サッカー×海外協力隊 コンサドーレグッズが繋ぐ途上国との絆<連載第3回>

2020年8月18日

JICA北海道がコンサドーレ札幌のサポーターからお預かりした186点もの中古のサッカーグッズが、海を越えて青年海外協力隊の活動現場に届き、各地で贈呈式が行われました。
この連載記事では、新型コロナウイルス騒動以前の現地の日常や贈呈式の様子、そして贈呈式に関わり、日本に一時帰国となった海外協力隊員たちの「今」をご紹介していきます。
第3回は、長崎県出身の望月直樹隊員。もともと中学校の英語教師をしていた望月さんは、再派遣の連絡を待ちながら、8月から再び教師として働き始めました。ケニアのNPOとも連絡を取り合っています。

サッカーが大好きなケニア人たち!

「ケニア人にどのスポーツが好きか?」と聞くと、老若男女問わず「サッカー!」と答える人が多いです。また、大都市ではスポーツバーやレストランの一角でサッカー観戦を楽しんでいる人たちがたくさんいます。また、街を歩けば、道端や広場でビニール袋と古紙、紐で作った手作りのサッカーボールで、何時間もサッカーをして遊んでいる子どもたちもたくさん見かけます。サッカーがケニア人に広く親しまれていることが分かります。

現地の生活情報

ケニアの食事について、少しご紹介します。ウガリ(メイズ粉お湯で練り上げたもの)やピラウ(ピラフ)、ニャマチョマ(牛肉やヤギ肉の焼肉)など独特の料理が多数存在します。私の配属先はケニア国最大の民族であるキクユ族が暮らす地域にあり、特にギゼリ(豆とメイズを塩ゆでにしたもの)はキクユ族の代表的な豆料理でもあります。配属先では、ほぼ毎日のように塩味のギゼリが昼食として振舞われます。今まで食べたことのないパサパサした豆。硬いメイズ(トウモロコシ)の触感。そして味のしないスープ。口の中の水分、全てを奪っていく料理に絶句。同僚たちは「ウガリと一緒に食べると俺たちみたいに体も大きく強くなれる」と言われ続けましたが、私には大きくなるどころか逆にやせ細ってしまうのではないかという不安が強かったことを覚えています。しかし、住めば都。ある時を境にケニア人以上にギゼリにはまっていく自分がいました。スクマウィキ(ケール)や肉を入れてもおいしいですが、やはりこの料理は豆とメイズのシンプルなギゼリが一番です。

コンサドーレユニフォーム20着が活動先の更生学校の生徒たちに

【画像】私は、ワムム更生学校で週に3日、全クラスで体育を教えていました。先輩隊員からの活動を引き継いで、私で5代目となりました。ワムム更生学校は、ケニアにある更生学校の中でも最も危険性の高い子どもたちが収容される男子全寮制の学校です。ソーシャルワーカーたちと連携しながら、いわゆるスラム街やストリートで育った犯罪歴のある子どもたちを預かり更生のため導くのが更生学校の役割で、最長3年間ここで学ぶことができます。現在、12~22歳の53名の少年が職業訓練や教科の学習をしながら、社会復帰や再犯防止を目指し過ごしています。
福祉部門では現地職員と協力しながら、個別相談や個別面談を通して、子どもたちの精神的ストレスの解消や更生・社会復帰に向けたアドバイス等も行いました。

更生学校の中では、サッカーが一番人気のあるスポーツで、放課後は、子どもたちが体育の授業以外で唯一体を動かせる至福の時です。子どもたちは職業訓練や教科の授業が終わると、一斉に運動場へ走っていきます。
2月28日、ワムム更生学校のマネージャー、副マネージャー、福祉部門の職員、そして子どもたちの出席のもと、寄贈頂いたサッカーユニフォーム20着の贈呈式を行いました。
ユニフォームの披露があると、子どもたちの顔から溢れんばかりの笑顔が見られました。早速、ユニフォームに袖を通す子どもたちは、何度も「アサンテ!(ありがと!)」と喜びが止まりませんでした。
また年に一度、サッカーをはじめバレーボールやハンドボールなど地区・県でスポーツ大会が開催されています。今までは制服を着て大会に参加することしか出来なかった子どもたちですが、来学期からはご支援いただいたユニフォームを着て試合に参加できるようになります。子どもたちのスポーツに対するモチベーションアップはもちろんのこと、物を大切に扱うなど感謝の気持ちも芽生えてくることと思います。

望月隊員からの帰国後メッセージ-「点と点が繋がる活動を目指して」

【画像】青年海外協力隊には、中学校の英語教師を退職して参加しました。ケニアで暮らし始めて約1年、現地活動もようやく軌道に乗り始めた矢先、世界的な新型コロナウイルス感染拡大により突然の一時帰国命令。正直、ショックを隠し切れませんでしたが、日本で出来ることがきっとあると前向きに考えています。現在は、英語教師として中学校で再勤務しています。中学校で取り扱っている教科書には、発展途上国の人々や文化、そして途上国で活動された人の記事などが中学生に分かりやすい英語で教材として掲載されています。ケニアもその教科書の中に出てくるのですが、そういった機会を利用しながら国際理解教育の観点から、授業の中でケニアでの活動を紹介できたらいいなと思いながら勤務をしています。
また、配属先の同僚と近況報告をしたり、スラムに暮らす人たちに支援を続けているケニアのNPO団体とのオンラインミーティングにも参加しています。

私が青年海外協力隊として活動をしていたのは、軽犯罪を犯した子どもの更生を目的とした更生学校です。3月や4月は子どもの入退所が頻繁に行われていますが、コロナウイルスのため生徒の送致も延期されています。また、更生学校のある地区は川からの水の供給が不安定で、降水量も非常に少ない場所です。それゆえ、手洗いさえ十分に出来ない環境です。

しかし、この状況が今日と言わずとも、いつか必ず終息すると信じて。
スワヒリ語で、「人と人はいくら離れていても、また再会できるよ」という意味が込められた、お別れや大切に思っている人へ送る時に使われることわざを紹介します。
Milima haikutani lakini binadamu hukutana.(山と山は出会わないが人と人は出会う。) Tuko pamoja.(私たちはいつも一緒。)

(文責:2018年度4次隊JICA海外協力隊 青少年活動 望月直樹)