隊員寄稿(2023年度9次隊)

2023.12.20

「新型コロナウイルスが世界的に拡大している状況にあります。3月20日(金)を最後に当面の間、ザンビア発日本着の国際線がなくなるとのことですので、各自速やかに荷物を整理し、3月18日(水)か19日(木)中にルサカに上京してください。」

ザンビア事務所から送られてきたこのメールをもって、活動の中止、日本への退避を余儀なくされた。ともに稲作栽培を行ってきた農家、カウンターパートと別れの挨拶もままならない状態での帰国となった。今年で53年となるザンビアのJICA海外協力隊の歴史にその後、再度、自身がザンビアに戻るまで約3年の空白の時間が訪れることになろうとは、当時は想像も及ばなかった。

しかし、コロナ禍で影響を受けたJICA海外協力隊のための特別登録期間を経て3年ぶりに戻ってきたザンビアでは、隊員がこれまで培って来た「異文化社会における相互理解」が根付いていることを実感した。

先日、タクシーに乗ったときのこと。そのドライバーは10年以上前、南部州のとある学校で、JICA海外協力隊の先生から指導を受けたという。彼は「日本語の挨拶や礼儀作法だけでなく、身の回りの学習道具の整理整頓を学び、それによって文房具の紛失を防ぎ、長持ちすることを教わった。それを今、自分の子どもにも伝えている。」と話してくれた。隊員の活動がザンビアの人々の記憶にしっかりと残り、想いが伝わっていることをできた瞬間であった。

また、ザンビアでは、しばしば約束が守られなかったり計画が進まないことがある。私は、活動を通じて稲作の普及に取り組んでいるが、雨季が到来し、小雨で指導にうってつけの状況であるにも関わらず農家から巡回指導のキャンセルの申し出があった。後日、農家に理由を尋ねると「雨が降ると道が流されて子どもの送迎ができないからキャンセルした。」とのことであった。個人の問題ではなく、ザンビアの社会課題が計画を遅らせた原因である事が浮き彫りになった。

それ以来、一見理解しがたい事にも必ず何らかの理由や原因があるに違いないと考える様になった。物事が計画通りに進まない時に、感情を発露するのではく、その状況を受け入れ、別の方法を探したり、計画を調整したりする技術と心構えを持つことで、現地の人はボランティア活動に対する信頼や安心感を醸成し、両国の相互理解の深化と共生をもたらすと今は確信している。

ザンビアでの生活も残すところあと少し。先日出会ったタクシードライバーのように、関わった人々の将来に相互理解の種を残すことができるよう過ごしていきたい。

初めてネリカ米の種籾を手にする栽培農家の皆さんと

初めてネリカ米の種籾を手にする栽培農家の皆さんと

ネリカ米栽培に関するワークショップ後、対象農家に種籾1㎏を配布

ネリカ米栽培に関するワークショップ後、対象農家に種籾1㎏を配布

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