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日本の「管継手(くだつぎて)」がケニアの水資源を守る - 株式会社川西水道機器(香川県)の途上国の漏水問題への挑戦

2022年4月20日

浄水技術が高く、水道や下水道が全国的に広く整備されていることから「水道先進国」といわれる日本。
その水道など、生活になくてはならない「管」を繋ぎ、水や暮らしを繋ぐのが「管継手」です。

管継手分野に特化・一貫したものづくり体制へのこだわり

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劣化し水漏れしている水道管(ケニア)

株式会社川西水道機器(以下、川西水道機器社)は、1952年の創業来、香川県に本社・生産工場を置く管継手専門メーカーとして、給水管路、配水管路をはじめ、農業用水や災害復旧管路などで使われる様々な管継手製品を世の中に送り出してきました。

川西水道機器社の強みは、自社内で製品開発・設計から製造・販売に至るまでトータルで行う一貫したものづくり体制。このこだわりによって生まれた社内の連携(製造工程間、開発と製造、営業と開発)や顧客の声をフィードバックすることで、技術レベル・品質レベル・サービスレベルの向上を図り、顧客ニーズを満たす製品づくりを実現してきました。なかでも水道管継手を含む「硬質塩化ビニル鋳鉄異形管・継手」は国内市場において近年はトップシェア(約70%)を誇っており、産学官民連携を通じて地元経済・地域活性化に貢献するなど、業界を牽引し続けています。

水道用管継手は、無駄なく水を活用する上で水道インフラの重要な部材。その「貴重な水を一滴も漏らさず送り届ける技術」を使命として、現在同社が取り組んでいるのが、海外市場の新たな開拓、そして水道管継手を通じたケニア国の「水・衛生」「漏水問題」への貢献です。

ケニアが抱える課題:安全な水へのアクセス率60%(2017)、無収水率47%(2019/2020)

ケニア国は国土の約85%が乾燥地もしくは半乾燥地であることから、慢性的な水不足かつ安全な水へのアクセス率が低い現状を踏まえ、「水の安定供給」が国家開発計画(Vision 2030)の目標達成の必要条件に含まれています。今後も都市化や人口増加に伴い水需要が増加することが見込まれていますが、給水人口が増えると新たな水源開発に莫大な費用が必要となるため、同国では都市環境改善の観点から都市上下水道サービスの強化、不十分な水衛生サービスの改善が喫緊の課題となっています。

加えて同国は、淡水資源における取水可能な水量が限られているうえに、せっかく取水しても、その多くが無収水(配水管からの漏水や違法な盗水など)となってしまうという深刻な課題を抱えています。無収水対策は水道経営の独立採算を推進するためのケニアでの全国的な共通課題となっており、JICAは、同国の水道事業関係機関の無収水対策能力の強化や、無収水削減の技術を全国に普及する体制の整備を、技術協力などを通じて支援してきました。

日本製の高品質・施工性の高い管継手を使ったケニアの水課題への貢献

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提案製品である管継手の紹介(ケニア)

そして、この深刻なケニアの無収水の主原因である漏水対策のために立ち上がったのが、川西水道機器社です。国内需要の先細りへの対応として新たな市場開拓を模索していた同社は、海外進出の展示会でアフリカの上水道技術者から漏水問題をヒアリングしたことをきっかけに、2018年からアフリカ進出計画の策定に向けて自社調査を開始しました。そして、ビジネスの展開先として選定したのがケニア。2019年度のJICA中小企業・SDGs支援事業に応募し、同国への提案が採択されたことで、同国への管継手の普及に係る本格的な調査を開始しました。

基礎調査(2019年12月~2020年8月)では、現地の水道事業における提案製品のニーズ調査、現地の配管材市場のトレンドや管継手の市場規模・導入の可能性に係る調査を実施しました。基礎調査終了後も現地関係者とコンタクトを取り、社内での分析・検討を重ね、自社調査を継続。その後、2021年度に応募・採択された案件化調査(2021年6月~2022年9月※予定)では、ビジネスモデル案のさらなるブラッシュアップを行なっています。

