「明日」へ(前編)

【写真】岡崎 正樹 (愛媛)平成13年度0次隊/タイ王国/油脂化学
岡崎 正樹 (愛媛)

<タイ/マハサラカム大学養蚕研究所編>

参加の動機

1.マハサラカム大学養蚕研究所

2.京都工芸繊維大学の先生方

 化学繊維メーカーの技術部門を定年退職しました。岡山県産業技術センターに情報探しに出掛け、そこで「シニア海外ボランティア」募集のポスターに出会いました。帰途に岡山県国際交流センターで募集内容を聞き、応募を決めました。
 私はその時までシニア海外ボランティアが何をするのかさえも知りませんでしたが、自分の技術や経験が生かせ、役に立つことが出来ればという夢を持っていましたので即断しました。

開発途上国での仕事

3.苗木の育苗

4.近郊農家への出前講習

5.研究所への見学者

6.自動養蚕機

7.シナノ絹糸訪問

8.ジュンタイシルク(株)訪問

9.マハサラカム大学学長・学部長の信州大学訪問

 派遣国は、希望した国タイ。派遣先は東北タイに位置するマハサラカム大学で、国立大学では十四番目にできた新しい大学です。着任時は研究所は建設中でした。

 この周辺はタイシルクの主要生産地(98%を占める)で国を挙げて振興に励んでおり、本校を拠点に養蚕研究所(写真1)を作り、若い学生の育成と地域振興を率先して行っています。桑の品種をはじめ桑園畑の開発、桑の木から得られる収穫物の開発を奨めていました。タイは京都工芸繊維大学の技術を導入して大学と共同で事業を行うことになっていました。(写真2)

 養蚕といっても幅が広く、主な作業は蚕を飼って繭から糸を取り繊維にすることだけでなく、有用成分の開発にも取り組みます。熱帯気候の中で、桑の木は年中育ち、桑葉の採取が可能なので養蚕を主とするも、桑茶の生産、桑の実ワイン、茎や樹皮からパルプなどの応用開発にも取り組みました。桑葉はカフェインがなく、デオキシノリジマイシン(DNJ)が含まれており糖尿病、いわゆる血中グルコースレベルの減少や高コレスロール、体脂肪減少に効くなどの健康茶として飲用されています。桑畑の開墾から育苗に移植(写真3)、優良桑種の増産を行いながら、大学近郊の農村へ桑茶生産の講習(写真4・写真5)、を行い絹糸ばかりでなく農家の収入源となる普及教育を実施し、一村一品運動につなげていく手がかりを作りました。当然得られた絹糸は加工会社だけでなく、輸出用へと販路を広げていきました。

 一方、所内作業としては愛媛県養蚕試験場から当大学に奇贈された自動養蚕機(写真6)の搬入から組立、運転その機材が誰もが使えるためにマニュアルの翻訳を行いました。
また桑畑では日照りや病気で桑葉が全滅する時があります。そのため蚕が食する桑葉と同一効果(食性)を示す合成飼料を作ろうと研究開発もしました。タンパク源の粉末に桑の葉の成分は必須で、他にパルプ、豆腐など滅菌した培養ベースを作り、クリーンルーム内で蚕のバット内給餌飼育を行いました。

学外活動として、チェンマイ近郊のウーロン茶生産農家やシナノ絹糸㈱タイ工場(写真7)、ジュンタイ絹糸㈱(写真8)やカンタイ特殊製紙会社、コンケーン大学養蚕研究所などを訪問しました。また一方では、マハサラカム大学の学長始め学部長先生方を日本の大学へ案内しました(写真9)。