会社訪問:(株)LIFULL様×JISR研修員

桜が満開の2023年3月下旬、JISR研修員16名は、東京に集合し1週間の就職支援セミナーに参加しました。このうち、1日はJISR研修員の就労伴走支援にも協力いただいているサポートチーム[1]の企画により、(株)LIFULL本社を訪問させていただきました。
午前中は、「あらゆるLIFEを、FULLに。」というコーポレートメッセージとともに会社の概要のご説明があり、実際の業務内容をサービス企画及びエンジニアの社員の方よりお話しいただきました。
この際、同社でサービス企画やエンジニア担当社員を採用する際に重視している点やスキルも丁寧に教えてくださり、スキルよりも会社のビジョンにどれだけフィットするかという点が重視されていることや、挑戦する意欲を評価しているというメッセージが研修員に伝えられました。
その後、プロダクトエンジニアリング、AI戦略、リサーチ&デザインの3つの小グループに分かれて座談会が行われ、実際のプロダクトを見せていただきながら、質疑応答が行われました。使用されている技術についての質問や、企業での研究と大学院の研究との違い、研究室で学んだ知識をどのようにビジネスモデルに適用できるかなどといった質問に、社員の方から一つ一つ丁寧に答えていただきました。社内見学後、千鳥ヶ淵の桜を見に連れて行っていただき、研修員たちからは東京の有名な桜を見ることができて喜びの声が聞かれました。


[1] デロイト トーマツ コンサルティング合同会社や株式会社LIFULL等の社内プロボノ募集案内を通して、参加を希望してくださった方々等から成る。個別研修員へ伴走支援を行うチームと企画チームに分かれており、今回は企画チームによる計画・実施。(つながる・ひろがる人の輪 -JISR就労伴走支援サポートチーム-| シリア | 中東 | 各国における取り組み - JICA

<座談会にて真剣に話を聞く研修員たち>

<座談会にて真剣に話を聞く研修員たち>

午後は、サポートチームのメンバーと研修員が5つのグループに分かれ、自己紹介によりグループ内の距離を縮めた後、グループワークとして、NASAゲーム[2]が行われました。主な使用言語は日本語としたため、研修員たちは一生懸命日本語でチーム内に自分の意見を伝えていました。ゲームの正解が発表された後には、フィードバックセッションとして、参加者それぞれが、ゲームの間に自身及びグループメンバーがどのような長所が発揮できていたかを考え、グループ内で伝え合う時間が設けられました。
研修員は、自身へのフィードバック時は気恥ずかしそうにしつつも、他者が認識した強みと自身が考える強みが合致している場合は嬉しそうな表情を、異なる場合には喜びと戸惑いの表情を浮かべながら、熱心に耳を傾けていました。


[2] チームビルディングゲームの一種、コンセンサスゲーム。合意形成を行うことでチームで協働することの大切さを認識することが狙い。アメリカ航空宇宙局(NASA)が宇宙飛行士の採用試験として、社会心理学者等を集めて独自に開発したゲームプログラムと言われている。

実は、このすべてのセッションは、「内定獲得や、日本企業での働き方の理解を深めたり、日本人との関係性構築を経験するための日本語コミュニケーション力向上や日本の就業文化理解を深める」ためにサポートチームにより綿密に計画されたものでした。例えば、社員の方による仕事のプレゼンテーションや座談会では、「企業検索の際に、自身の関心がある、研究と関連がある業界のみに着目し応募企業の選択を狭める傾向にある研修員に、日本企業がどのような部署により構築されているのか、そして具体的な業務内容を知ることで、一見自身に関連がないように見える企業でも選択肢になりうることを学んでもらう」。NASAゲームでは、「日本語・英語の両方を使いながら相手に自分の意見を伝える経験」を通じてゲームを楽しんだ後、フィードバックセッションにて「グループワーク中に見えた強み・弱みを客観的にフィードバックすることで、自己分析を通じて自己理解に活用できるようにする」ために行われました。

<グループワークの様子>

<グループワークの様子>

研修員からは、1日を振り返り、「賃貸住宅の情報サービス会社かと思っていたため、このように様々な事業でIT技術の活用をしているとは知らなかったです。」「NASAゲームが楽しかったです。また、日本語を沢山日本人の方々と話すことができ、新しい言葉も学び、自分の強みも再発見することができてとても有意義でした。」「普段なかなか自分の強み・弱みを知る機会がなく、面接練習において強み・弱みを聞かれても、うまく答えることができなかったので、今回のワークを通じて自身の強み・弱みを客観視することができました。」といった声が聞かれました。


