中央アジア タジキスタンからの北大留学生、札幌のお墓で故秋野豊先生を偲ぶ

2020年8月26日

(写真1)お墓参りをするシュクロナさん

中央アジアのタジキスタンはソ連からの独立直後に内戦を経験しましたが、日本政府は和平協定締結の翌年(1998年)に小樽出身の秋野豊筑波大学助教授(当時)を国連政務官として国連タジキスタン監視団(UNMOT)に派遣しました。

1998年7月20日、秋野政務官は山岳地帯を走行中に武装残党に襲撃されるという痛ましい事件の犠牲になりましたが、現在でもタジキスタンの和平に貢献した日本人として同国内で顕彰されており、事件現場近くには彼の名を冠した「秋野小学校」まであります。

北海道大学に日本語研修生として留学中のタジク人学生シュクロナ・ショディエヴァさん(写真1)は、8月に札幌にある秋野先生の墓をお参りし、そのときの印象を日本語で綴った感想文(リンク参照)をJICAに寄せてくれました。

(写真2)タジキスタンで日本語の教え子に囲まれる菅原さん(右から5人目)。

シュクロナさんはタジキスタンの首都ドゥシャンベにある国立言語大学で日本語を学びましたが、そのときに日本語を教えたのは、JICAからタジキスタンに日本語教師のシニア海外ボランティア(現:海外協力隊)として派遣されていた小樽出身の菅原美和子さん(写真2)です。菅原さんは、小樽の高校の後輩として秋野先生と同時期に在学していたそうです。「自分はきっと秋野さんのご縁でタジキスタンに派遣されたのではないかと思います」と菅原さんは語っています。

シュクロナさんは2019年に3年生で日本政府の奨学金を得て来日した優秀な学生で、その年の3月に参加したタジキスタン日本語弁論大会では、上級弁論の部で故秋野先生を題材に「いつまでも友達でいるために」と題したスピーチを行い、堂々優勝しています。

(写真3)故 秋野豊 国連政務官の殉職20年現地慰霊祭(2018年)で慰霊する田邉秀樹 JICAタジキスタン事務所長

JICAボランティアの菅原さんが、タジキスタンの若者たちを代表するシュクロナさんに日本語を教え、菅原さんを慕って来日した彼女を秋野先生のお墓に導いて下さいました。シュクロナさんの文章を通じて、タジキスタンの平和のために亡くなった一人の日本人の記憶が、より多くの日本人とタジキスタンの若い世代の心に永く残るといいですね。

シュクロナさんは1年間の留学を終え、9月に空路の再開を待ってタジキスタンに帰国予定です。