【草の根技術協力事業】バングラデシュとの出会いと思い出話(NPO法人ジョロナ)

2023年5月9日

今回は、南アジアのバングラデシュで草の根技術協力事業を実施したNPO法人ジョロナの代表理事であり、事業ではプロジェクトマネージャーを務められた滝波先生の体験記をご紹介します。滝波先生は歯科医師であり、バングラデシュでは長年に渡り住民の口腔衛生の改善や健康維持に関する活動を行ってきました。2023年3月に終了した草の根技術協力事業においては、バングラデシュの紅茶農園の労働者及びその家族を中心に、デンタルキャンプ(口腔検診、健康相談、歯磨き講座等)の実施支援や、地域の医療従事者を対象としたミニセミナー、現地の歯科医師を対象とした勉強会や実習支援を行ってきました。バングラデシュとの出会いや現地の人々との印象深いお話しを語っていただきます。

バングラデシュ初訪問から25年、思い出話を語ります

新しい歯ブラシにワクワク

「イン シャー アッラー」

この言葉との出会いは1996年の冬、バングラデシュからの留学生Khan君を新千歳空港で出迎え、大学に向かう車内で彼の将来の夢を聞いていた時でした。英語に交じって「イン シャー アッラー」という言葉が出てくるので意味を聞いてみると「そうあって欲しい将来の事で、神が決める事」とのことでした。
彼との出会いがバングラデシュでの草の根事業に関わる全ての始まりでした。
1999年のバングラデシュ初訪問から25年、「この言葉」に関わる“爺さんの思い出話”を聞いてください。

レンタカーの運転手とナセル少佐の「この言葉」

2009年8月、チッタゴン管区のクミッラ近郊で歯磨き指導、モデルプロジェクト実施中の事。前夕、運転手に「明日の集合時間は8時10分前」と伝えたが本人は翌朝8時に自宅で食事中。
その日の夕刻、軍医のナセル少佐に翌日の集合時間を伝えたM先生、「ナセル少佐もイン シャー アッラーと返事をした。明日の出発も遅れる!」と大憤慨。「身分高い少佐殿の『この言葉』は神に誓って実行するの意味なので心配無用」と私は返答。
翌朝7時30分、ナセル少佐と私達は出発前の最終打合せをしていました。

「時間厳守」vs「イン シャー アッラー」

デンタルキャンプ風景

2019年2月、コミュニティクリニックとの会合開催時間に集まったのは参加者の3割方で、後から携帯で話しながら悪びれもせず、五月雨式にやって来ます。講演開始にタイミングをとれない私は指定時間の30分後に入口をロックして入室禁止とし、携帯のマナーモード設定と通話禁止を宣言しました。その後、更に遅れて来た10数人からのクレームには「講演は全て聴取しなければ無意味なので、遅刻は不参加の意思表示である」として全て却下。「来年は時間を厳守すること」との申し入れに参加者は承諾の返事、そして「イン シャー アッラー」とつぶやきました。
翌年、会合10分前には案内を回した全員が会場で待機していました。
「子供たちばかりでなく大人までが整然と列を作る光景」は視察に来た方々が「どうやったら、こうなる」と大層好評でした。

歯磨き指導現場での驚き(2010年~2021年)

生徒たちは事業に興味津々

上手に磨けてるでしょ

数日前に指導をした小学校の生徒が、ボロボロの歯ブラシを手にして「新しいのが欲しい」と言ってきました。訳を聞いたら、家族5人で歯磨きや掃除に使ったとのこと。使用方法の再指導をしてから内緒で1本をプレゼント。
半年後、親が歯ブラシを買ってくれるようになったと報告してくれました。

学校での指導後、後始末をしていたらバナーの前でこどもが歯磨きをしていました。あまり可愛いのでM先生が写真を撮りました。その写真は翌年のバングラデシュ事務所の卓上カレンダーに採用されたので、写真パネルを作り、その子にプレゼントする事になりました。しかし、その子がみつからないので、村の市場で聞いたら「隣村の子」でした。(どうやって、もぐりこんだのだろう?)
アッラーは「喜びや驚き」も与えて下さいました。

《イン シャー アッラー》
「神が望めば」や「神の思し召しがあれば」という意味のアラビア語の表現で、イスラム教徒が未来の出来事について言及する際はこの言葉を使うようにコーランに書かれ、命じられていてるそうです。