2022年10月31日
2022年10月JICAチェアが実施されている中南米諸国6カ国の大学教授8名が来日し、南米各国の日本研究者同士や日本の研究者とのつながりづくりを目的とした短期プログラムがスタートしました。
JICAチェアとは、知日派、親日派の育成を目的として日本から現地に講師を派遣し、日本の開発経験、発展の歴史を学ぶ機会を提供する「日本研究講座設立支援事業」で、2018年より実施しています。
今回は中南米での開催国22ヵ国のうち、参加したのはコスタリカ、グアテマラ、ボリビア、アルゼンチン、チリ、パラグアイの6か国です。初の試みとなる今回のプログラムでは2週間にわたり国内の日本研究を実施する大学や開発研究機関を訪問し、聞き取り調査や意見交換を行いました。
10月11日に開催された報告会の冒頭、司会者より「参加者の皆さんは担当している大学の講義を休講にはできないため夜中1時に現地大学でのオンライン講義をしながら、日本での日程をこなしていただいた」ことへの感謝を伝えました。8人それぞれのJICAチェアの取り組みについての報告や今後にむけての提案を発表しました。
ボリビアから参加したケンジロウ・サカグチ教授は「日本の経営学はボリビアの国の発展に参考になるテーマです。講義には50社以上が参加し、『日本のリーダーシップや品質管理、カイゼン(改善)』について学びました。有料開催のため継続して運営できる仕組みを構築しています。講義終了後、生産性や競争率を更に向上したい参加企業については有料コンサルティングを行っています」と報告しました。
アルゼンチンから参加したセシリア・オナハ氏は「研究機関を訪問することでよりよい情報を得ることができました。ラテンアメリカの先生と接点を持つことができたことは非常に良かったです。今回の参加によって、様々な研究者との交流も生まれ、来年へのプログラム構成づくりにむけて良いアイディアが生まれました」と成果を述べていました。
最終発表者となったパラグアイのネリー・インスフラン氏は「JICAチェアはあまり知られていないため、難破してしまう可能性もあります。そのため大学のホームページに奨学金情報等のコンテンツを載せて研究者が集まる場を作る必要があります。またJICAチェアのアクションプランを大学と合同で検討し、国レベルで進めていきたいと考えています」と話し、「アカデミックな文化や学術が、友情や友好につながっていくと身に染みて感じる時間でした。心に残る今回の滞在は国に帰った時、次のプログラムの燃料にかわっていくと感じています」と研修報告を締めくくっていました。
報告会後のネリー氏へのインタビューでは「日本に来たのは初めて。近代化している国なので冷たい感じがするのかな?と来る前は思っていましたが、来てみると、すごく温かい国でした。地理的にはすごく離れているけれど、移民の歴史も含めて昔からの近い関係を生かしつつ、大学での調査研究、日系コミュニティーを通じて大学の外でも何か展開していきたい」と語りました。
最後に小原中南米部長より「中国や韓国をテーマとしたアジア研究が進んでいるが、JICAとしてアカデミックと開発の経験をどう融合させていくかを皆さんと一緒に考えていきたい。また、JICAチェアを実施している20か国以上の国々はそれぞれ違うスタイルで開催しているが、それらを連携し中南米域内でのインパクトを与えていきたい」と述べ、報告会は終了となりました。