国際緊急援助隊 派遣の裏側に密着!

昨年4月25日、マグニチュード7.8の巨大地震がネパールを襲ったのは記憶に新しい。
その発生から3日後には、日本の救助チームが現地に到着し、活動を開始した。
迅速な対応の裏側では、どのような準備や調整がなされていたのだろうか。召集から派遣までを追った。

ネパール地震 JICA国際緊急援助隊事務局の動き

(全て日本時間)

2015年4月25日(土)

15:11 【画像】ネパールの首都カトマンズ北西約80キロで地震発生
20:34
メールでの一斉連絡を受けて事務局のスタッフがJICA本部に集合
旅行会社を通じて直近のフライトの空席状況を調査→ゴールデンウィーク前でどの便も満席だと判明
21:58 ネパール政府から救助チームの派遣要請を受ける
22:15 【画像】
第1回局内ブリーフィング
ブリーフィングは合計7回行い、その時々での状況を全員で確認した
23:50
外務大臣から救助チームの派遣命令が下る
旅行会社にチャーター機の手配を依頼→フライトが決定

4月26日(日)

3:52 救助チームのうち、救出時の医療対応とチームの健康管理を担当する「医療班」、建物の安全性を判断する「構造評価専門家」の隊員の募集を開始。登録者にメールやFAXで呼び掛ける
8:00 隊員募集を締め切る。応募者の中から医療班5人、構造評価専門家2人の隊員が決定
9:30 事務局の第一陣が成田空港に向けて出発
10:40 【画像】事務局の第一陣が空港に到着
救助チーム隊員の受付開始
13:05 【画像】成田空港で結団式を開催
17:52 (地震発生から約27時間)
70人の隊員を乗せ、チャーター機が成田空港を離陸
24:42 乗り継ぎ地のタイのバンコクに到着。ホテルで一泊

4月27日(月)

12:50 【画像】
バンコクからカトマンズに向けて出発
出発前にバンコクの空港で救助犬のケアを実施
17:35 救助チームから、カトマンズの空港が混雑しているため、いったんインドのコルカタに向かうとの連絡が入る
23:53 救助チームから、コルカタのホテルが取れないため、タイのバンコクに戻りもう一泊するとの連絡が入る

4月28日(火)

12:00 【画像】
バンコクからカトマンズに向けて再び出発
離陸前の空港では現地メディアが殺到した
15:00 (地震発生から約72時間)
救助チームがカトマンズに到着

国際緊急援助隊30年の歩み

1979年 日本政府がカンボジア難民支援のために、医療関係者らによる「Japan Medical Team」を初めて海外に派遣。
1982年 平常時から医療関係者を登録し、海外の災害に迅速に派遣するシステム「国際救急医療チーム(JMTDR)」が設立される。
1984年 エチオピア干ばつにJMTDRが初めて派遣される。
1985年 メキシコ地震、コロンビア火山噴火にJMTDRを派遣。医療関係者だけでなく、捜索救助隊や災害対策専門家の必要性に対する認識が高まる。
1987年 「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」が施行される。被災地のニーズに応じて、救助チーム、医療チーム、専門家チームを組み合わせた「国際緊急援助隊(JDR)」を派遣する総合的な緊急援助体制が確立。
1992年 法律改正により、紛争に関係する人道支援は内閣府PKO事務局が、自然・人為的災害はJDRが担当することに(大規模災害の際には、必要に応じて自衛隊部隊をJDRチームとして派遣する)。
国際緊急援助隊(JDR)事務局をJICAに設置。
1995年 阪神・淡路大震災で、医療チーム登録者の派遣をJDR事務局がサポート。
2004年 スマトラ島沖地震・インド洋津波を受けて、スリランカ、モルディブ、インドネシア、タイの4カ国にJDRの合計14チームを派遣。一つの災害に対する派遣規模としては、過去最大。
2005年 パキスタン地震で、救助チーム、医療チーム、自衛隊部隊が、同一地域で相互に協力し救援活動を展開。NPOとも連携し、オールジャパン体制で活動を実施。
2008年 中国西部大地震で、初めてチャーター機を活用。
2010年 捜索救助の国際的ネットワークである「国際捜索・救助諮問グループ(INSARAG)」から、救助チームが最高難度である「ヘビー」チームの認定を受ける。
2011年 東日本大震災を受けて、24の国と地域から救助チームや専門家が救援に駆け付ける。JICAは、その受け入れや調整を行う「国連災害評価調整チーム」の業務に協力。
2015年 西アフリカで感染が拡大したエボラ出血熱への対応を踏まえ、感染症対策チームを立ち上げる。
2016年 医療チームが、外来診療に加え、外科的手術や入院・透析機能などの能力を有するチームとして、世界保健機関(WHO)から「緊急医療チーム(EMT)」の認証を受ける。

最近の緊急援助物資供与の実績

2015年 4月 ミクロネシア 台風
4月 ネパール 地震
6月 ガーナ 洪水
8月 ミャンマー 洪水
9月 ドミニカ 洪水
9月 ミャンマー 洪水
10月 インドネシア 火災・煙害
2016年 2月 台湾 地震
2月 フィジー サイクロン
3月 マーシャル 干ばつ
4月 パラオ 干ばつ
4月 エクアドル 地震
5月 スリランカ 豪雨
8月 マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 洪水
8月 ミャンマー 洪水
9月 タンザニア 地震
10月 ハイチ ハリケーン
10月 キューバ ハリケーン

※2015年度以降