2024年度草の根技術協力事業(パートナー型)に「ウズベキスタンにおける甘草の持続可能な栽培と加工技術導入による地域産業振興プロジェクト」を採択
2025.07.08
2025.07.08
独立行政法人国際協力機構(JICA)は、「2024年度草の根技術協力事業」として、株式会社薬ゼミ情報教育センター(東京都千代田区)が提案した「ウズベキスタン国 甘草の栽培・加工技術導入を通じた地域産業振興プロジェクト(パートナー型)」を採択しました。
本事業は、ウズベキスタン南部カシュカダリア州ヤッカバグ地区を対象に、同対象地域に自生する薬用植物「甘草(カンゾウ)」の持続的な栽培技術および加工技術を導入し、地域住民の生計向上と地域産業の基盤強化を図ることを目的としています。
本事業には、株式会社薬ゼミ情報教育センター、北里大学薬学部生薬学教室および北里大学薬用植物園、株式会社 片平エンジニアリング・インターナショナル、日本開発サービス株式会社が参画し、現地ウズベキスタン政府の環境省林野庁附属薬用植物栽培センターをカウンターパートとして、国際的産官学連携のもと進められます。
多様な専門家で構成されるチームメンバーがソーシャルビジネスで社会課題の解決に挑戦する提案として、草の根技術協力事業に新たな視点をもたらすことを期待しています。
対象地域であるカシュカダリア州ヤッカバグ地区は、降水量が少ない乾燥地域であり、綿花・穀物・野菜といった水を多く必要とする従来の主要作物が慢性的な水不足や塩害の影響を強く受けています。近年では劣化農地の拡大が懸念されており、これらの作物による安定した収入を得ることが難しくなってきています。
同地域では、一般的な農作物よりも少ない水で育ち、耐塩性のある甘草が古くから自生していますが、その利用価値や栽培・加工の具体的な技術が現地住民に知られていません。
「甘草」は噛むと甘みのある草で甘味料としてだけでなく、東洋・西洋で紀元前より薬としても用いられていました。
現在、その加工品は医薬品・漢方薬の原料、食品・飲料の甘味料や調味料、化粧水やスキンケア用品、歯磨き粉など多岐に利用されているため、本事業での技術導入を通じて対象地区の貧困問題を解消する一助となる可能性が期待できます。
こういった背景から本事業では、甘草の優良株の選定、育苗・定植から収穫・品質評価・加工・商品化に至るまでの技術導入を段階的に実施し、地域住民の生計向上と地域産業の基盤強化を図ります。
本事業では、3年間かけて、モデル圃場での試験栽培、加工および品質評価技術の導入を進めます。
本事業で得られる知見や成果は、将来的に日本国内における生薬原料の安定供給や調達先の多様化にも寄与する可能性があり、近年課題とされる中国など限定された国への過度な依存構造の緩和にもつながることが期待されます。
JICAは、今後も草の根レベルの国際協力を通じて、地域住民の課題解決と持続可能な社会づくりを支援してまいります。
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