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現地セミナーにて(ケニア)

両調査実施中は、新型コロナ感染症の世界的な感染拡大を受けて、現地調査を当初計画より縮小せざるを得ない状況となってしまいましたが、調査計画を一部変更して遠隔での調査に切り替えるなど、事業スピードを落とさないよう工夫。その結果、現地が直面する配管における課題をヒアリングでき、提案製品の有する、高い施工性、豊富なラインナップ、高い安全性といった優位性を現地関係者にPRしつつ、現地に合った仕様への開発に向けた検討を開始することができました。また、同社の川西章弘代表取締役社長は、「ケニアのような開発途上国では、インフラを作っても、メンテナンスの技術や部材がなければ継続して活用されず放置される傾向にあること、と同時にそこに大きなビジネスチャンスがあるということも確認できた」と語っています。

案件化調査では、日本とケニアをリアルタイムに繋いで、現地の水道事業関係者向けにセミナーが開催されました。水不足に悩む現地関係者は、香川県の文化や干ばつとの奮闘の歴史を通じて、その中で培われてきた川西水道機器社が有する優れた製品ラインナップや技術力に大きな関心を寄せました。無収水の物理的要因にあたる管継手に起因する問題において、提案製品を通じた貢献可能性が十分にあることが明らかになり、現地関係者との更なる信頼が醸成される機会にもなりました。

ケニアの水課題解決に貢献するビジネスの事業化に向けて

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地方の水道事業体と(ケニア)

現地関係者からの提案製品の評価と現地市場への投入の要望を受けた川西水道機器社は、ケニア市場で勝ち抜くため、水道用管継手の導入機会となりうる水道管補修及び新設、この両方への導入を目指す戦略的なビジネスモデルを策定。実際に現地の水道事業体が管轄する地域において同モデルを検証することを目的として、2021年度第二回普及・実証・ビジネス化事業に応募。ビジネスモデルの具体性等が高く評価されて採択されました。現在は、実施に向けて準備を進めています。

川西章弘代表取締役社長は次のように語っています。「今回のJICAの調査で、開発途上国にただ支援するだけでなく、ビジネスとして継続することが両者にとっても良いということがわかりました。また地方の中小企業が海外展開を考える際、JICAのような国際協力機関の力を借りることは、時間と投資コストの両面で効果があることもわかりました。というのも、インフラで使われる製品はまず実績が求められますが、今回JICAの民間連携事業を活用してパイロットプロジェクトを立ち上げることができたためです。今後はそれをショーケースにして、さらにグローバルへの展開を検討しています。」

また、JICA制度を利用し海外展開を目指す際のアドバイスとして、①ビジネスを通じた途上国の社会課題の解決、②途上国のインフラ事業におけるJICAの実績と信頼に基づく影響力の活用、③国内事業と海外事業の両輪、の3点が重要であるとも挙げられています。川西水道機器社は、これまで長年国内で培ってきた自らの強みを活かし、途上国の課題解決への貢献と同時に、自社の海外ビジネス展開を実現し、地元香川の活性化にも貢献していくという好循環を創り出そうとしています。

近年は気候変動の影響により過去にない干ばつや豪雨がケニア国内でも発生しており、水と衛生の整備が求められています。川西水道機器社の提案する管継手の普及により安定した給水が可能となれば、未給水人口が減り、断水の少ない持続的な水道サービスが実現され、都市上下水道サービスの改善や無収水問題への貢献が期待されます。また感染症予防のための手洗い等に必要な安全な水を幅広く持続的に供給することもでき、無収水対策以外の課題への波及効果にも繋がることが考えられます。

ケニアの水資源を守る川西水道機器社の挑戦を、JICAは引き続き応援し、伴走していきます。

(JICA民間連携事業部 担当 樋口晴子)

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