この企画には総勢12人のサポートチームの方にご協力いただきました。
その中で、2名のサポートチームの方にJISR生の印象や今回の企画についてお伺いしました。

(株)LIFULLの社員で今回の企画にメインで携わっていただいているサポートチームの龔 軼群(キョウ イグン)氏

【今回の企画について】

インターンシップを経験したJISR生を除き、多くのJISR生は、日本企業のことをあまり知らず、そこで働く社員との交流も普段は得られることがないだろうと考え、それをまず知ってもらう機会としたいと考えました。また、企業が人材を採用する際に重視しているポイントを伝えることで、就職活動において、マインドやビジョンがマッチしているかが重要であることや、チームワークで働く日本で社員が実際にどのように働いているのかを知り、チームワークで働くことの大事さに気づいてもらえたらと思っています。

【JISR 生について】

皆さんとても賢く、地頭がいいと感じました。なので、自分に自信を持って、あきらめないで欲しいです。自身の強みとスマートさを相手に伝えられるようになってほしいので、伴走支援を行うサポートチームをうまく活用して欲しいです。また、社交性の違いが就職活動の結果に繋がると思うので、社交性を身に着ける訓練をして、就職活動に活かして行って欲しいです。

以前は研修員の伴走支援チームに携わり、現在は、イベント企画チームの担当となられた、サポートチームの西山みなみ氏(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)

【伴走支援担当から企画担当へ】

伴走支援における利点は、研修員に対しマンツーマンの支援ができることですが、同時に、その支援は限定的であるとも感じていました。特に、修士論文の提出で多忙になる修了間際になってから就職先が決まっていないことへの危機感を持つのでは遅く、内定獲得のためには、研修員への危機意識の醸成を早いうちに行う必要があると考えました。そこで、サポートチームで話し合い、早い段階で研修員同士を鼓舞するために、対個人だけではなく、対集団としてイベントを企画することになりました。その際、私は個々人に携わるだけでなく、より全体に裨益するようなイベントの企画に面白さを感じ、伴走支援チームを離れ企画の方で携わることにしました。

【今回の企画について】

今回の企画は、社会性を身に着けること、日本の就活に慣れてもらい就活スキルを高めることという2つの軸に沿って、実施しました。今後も、この2つの軸に沿って、活動を計画していくことを予定しています。
今回は、サポートチームとして初めての企画イベントであり、また、対面での実施ということで、人と人とのコミュニケーションに力を入れて企画をしました。実際にワークショップでは、研修員とコミュニケーションを多くとる中で、強みや改善が必要な点がより明らかになったと考えています。
例えば、ある研修員は、ワークショップ中、しっかりと人の意見を聞き、それをまとめる力を持っていました。その一方、それが自分の強みであることに気づいていなかったので、それをフィードバック時に伝えられたのはよかったです。
また、改善点としては日本語力が挙げられます。研修員毎にかなり差があると感じました。きれいな文章として話せなくても、シンプルな単語を使って、どうすれば伝わるかを考えて文章を構成し積極的に話そうとする研修員がいる一方で、やはり日本語で話す量に比べ、英語で話す量が圧倒的に多い研修員もいました。語学力はすぐに身につくものではありませんが、今の自身の日本語力でも、伝え方の工夫次第で頑張れば伝わるということを引き続き周りからも伝えていけば、どんどんチャレンジして、できるようになっていくと思います。就活では、しっかり日本語で自分の意見を伝えることが必須能力になっていくので、今回うまく日本語で伝えられなかった研修員も、頑張っていただきたいです。

【JISR 生について】

第1バッチ、第2バッチ生への伴走支援チームをしていた時にまず感じたのは、JISR生は非常に個の特性やスキルは高いということです。一方で、日本語や日本特有の就職活動スタイルが障壁となり、そのポテンシャルスキルや意欲をうまく伝えきれていない点が非常に大きな課題です。日本語になった途端に、思うように表現できず顔もこわばってしまい、英語であればうまく伝えられるのに、日本語だと伝えられないという、言語による壁が高いことにもどかしさを感じていました。私がサポートしていた研修員には、間違ってもいいので、日本語で積極的な姿勢で伝えていこう、とアドバイスをして練習を重ねた結果、支援したJISR生が、就職内定を得た時はとても嬉しかったです。
今回お会いした、第4バッチ、第5バッチの研修員の第一印象は、ご自身の興味があることに対してはとても意欲的であると感じました。一方で、日本では当然と捉えられている立ち振る舞いは、文化の違いもあり、まだ課題がある方もいるため、今後企画するイベントなどで彼らの気づきや改善に繋げていきたいと考えています。
異なる文化、異なる言語を用いての就職活動は、とても大変だと思いますが、研修員の皆さんは日本で活躍できるポテンシャルを持っている方々だと信じています。ご自身のスキルや経験に自信を持って、難しい状況にもめげずに前に進んでいただきたいですし、数ある国の中で日本を選んでくださった皆さんを、サポートチームも一丸となり支援を続けていきたいと思います。

<サポートチームの關山和弘氏(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)とJISR第4バッチ研修員Wahbi氏>

<サポートチームの關山和弘氏(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)とJISR第4バッチ研修員Wahbi氏>