外国人との共助 -多文化共生×減災-

北海道静内高等学校 内田 大資先生
実施教科(領域):地理歴史科「地理総合」

1.教師国内研修参加までの経緯

2022年度から高等学校地理歴史科の新科目「地理総合」がスタートするにあたり、研修を通して自分自身が異文化理解・多文化共生を学び生徒に還元し、「生きた学び」を生徒と共にしたいと思い志望した。なぜなら「地理総合」では「SDGs」「異文化理解・多文化共生」がテーマの1つになっており、授業デザインにあたり、教員自身がテーマに関する過去現在を理解しておく必要があるため。JICAの研修という日常では体験できない体験を通して学んだことを授業デザインに活かすことが「生きた学び」につながると考えたからである。

2.研修を通して

学んだことは大きく2つある。1つ目は「多文化共生や多様性の承認は『覚悟』が必要」ということ。性別や出身地、価値観など自分と異なる相手と共に生きていく中で「自分と相手は違う」ということ、そして相手のバックボーンを理解し、受け入れる必要性を感じたからである。また、相手を尊重したり、大切にするのはもちろん、自分を大切にすることも大事だと感じた。一見簡単そうに見えて難しいことではあるが、当たり前になるまで授業などの経験を積んでいく必要がある。
2つ目は、「こうしたい」「こうなりたい」という理想を「どうすればできるか」と考え、現実にする力が必要であり、その力を身につける場は「学校」「地域」「現実」であるということである。地域には必ず、物的資源と人的資源があり、それらの資源を見出すだけではなく、生きた学びを達成するためにどのように学びに活かすかが大切だと学んだ。その上で、何のための授業や手法か、手段の目的化にならないよう、適切な手段を検討する必要もあることを感じた。

3.授業実践をふりかえって

できたことは2つある。1つ目は、プロジェクト学習として生徒と共に学ぶこと(伴走)を通して研修で学んだ「受信と発信を通した共感的理解」を達成することができた。受信では基礎知識や世界と日本における事例を学び、学んだ知識をプロジェクトとして活かし、他者への発信に務めた。2つ目は「現実的課題と自分の関心」をリンクさせることができたことである。研修で学んだ「この学びは意味があるという「現実とのつながり」」を意識した授業をデザインしたことで、生徒自身が自分事化した学びができたことである。
できなかったことは、異文化理解に関する情報収集(外国人とのコミュニケーション)である。課題解決に向けた情報収集の一環として本校ALTへのインタビューの時間を設けたが、できればあと数名の外国人へのインタビューと情報収集を行うことで、異文化理解・多文化共生がより深く理解できたと感じる。もしまた機会があれば、JICAの研修員学校訪問を活用し、より深い学びを実現したい。

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外国人の立場に立って、考えを巡らせてみる

4.今後のビジョンについて(学びえたこと、作成した指導案をどのように活用していくか)

協働相手の新ひだか町及び地域の方々に向けた最終発表に向けて練り直していく。生徒は学習前に比べ異文化理解・多文化共生という視点を持てるようになったので、より具体的なアイデアになるよう支援していく。指導案に関してはテーマが変わっても応用できる内容であるので、多面的・多角的に物事を捉えることが必要な場面で活用していきたい。

5.アドバイザーからのコメント(モニタリングを実施してのアドバイザーからの感想)

一人1台端末を最大限に利活用したプロジェクト学習という点が、大変提言性が高く、今日的なアプローチであると言える。また、地域の防災と地域の多文化共生という2軸の身近な視点で生徒に課題を設定させている点も、生徒の興味関心と取組意欲を喚起する上で大変有効であったと考える。加えて、単元を通して、生徒が情報収集や探究を進める中で様々な思考ツールを活用し、グループ毎に合目的的なツールを取捨選択し、協働学習を進めていた点も、単元を通した生徒の主体的な学びという観点から効果的であったと考える。
生徒が題材となっている在日外国人や関係者に思いを寄せ、当事者に寄り添った形で思考することができるよう、共感的な理解を深める工夫に課題が認められるが、在日外国人の立場に立って課題をとらえ、解決に向けたプロジェクトを考え発信するという学習プロセスは、大いに参考になると言える。

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