帰国後も、第二の故郷に思いを馳せて~青年海外協力隊として過ごしたフィリピンのために~

2020年10月27日

青年海外協力隊派遣当時、フィリピン人教員たちとペットボトルロケットの実験(写真左)

フィリピンで青年海外協力隊として小学校教育に関わった松永広太さん。2019年のクリスマスイブに巨大台風に襲われた第二の故郷のために、勤務先の札幌市立北小学校などで服や文房具を集めて寄付を行いました。松永さんの取組みを学校関係者や企業を始め多くの方が応援してくれました。コロナ禍にも阻まれましたが、ようやくすべての物品が現地の子どもたちに届いたそうです。活動の様子を寄稿して頂きました。

任国フィリピンと現地の小学校の様子

日本から飛行機で約5時間、美しい海や自然に囲まれた国、フィリピン。日本に近い東南アジアの島国が、青年海外協力隊員であった私の任国でした。2010年から2012年までの約2年間、小学校教諭の隊員として、フィリピンのイロイロ州教育事務所で、現地の先生たちへの研修などをサポートしていました。

州内には約千の小学校がありました。同じ小学校でも違いが大きく、町の中心校であるセントラルスクール(Central School)には、理科室や図書室もあったり、テレビやコンピューター室があったりしました。一方で、郊外の小さな学校プライマリースクール(Primary School)では、電気がない教室があったり、教材も揃っていなかったりします。フィリピンでは、プライマリースクールは、1年生から3・4年生など、小学校課程の途中までしかクラスがない学校を指します。プライマリースクールを修了した子供たちは、最も近いエレメンタリースクール(Elementary School:1年生から6年生までのクラスがある学校)に通いますが、バスや船を使って通わないといけない子もいます。郊外にあるプライマリースクールには、経済的に厳しい家庭も多く、家庭の事情で通学できず小学2年生だけど14歳という児童もいました。

クリスマスイブに台風が

国民の多くがキリスト教徒のフィリピン人にとって、クリスマスは一年で最も楽しみにしている特別なイベント。フィリピンの人たちは、”ber”の付く月(Septem“ber”の9月です)になったら準備を始めるというくらいクリスマスを楽しみにしています。そんなクリスマスのイヴに大きな台風アースラ(Ursula)がイロイロ州北部の町を襲いました。台風直撃から4日後の2019年12月28日、隊員時代に一緒に働いていたマリベスさんからメールが届きました。倒壊した家々の写真とともに、被災した子供達へ服や文具を送ってもらえないかというお願いのメールでした。お世話になったフィリピンの力になりたいと承諾し、私の勤務先である札幌市立北小学校で服や文具を集める寄付の活動を計画しました。

協力してもらうばかりの協力隊

北小学校で子どもたちが寄付を募りました

活動を行うにあたって、「職場の理解」と「送料の支援」の2つを得ることが必要と感じていました。「職場の理解」について、現在の勤務先の校長にお願いしたところ、すぐに「良い活動なのだからやろう」と言っていただきました。「他の学校でやってないから」など、やれない理由を伝えられることも考えていたので、大変嬉しかったことを覚えています。また校内の児童代表委員会の先生たちには、児童と寄付を集める活動を行いたいと相談したところ、寄付を集めるグループを作り、すぐに活動して下さいました。年度末でお別れの会の準備などで忙しいにも関わらず、先生たちが協力してくださったおかげで、子供たちも参画できる活動になりました。さらに、北海道の小中学校にエコチルという情報誌を無料配布している株式会社アドバコムさんがフィリピンの子どもたちに文房具を届ける「エンピツプロジェクト」を行っていたと聞き、協力のお願いをしたところ引き受けてくださいました。

たくさんの人たちの協力と、子供たちや地域の人たちからの寄付も集まり、無事荷物を送ることができました。フィリピンで青年海外協力隊として活動をしていた時にも、「現地の人に協力してもらってばかりの協力隊員だな」と悩むことがありましたが、協力してもらえるからこそ、達成できることがあります。今回も「協力してもらう隊」でしたが、困ったときに手を差し伸べてくれる人たちがいたことを、とても嬉しく感じました。

寄付の活動にコロナウイルスの影響が

文具を受け取るお家の方

パサヤン小学校と同僚のマリベスさん(左から3人目)

フィリピンで子供たちに文具を配布

フィリピンのこどもたちに服や文具が届きました

1回目(8月)の荷物到着後の学校掲示

フィリピンの様子が紹介された校内掲示を見つめる子どもたち

2020年の2月中旬に送った荷物は、4月にフィリピンに届きました。フィリピンは、6月から新年度が始まるので、始業式に合わせて服と文具を配る予定でしたが、コロナウイルスの流行で、始業式は8月まで延期になっていました。8月に入り、元同僚が1つ目の小学校 カランガ・プライマリースクール(Calangag Primary School)に荷物を配送してくれました。コロナの隔離政策による規制があり、直接小学校に行くことができなかったのです。

2つ目の学校パサヤン・プライマリースクール(Pasayan Primary School)は、再びコロナウイルスの感染が広がり、10月までの学校閉鎖が決まりました。10月になり学校が再開するとすぐに、元同僚が荷物を届けてくれました。現地から届いた写真はマスク姿でしたが、子供たちやその親御さんの笑顔を見ることができて、少し安心しました。「教具を買うお金も十分無かったから助かりました。ありがとう」という現地の声が届きました。


送られてきた現地の写真を印刷して勤務校の札幌市立北小学校で掲示すると、子供たちは写真を指差して「これ私の服!」と、フィリピンの人たちに荷物が届いたことを喜んでくれました。


日本の子供たちにとっても目に見える支援になって良かったと実感しました。コロナウイルスの影響で世界がこれまでより遠くなってしまった気がしますが、世界を遠いままにせず、世界と繋がる支援に積極的に取り組んでいきたいと感じました。


(文責:青年海外協力隊2010年度1次隊 小学校教諭 松永広太)