ラオス・ベトナム授業検討チーム

メンバー

橋詰典明(石狩市立花川北中学校)
柴田峰子(札幌市立札苗中学校)
口岩竜馬(石狩市立南線小学校)
高木大作(札幌藻岩高等学校)
岡崎綾(江別市立江別第二中学校)
渡辺道治(札幌市立屯田西小学校)
磯谷麻江(帯広市立帯広小学校)
関愛(新潟県中越学園)

視察概要

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SDGs17の目標のうち、目標6「安全な水とトイレを世界中に」、14「海の豊かさを守ろう」をテーマとした教材を開発することを目的に、8名のメンバーでベトナムとラオスへ行ってきました。以下に訪問地の概要とどんなリソースを得てきたかを報告します。

ベトナムでは、ハノイにて、博物館見学を通してベトナムの歴史を理解することから始まった。プラスチック再生工場が立ち並ぶミンカイ工芸村(別名「プラスチック村」)では、近年日本や地球規模の課題とされているプラスチックゴミの問題や海洋プラスチック、大気汚染につながる課題を垣間見ることができた。フエでは、ASC認証を受けたエビを養殖する工場を見学。ASC認証とは、自然環境の汚染や資源の過剰利用を防止することに加え、労働者と地域住民との公平な関係構築のもとで「責任ある養殖」がなされていることが認められたことを指す。この工場ができた経緯をはじめ、稚エビの段階での綿密なチェックや労働者に対する待遇などを実際に目で見て耳で聞いて学び、消費者としての責任も痛感した。

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ラオスでは、まずダムと水力発電所を見学。今回見学した発電所はベトナムの企業である。ここで作られた電気はベトナムの電気会社に販売される。発電所の建設や外国の企業主導の開発から生じうる問題についても考えさせられた。その後、2018年に起きたダムの決壊により住むところを失った村の住民たちが暮らす仮説住宅を訪問。沖縄の高校生たちが学校建設の支援活動をしている話も聞くことができた。少数民族オイ族の村に立ち寄り、伝統養殖業であるトラバンを見学。人間の暮らしと魚の住む場所が互いに循環し合えるようにと、持続可能性を追求した昔からの養殖の手法であった。この養殖業は単なる生計のためだけでなく生活の知恵や仏教の教えのようなものも込められた村人の生活を支えるものだということも感じさせられた。ホームステイで滞在したサーイ村では、伝統的に家庭で作ってきたラオラオ酒に着目したコープおきなわが、JICAの草の根技術協力事業の下、ラオラオ酒の品質向上と生産量・販路の拡大を進めている話が聞けた。

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首都のビエンチャンへ移動してからは、さらにJICAが関係する事業をいくつか見学させていただいた。水道局では、安全な水を安定的に供給できるようにJICAが支援事業を進め、浄水場の改修や水道施設に従事する技術者の育成も行っていた。国産水産センターでは、養殖業の計画・マネジメント、技術開発、水質調査を実行し、養殖魚生産量の増加を目指してきた現場を実際に見させてもらった。こうした見学を通じて、ラオスの生活の基盤や仕組みを整えるためにどのように日本の技術支援がなされているか、資料だけでは知ることができないリアルを学び取ることができた。また、JICAラオス事務所に立ち寄った際には、教師海外研修でラオスに滞在中の九州・沖縄地方の先生方とわずかな時間ではあるが交流することができ有意義な訪問となった。

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特にラオスでは、施設や事業の見学だけでなく、人との交流が”プライスレス”な時間をもたらしてくれた。小学校訪問では、練習を重ねたよさこいの演舞や歌の披露、日本の子どもたちの折り紙作品や藻岩高校からのバレーボールの寄贈などを通して子どもたちと実際に触れ合えた。ホームステイ体験では、村を出る際に村人たちがBasy式を開いてくれ、私たちの旅の無事や幸運を祈って、村の人たちが腕に1本1本糸を巻いて祈りを捧げてくれた。”一生忘れない”という強い感動を私たちに与えてくれた時間であった。さらには、ジョイさんというラオスでのコーディネーターとの出会いも大きい。誠実に、丁寧に、私たちの要望に応え、ラオスでの全日程に同行してくださった。今後の教材づくりにおいても、キーパーソンである。

