ウクライナの人々の健康を守りつつ復興に貢献:瓦礫処理におけるアスベスト管理について研修を実施
2025.03.10
2025年2月27日、JICAはUNDPと連携し、戦争で発生した瓦礫の処理に際し注意すべきアスベストの取扱いについて、自治体を対象とした合同研修を首都キーウで実施しました。
研修参加者とJICA及びUNDP関係者 写真提供:Kseniia Nevenchenko / UNDP in Ukraine
ロシアの侵略により、ウクライナでは住宅の約13%が半壊または全壊しました(*1)。ウクライナでは、住宅の屋根材などにアスベストが多く用いられ、破壊された住宅等の瓦礫を処理する際にアスベストが飛散する恐れがあります。
アスベストは、人間が吸い込むと肺繊維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性があることが知られています(*2)。そのため、瓦礫処理に伴い、作業員や周辺住民がアスベストを吸い込まないよう、注意することが重要です。
研修には各地の自治体から38名が対面・オンラインで参加し、JICAとUNDPの専門家から、アスベストが含まれる瓦礫の判別やアスベストを飛散させない取扱い方法、個人防護具(Personal Protective Equipment, PPE)を身に着けることなどを学びました。また、瓦礫に含まれる不発弾に対する注意喚起も合わせて行われました。
安全な瓦礫処理について講義 写真提供:Kseniia Nevenchenko / UNDP in Ukraine
真剣に耳を傾ける参加者 写真提供:Kseniia Nevenchenko / UNDP in Ukraine
JICAが瓦礫処理パイロットプロジェクトを支援しているキーウ州政府からは、「瓦礫処理用の機材の供与だけでなく、このような研修や普及啓発を通じて私たちに技術を伝えてくれることに感謝しています」との声が聞かれました。
瓦礫処理は迅速な復興を遂げる上で、取り組まなければならない課題です。しかし、アスベストを含む有害物質に注意せずに瓦礫処理を行うと、将来の健康被害を招きかねません。ウクライナ政府からは迅速な復興は重要だが、同時に人々の健康と安全を犠牲にしないとの強い決意が示されています。JICAはこれからも、他の国際開発パートナーとも協力しながら、ウクライナの安全で環境に配慮した復興に貢献していきます。
意見交換する参加者 写真提供:Kseniia Nevenchenko / UNDP in Ukraine
キーウ州の瓦礫処理機材と個人防護具を身に着けた作業員 写真提供:Oleksii Ushakov / UNDP in Ukraine
*1 Ukraine, Fourth Rapid Damage and Needs Assessment (RDNA4) Ukraine - Fourth Rapid Damage and Needs Assessment (RDNA4) : February 2022 - December 2024
*2 アスベスト(石綿)に関するQ&A |厚生労働省
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