研修「農村開発のテリトリー管理-テリトリーレベルから見たマルチセクターの調整」が行われました

2023年3月14日

中米8カ国の地域統合農業開発機関である「中米農牧大臣会合技術事務局(SECAC)」が「農村開発のテリトリー管理-テリトリーレベルから見たマルチセクターの調整」研修を実施しました。

SECACは、テリトリアルアプローチに基づいた開発を推し進めていくために、「中米テリトリアル農村開発戦略(ECADERT)」を中米各国の政府の制度に反映させようとしています。今回の研修もこの目的を達成するための活動の一環として行われました。

この一方で、ECADERTを政府の制度に反映させることができても、住民グループや村の自治組織の活動が活性化されたり、このような住民の活動と行政の活動が関連付けて行われたりするようにならなければ、テリトリアルアプローチに基づいた開発は実現しません。

そこでSECACが目をつけたのが、JICAの「生活改善アプローチ」「地域ブランディング」「小規模農家向け市場志向型農業振興」という3つの開発アプローチです。

今回の研修では、JICAはこれら3つのアプローチのバーチャル講義を行う講師を派遣するとともに、エルサルバドルで行われている地域ブランディングの実践現場に研修生を案内しました(訪問にあたって必要となる資金の一部や調整作業も支援しました)。

研修に参加した中米各国の農業開発機関の専門家たちはもちろん、研修を実施したロヨラ大学(アンダルシア)の開発研究所の講師たちも、バーチャル講義で説明された理論と実践経験や、エルサルバドルでの実践を見て、JICAの3つのアプローチの有効性の高さに感心していました。これらについてさらに深く学びたいという声も多く聞かれました。

中米全体の農業開発実践方法の一つとして、日本の開発アプローチが採用されていく可能性がさらに高まったようです。

  • 今回の研修はアンダルシア国際開発協力庁の財政支援を受けて実施されました。
  • 研修実施期間は2022年10月から2023年3月までです。
  • 中米農牧大臣会合(CAC)加盟国はパナマ、コスタリカ、ニカラグア、ホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラ、ベリーズ、ドミニカ共和国の8カ国です。
  • 「テリトリー」というのは、経済や文化を共有する地域のことです。通常は複数の自治体にまたがりますし、場合によっては国境をまたぐこともあります。このようなテリトリーを単位として開発を実現しようとするのが「テリトリアルアプローチ」です。
  • 生活改善アプローチ:住民が、自分達が持っているものを使って自らの生活を改善するというアプローチです。家族で行う活動だけではなく、住民グループや村の自治組織による活動、さらには行政とこれらの組織の協働が活性化されます。
  • 地域ブランディング:個々別々の「商品」や「観光スポット」ではなく、住民自らが地域全体の魅力を掘り起こして「地域ブランド」を確立しようとするアプローチです。自治体がこのような活動の核となることで、自治体の地域振興と住民の活動が協調して行われるようになります。
  • 小規模農家向け市場志向型農業振興:農家のやる気を刺激することと、需要に対応した農産物の生産や販売を活性化することを同時並行で進めるアプローチです。
  • 今回の研修では、環境に負荷をかけない農業生産方式であるカトリック救援事業会(CRS)が普及を試みている「水と土を大切にする農法(ASA)」も紹介されました。

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エルサルバドルで行われた対面形式の講義風景(ECADERTに関する講義、2月27日撮影)

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エルサルバドルで行われた視察(サン・フアン・オピコ市で市役所が地域ブランディング実践の一環として行っている直売市を視察、3月1日撮影)

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エルサルバドルで行われた視察(サン・フアン・オピコ市で市役所が地域ブランディング実践の一環として行っている直売市を視察、3月1日撮影)

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エルサルバドルで行われた視察(サン・フアン・オピコ市で地域ブランディングの実践経験を聞き取り、3月1日撮影)