第二報:美術×英語×SDGs-掛け合わせたらどんな学びが創造できる?

北海道釧路北陽高等学校 竹本万亀先生・工藤よしの先生

教師国内研修参加にいたるまでの歩み

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作品発表する生徒の様子

北海道釧路北陽高等学校に勤務して竹本は2年目、工藤は1年目。
私たちは前任校が同じ高等学校で「同僚」を超えた「戦友」でした。

「子どもたちに幸せであってほしい、そして幸せな未来を協働して作っていける子どもたちであってほしい」というのが、私たちの教育観の原点です。また、それぞれに「一教員」として何ができるかを考え、微力ながら実践を重ねてきました。

応募の動機はSDGsが実践の一つの幹になると考えているものの、私たち自身がSDGsやSDGsを題材にした授業づくりについての知識が少なすぎると感じていたからです。また、業務に追われる毎日を言い訳にせずに、この研修をきっかけとして私たちの教育観に立ち戻り、教員自ら協働して「子どものために何ができるか」を考え実践してみたいと想い、2人で応募することにしました。

教師国内研修を通して

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オンラインで作品を発表する生徒の様子

研修を通して、SDGsについての知識を得たり、東川町、下川町、浦幌町の町おこし事業について知ったりするだけでなく、授業でSDGsをいかに生徒に『自分ごと』として考えさせるかの「仕掛け」のヒントをたくさんいただくことができました。コロナ渦で海外研修もフィールドワーク研修も実施できませんでしたが、今回の研修を通して、「身近な地域には、北海道には、日本には、地球には、大事にしたいものがたくさんあって、素敵な人がたくさんいること」を十分に感じることができました。

またSDGsを幹にし、「表現する」という教科の共通項を生かして、美術と英語で教科横断の授業実践をすることができました。

「世界とつながる私たちの癒やし空間」というテーマで、無機質な学校に自分が癒やされる空間をデザインさせました。その際に『自分だけが癒やされるだけでなく世界の誰かの役に立てる空間だとさらに良いね』という観点を入れて制作をすすめました。

導入では、SDGs達成に本気で取り組んでいる地域のカフェオーナーの話をオンラインで繋いで聴かせたり、マラウイから来ているJICA帯広の研修員の方に母国の現状や日本の高校生へのメッセージを聞いた動画を見せたりしました。その後生徒は3~6人グループで、「世界とつながる私たちの癒やし空間」のイメージを共有しながら、空間デザインの立体物、看板やコースター、空間に置くもの、メニューを制作しました。どれも子どもたちの想いが乗った作品となりました。最後に、アートで表現したものを今度は言語で表現してみようと日本語と英語でプレゼンテーションさせました。校長先生やオンラインでつながったカフェオーナー、道東SDGsマガジンの編集者の方、JICA帯広の研修員の方、本校ALTに審査員として参加していただき、「自分たちが考えて表現したこと」を大人に認めてもらう、アドバイスをもらう機会を作ることができました。実践を振り返ると課題や改善点も多く感じていますが、学校と地域、教員同士がパートナーシップを高めることで、子どもの深い学びを創造する可能性を感じました。

今後のビジョン

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釧路や世界を意識して制作した作品

本校の教育目標の1つに「国内外に目を向け考え行動できる資質を育てる」があります。しかしながら本校は部活動等に熱心に取り組む生徒が多く、授業外で「国内外に目を向ける」機会も、「考え行動できる」機会もほとんどないのが現状です。SDGsを題材にした授業づくりは本校の教育目標を達成するためにも大きな役割を果たすと考えています。また、道産子の一人として子どもが北海道のSDGsの取り組みを知り『自分ごと』としてSDGsを考え行動する経験を、子どものキャリア教育の一環として取り入れてみたいと思います。

これからもSDGsを題材にして教科横断型授業実践を重ね、子どもの実態に合った「釧路北陽スタイル」を創るとともに地域に還元していければと考えています。

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最後に、今回の教師国内研修で、普段出会えないたくさんの素敵な方々に出会い、たくさんの刺激をいただきました。一緒に学んでくれた仲間の先生方、授業を創る上で協力してくださった皆様、準備をして発表をしてくださった皆様、研修全体を通してアドバイザーを務めてくださった堀先生、オンラインでも私たちの学びが深まるように研修の内容を考え、取材を行い、授業を見に来てくださったりとご尽力いただいたJICA北海道のスタッフの皆様のおかげです。どの方も自分のやるべき他の仕事がありながら、この研修のために時間も労力もかけてくださったことに心から感謝しています。

教員は確かに忙しく、毎日、やるべきことに追われてあっという間に時間が過ぎていきます。気がつかないうちに目の前のことに必死になり視野が狭くなっていることもあります。また、子どもたちに深い学びを促すためには教員一人でできることは限られています。だからこそ、「掛け合わせる」ために必要なSDGsのゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」を大事に精進していきたいです。

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