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このように、メコン川とともに暮らす国で、「水」を切り口として、飲み水へのアクセスだけでなく、インフラ整備や水関連の生態系の保護、水に関連する環境問題、JICAの支援事業など様々なテーマを学んでくることができた。見学が中心でインタビューに十分な時間が取れなかったことが課題として残ったが、このような機会を与えてくださった関係者の皆様に感謝の意を表するとともに、8名のメンバーそれぞれの着眼点による教材に期待したい。

現在、D-netメンバーが定期的に集まって、授業案を検討中。以下に概略を述べます。

教材内容

「見えない『水』から、世界の問題を考える」(高校2年生 保健体育)

内容の概略

『仮想水』の考え方を理解した上で、日本とベトナムに関係性のある写真から、私たちの生活が、諸外国の『水』に依存して成り立っていること、またその『水』の使用が、間接的に水質汚染の要因となっていることを導き出していく。

水質汚染の具体的事例として、昨今世界的な問題となっているプラスチックごみによる海洋汚染を取り上げる。ベトナムのミンカイ村(別名プラスチック工芸村)を舞台としたロールプレイ活動(登場人物は、プラスチックごみで生計を立てる村人、プラスチックごみによって川や土壌が汚染し困惑している近隣の村人、諸外国からのゴミの輸出を規制しようとするベトナム政府、増え続け行き場を失ったゴミを輸出したがる日本企業など)を通して、様々な視点から、プラスチックごみによる海洋汚染問題について思考を巡らし、その解決の在り方について考える。

期待される効果

  • 私たちの生活が、多くの「水」で成り立っていることを理解する。
  • 私たちの生活が、直接的・間接的に水質汚染の要因となっていることを理解する。
  • ロールプレイ活動を通して、「プラスチックごみの問題」を、多様な視点から考えるとともに、活動から生じるだろうジレンマと向き合い、どのように折り合いをつけていくべきかについて試行錯誤しながら考える。
  • ロールプレイ活動を通して、そして、世界が、急速なスピードで、この問題の解決に向けて動き出していることを知ることで、私たちの生活とプラスチック製品の利用について、見つめなおす。

「プラスチックjourney」(6年生 社会)

内容の概略

プラスチックゴミは、ごみ収集後どうなっていくのでしょう?
海外に日本のプラスチックゴミが売られていて、再利用されている。ベトナムのミンカイ村では、そのようなゴミを再利用し、ストローやコップなどに変えている。
しかし、その中には汚れていて使えないものもあり、処理できずにゴミ山にためられていたり、海岸に捨てられていたりする。
そこから、海洋プラスチック問題も紹介し、今後のプラゴミの捨て方、使い方、作るべきかを考え、これからの自分たちのごみに対する考えを改めて感じてもらう。

期待される効果

生活の中に、プラスチックゴミが多いことに気づく。ゴミは自分たちが社会科見学で見てきたように、再利用されているものと思ってるが、実は海外に売られていた。
売っていると聞くと、海外できちんと使われて再利用されているのだと思うが、しかし、現実は違った。海へ流れ出したものが動物たちに悪影響をもたらしているのも知る。さぁ、このままでは世界がゴミで埋まってしまう、どうしたらいいのだろう?
今後の世界を考え、これからごみの捨て方、使い方、はたまた作るべきかまで考え、捨てるなら、しっかり洗ってから、なるべくプラスチックのゴミを出さないようにしよう、いや、むしろプラスチックに変わるものを作ればよいと考えていく。最後は、スタバやいきなりステーキの紙ストローなど、プラスチックを使わない取り組みを行っていることも知る。

「プラスチックゴミの問題から考えるSDGs-Think globally, Act locally-」(中学3年生 総合)

内容の概略

  1. ベトナムのミンカイ工芸村について知る
    教材として、現地で撮った写真、ニュース映像、ハノイ出身留学生へのインタビュー動画を活用する。そこから、なぜ日本はプラスチックゴミをベトナムへ輸出しているのか、なぜミンカイ工芸村じゅうにプラスチックゴミがあふれているのか、プラスチックゴミをめぐる地球規模の課題…とプラスチックゴミとリサイクルについて問題提起をする。
  2. 「リサイクルは最重要アクションであるか」について考える
    学習活動として、4Rを元にした「行動カード」を並べるロードマップ学習を取り入れる。ゴールとして「プラスチックをめぐる課題に対するSDGsを2030年までに達成する」(ロードマップ前に、テーマに関連するSDGsを確認)をおく。
  3. 「私たちは何ができるか」を具体的に考える
    知識構成型ジグソー学習を取り入れ、佐渡(実践校のある市)に焦点をあて、今佐渡で取り組りくまれている環境活動(とりわけSDGsのゴール14、ゴール6に着目)にさらに知識を加えることで、今後取り組むべきアイディアを具体的に生み出す。

