長期研修員(スリランカ・ウィクム ハーシャナ ジャヤシンさん)インタビュー

2022年2月4日

北海道大学で学ぶ
ウィクムさん

JICAイノベーティブ・アジア長期研修員でスリランカのペラデニア大学出身のウィクムさんが北海道大学留学中に投稿した論文が、Natureの速報紙であるNature Communicationに受理されました。
「植物ウイルスRNAが、アブラムシ体内で直接に作用して羽の形成を誘導し、そのアブラムシで植物ウイルスが伝播される」という驚くべき発見をされました。
ウィクムさんに北海道大学での生活、成功の秘訣についてお話いただきました。

論文の詳細な内容はこちらです。
(https://www.hokudai.ac.jp/news/2021/12/rnay-rna.html)

日本に留学しようと決めた要因を教えてください。

ドイツか、日本のいずれかに留学したいと考えていました。最終的には日本はスリランカと文化的な共通点が多いこと、また先進的な技術で生活が洗練されており、スリランカの未来の姿を学ぶことができるのではないかと考え、日本を選びました。
大学の同僚に広島大学や帯広畜産大学に留学した研究者がいるため、彼らから100%研究に集中できる日本の大学環境を聞いて好感をもったことも、日本を留学先として選んだ理由です。

今回の研究のKey for Success(成功の秘訣)は何でしょうか?

キュウリモザイクウイルスのサテライトRNAは感染した植物体を黄色に変色(アブラムシは黄色した葉が大好物)させ、さらにこのRNAはアブラムシ体内で羽をつける遺伝子を操作するユニークな作用があります。私はウイルス感染した植物を食べたアブラムシを繰り返し観察し、RNAがアブラムシの羽形成に影響している現象を掴みました。数千個体は観察したと思います(笑)
小さいアブラムシを数える作業は本当に忍耐を要しました。粘り強く観察したことが成功の秘訣といえます。

北海道大学での研究生活についての思い出を教えてください。

家族にとってもかけがえのない経験に

アブラムシを観察していた部屋は大学地下にあり冬場は大変寒かったです。暖房を入れると熱帯のように温かくなるため、スリランカ出身の私には地下の研究室は居心地の良い場所でした。

また日本人研究者はハードワーカーでした。増田教授は教鞭を取りながら研究指導も行っており、1日24時間以上働いている印象でした(笑)私は研究が大好きなため、夜遅くでも大学で研究できる環境は有難く、研究に必要な薬品は翌日には届き、集中して研究に取り組める環境は素晴らしかったです。スリランカでは必要な薬品が届くまでに数週間要することもあります。

長女は北海道で生まれました。妻と一緒に長女を育てながらの研究は大変でしたが、北海道大学での研究生活は家族にとってもかけがえのない思い出となっています。

現在の取り組みを教えてください。

2021年3月にスリランカに帰国して、現在は北海道大学と同じような研究に取り組んでいます。但し、スリランカでは遺伝子レベルの研究をするための最新機材が十分に整備されていないため、北海道大学と同じレベルの研究を進めることは難しいです。
北海道大学に共同研究の相談をしたいと考えています。増田教授から寄贈いただいた顕微鏡は大切に使わせていただいています。

日本に留学を考えている若手の研究者に対してメッセージをお願いします。

日本で学ぶことで、人生の一大転機といえる経験ができます。大学での研究ばかりでなく、日本の友人との生活や出会った日本の人たちとの繋がりはかけがえのない思い出となりました。ぜひ日本への留学にチャレンジしてほしいです。