者奥様たちは、新たに生まれたお子さんを見せ合ったり、それぞれの近況を報告し合い、コロナ禍で長い間会えずにいた期間を埋めるように、おしゃべりに花を咲かせていました。
また、修了生の就労支援を担当していただいていたサポートチーム[1]のみなさんも参加してくださり、オンラインでしか会うことができていなかった研修員と初めて対面で話ができたことを喜びながら、近況を尋ね合っていました。
[1] デロイト トーマツ コンサルティング合同会社や株式会社LIFULL等の社内プロボノ募集案内を通して、参加を希望してくださった方々等から成るプロボノチーム。(つながる・ひろがる人の輪 -JISR就労伴走支援サポートチーム-| シリア | 中東 | 各国における取り組み - JICA)
参加した研修員や家族たちからは、素晴らしい機会だったと会の開催への感謝と、喜びの声が多数聞かれました。また、今後も是非定期的に開催して欲しいと、JISR生同士の結びつきと、JICAとの繋がりを強くしていきたいという思いも受け取りました。コロナ禍で人との接触が制限されていた期間を経たからこそ、こうして集まることができたことは、かけがえのない喜びをもたらしてくれました。
前例のない「難民の背景を持つシリア人を留学生として日本に受け入れる」というプログラムは、常にチャレンジと試行錯誤の連続でしたが、プログラム開始から6年が経過し、こうしてプログラム終了後にそれぞれのステージで、力強く、逞しく生きている修了生の姿を見ることができて、担当者としてこの上ない幸せです。
プログラム終了後の日本での第二ステージは、決して楽なことではなく、苦労の連続であったと話す研修員もいます。それでも、より良い道に進むために、努力を続け、新しい環境に身を置き、チャレンジを続けていると話してくれました。プログラム終了後私費で博士課程に進学し、今年から社会人となる研修員の目は希望に満ちていて、新たに子供が生まれた研修員はその責任感とより一層の努力を語ってくれました。イスカンダル氏の発言のように、JISR研修員が日本に来て、学び、そして生きていることそのものがプログラムの成果と言えます。しかし、さらにその先を目指し、共に協同し、母国のため、母国と日本の関係発展のために、「架け橋」となるべく努力していくという意志を、参加者全員で確認し合った一日となりました。
左:第3バッチ研修員アナス氏、中央左:UNHCR駐日事務所葛西氏、中央右:(株)BonZuttner坂下氏、右:第2バッチ研修員、(株)BonZuttnerイスカンダル氏
(JICA国内事業部大学連携課 中澤あいり)
scroll