期待される効果

  • 「リサイクルっていいこと!」という単純な知識から、リサイクルの先にある弊害やリサイクルよりも先にすべきことについて教材を通して気付く。
  • 世界のことを知った後で、自分の地域に視点を移すことで、もっと知りたいことや自分の生活と地球規模の課題とのつながり、身近なところからできるアクションが見えてくる。
  • 知っていることに新たな視点を加えて協働して考えさせることで、新しいアイディアや「身近なところから行動をする」意識に具体性をもって意見を言えるようになる。

「トラバンのおぢいちゃん」(6年生 道徳)

内容の概略

ラオスの伝統的な漁を続けるおぢいちゃんと村の発展を目指し漁の方法を変えたい村長
携帯電話の普及により情報過大になっている、ラオスの少年の気持ち
それぞれを考え、本当の幸せとは何かについて、自分の考えをもつ。

期待される効果

文化の発展に目が行きそうな展開としつつ、そこから実際のおじいさんの写真、映像、若者が携帯を使っている写真などを使う。多様な意見が出る中で、同じ地球上で起こっていることで日本のことまで考えを深められるような授業を検討中。

「みんなの水道」(中学3年生 理科)

内容の概略

  1. 市販されている水の試飲から、日本や世界の進んだ浄水技術の高さに触れる。
  2. ラオスの水道事業をモデルにしたゲームを通して、安全な水を広範囲に供給するシステムを維持管理するために様々な課題があることに気付かせるとともに、地下水の利用や河川水の利用の際に水資源をどのように分配すべきか考えさせる。
  3. 日本の水道料金の問題を例に、水問題を身近な問題として考えさせる。

期待される効果

  1. 浄水技術の高さを実際に水を口にすることで実感する。
  2. 水道事業のゲームから、水道の維持管理の課題が浄水だけではないことに気づく。水資源の利用と汚水処理がセットであり、水資源の分配には合意が必要であることを実感する。
  3. 日本の水道料金について自分たちの未来のこととして考えを深める。

「ぐるぐるウォーターリレー」(中学2年生 国語)

内容の概略

  1. ウォーターリレーを通して、世界の水資源の有限性と水資源の配分の不平等について考えさせる。
  2. ロールプレイを通して、我々の生活によって自然に及ぼす影響や、今後の水生活(主に下水処理システム)のあり方について考えさせる。

期待される効果

  1. 自分たちの住む日本が「水資源の豊富」な「先進国」であると捉えている生徒が少なくないが、その考えに警鐘を鳴らす。地球市民であるということを実感する。
  2. それぞれの立場から、現行の水生活のあり方が自然にどのような影響を与えているかを学ぶ。また、便利な生活や経済の発展を優先してきた開発のあり方と、自然保護や持続可能な地球について、どのように折り合いをつけるべきかを葛藤する。

「サステナブルシーフード」(6年生 社会)

内容の概略

身近な食材である「エビ」を取り上げる。日本人は世界的に見ても一二を争うエビ消費国。しかし、その約95%は主に東南アジアからの輸入に頼っている。現地ではエビを養殖するために、マングローブ林を大量に伐採している現状がある。そのことにより、高潮・生態系の破壊・温暖化・津波被害の甚大化など多くの環境問題が起きている。そこで、こうした問題を解決するにはどうすればよいかを、児童らに考えさせる。最終的に、海のエコラベルとよばれるASCのマークについて教え、消費行動を通して我々は国際協力の第一歩を踏んでいく事ができることを教える。私買い物を通じて、世界が抱えている問題を解決に導く一端を担うことができる「エシカル消費」の行動が起きることを期待したい。

期待される効果

以下のような生徒の反応が予想される。
「エビってそんなにたくさん輸入してるの?」「マングローブ林を伐採してるなんて知らなかった。」「現地でそんなに深刻な問題が起きてるなんて…」「何にも知らないでエビを食べてたなぁ」「この問題、どうすれば解決できるんだろう」「ASCマークがあるんだ!」「お父さんやお母さんにも教えてあげよう!」