ウクライナで子供を含む市民の生活を支える機材の供与式の開催
2025.08.08
キーウ市障害児リハビリセンターでの供与式
JICAは、2025年7月22日及び7月24日に、ウクライナ国キーウ市で、JICAの技術協力『緊急復旧・復興プロジェクト』において供与した機材の引渡し式を3か所で実施いたしました。
式典には、マリナ・デニシュウク地方・国土発展省次官、マリナ・ホンダ キーウ副市長、及び実施機関等事業関係者、日本側からは中込駐ウクライナ日本国大使、川村JICA理事、及び田中JICAウクライナ事務所長代行が参加いたしました。
現在、ウクライナ国内では、今なお続くロシアの侵略による様々な被害からの復旧・復興に向けた懸命の努力が続けられています。今回は、以下の3か所の施設において機材の供与式を実施しました。
日本製のリハビリ用ロボットスーツを含むリハビリ機材
ロシアによる全面侵侵略の開始後、ウクライナ国内では国外のみならず多くの国内避難民(IDPs)が発生し、主に中西部への大規模な人口移動が生じています。IDPsの最大の受け入れ先の一つであるキーウ市では、人口の流入に伴い障害児を含む障害者や高齢者の数も増加しており、こうした社会的に脆弱な人々への作業療法・心理療法ニーズも拡大しています。一方で、こうした人々を受け入れるリハビリセンターでは必要な機材等が不足し、適切な療法対応が出来ていない状況が生じています。本事業では、キーウ市が運営する3歳から18歳の障害児のケアを対象にした“キーウ市障害児リハビリセンター”を含む11カ所の施設に対し、リハビリロボットスーツや移動式シャワー車いす等のリハビリ用機材を提供することで、障害を持つ人々の身体機能の回復や生活の質の向上に貢献することを目的としています。
マリナ・ホンダ キーウ副市長は、『今回提供された機器の中には、子供も大人も使用出来る機器などもあり、非常にユニークであり、このような機器はウクライナでは初めて導入された』と述べ、JICAの支援に感謝を示しました。
鉄道はウクライナにおいて、旅客及び貨物の双方にとって重要な交通手段であり、ロシアによる全面侵略後も引き続き重要な役割を果たしています。ウクライナの鉄道のレール及び線路は、老朽化に加えて軍事侵略による破壊も生じており、維持管理能力の改善が急務となっています。JICAはこれまで、ウクライナ国鉄に対して無償資金協力を通じたレールの供与等を行ってきましたが、本事業では、ウクライナ国鉄の区間と顧客企業間の貨物輸送を行う公社として鉄道インフラの維持管理を行うMPPZTに対し、線路の維持管理の強化を支援する機材を提供することで、鉄道セクターの円滑な運営、及び鉄道運行の安全性の向上に貢献することを目的としています。
ナウメンコ・ボロディミールMPPZT最高経営責任者は、『JICAから供与された機器は現場作業の効率化に非常に役に立っている』旨述べ、支援への感謝を示しました。
ウクライナでは冬季の寒さが厳しいため、暖房用の熱供給システムは非常に重要な役割を果たしています。旧ソ連時代に構築されたセントラルヒーティングシステムはエネルギー効率に課題があることから、エネルギー資源のより効率的・効果的な利用を目的として、各地でヒートポンプの導入も進められています。本事業では、教育機関に対して日本式ヒートポンプを導入し、子供たちの教育環境の改善を図ると共に、ウクライナ国における省エネルギー推進に貢献することを目的としています。
マリナ・デニシュウク地方・国土発展省次官は『ヒートポンプシステムは先進的な省エネ方法であり、快適な学習環境子供達に提供することが出来る』と述べました。
JICAは、ロシアによる全面侵略後の厳しい状況で生活を続けるウクライナの人々の生活を支えるため、ウクライナ全土において、有償資金協力、技術協力、及び無償資金協力等の様々な支援チャネルを通じて、支援を行っております。JICAは今後もウクライナへの協力を続けていきます。
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