与えることより与えられることばかり

【写真】池添 日菜(高知県)2018年度4次隊/グアテマラ/助産師
池添 日菜(高知県)

国際協力との出会い

学校帰りの子どもたちと

学校で昼食中の子どもたちと

 私が「将来国際協力に携わりたい」と思ったのは大学生の時でした。将来の進路を決めるために参加していた母子保健に関するシンポジウムで「世界では1分に1人妊娠や出産が原因で女性が命を落としている」という事実を知り衝撃を受けました。日本では妊娠や出産が原因で命を落とすことは稀であるのに、世界では毎分どこかで誰かが亡くなっている。日本であれば助かった命が、産まれた場所が違うことで同じ医療ケアを受けられず助からないという現状がとても悲しく、その状況を改善するために「何かできることをしたい」と思ったことが国際協力に進むきっかけでした。
 途上国では母子保健分野の課題が多くあるため、母子保健分野の専門家である助産師になりました。5年の助産師経験を経て、JICA海外協力隊を受験しグアテマラに派遣されることとなりました。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により赴任後1年での帰国となりましたが、任地での1年は周囲の支援をたくさん得ながら自分なりにできることを全力で取り組んできたつもりです。

活動していた地域

お祭りの様子

街の市場

 任地のキチェ県ホヤバフ市は首都グアテマラシティから車で5時間のところにある人口約9万人の先住民の文化や風習が色濃く残る地域です。住民の大多数がマヤ系先住民であり、公用語のスペイン語を話すのは30%のみで大多数が現地語キチェ語を話します。
 私の活動していたホヤバフ地域病院は、外科、内科、産科、救急からなり、同市と近隣の市から患者を受け入れている、周辺地域における唯一の公立病院です。費用は全て無料ですが、人工呼吸器などの高度管理医療機器はなく、院内で行える検査はX線検査のみに限られています。詳細な検査や高度な治療が必要な患者さんは他の都市に行く必要があり、地域唯一の公立病院でも、できる検査も治療も限られているのが現状です。

地域の妊娠・出産の現状と活動

小学校での性教育

母乳育児についてのクラスの様子

 私の活動していた地域では、毎日たくさんの出産があり、そのうち自宅出産が半数以上を占め、16歳以下の若年妊婦、8人目以上の多産婦も珍しくありませんでした。たくさんの出産に携わる中で、若年妊娠・望まない妊娠がとても多い現状があるにもかかわらず性教育を受ける機会がないことを知り、小学校で性教育をすることにしました。
 また、栄養失調の乳幼児が多く、授乳に関する指導を受ける機会がなく知識不足の母親が多かったため、産後の母親を対象に栄養指導のクラスを定期的に実施しました。
 自宅出産の介助やケアを担っているのは伝統的産婆と呼ばれる女性たちですが、彼女たちは専門的な教育や訓練を受けていません。出産で亡くなるケースの多くが自宅出産によるものであり、伝統的産婆の知識や技術の向上が重要であると考え伝統的産婆への教育にも取り組みました。

協力隊経験から学んだこと

伝統的産婆に対する教育の様子

伝統的産婆に対する教育の様子

いつも元気をくれた子供たちと

職場の同僚と

 1年ではありましたが、JICA海外協力隊として活動してみて様々な学びがありました。協力隊参加前は国際協力に携わることが目標であり、協力隊への参加はゴールだと思っていましたが、実際に協力隊に参加してみて国際協力に携わり続けたい思いがより強くなり、今はJICA海外協力隊への参加はスタートだと感じています。
 グアテマラの方々から日々頂くたくさんの優しさに、グアテマラの人たちのためにできることをしたいという思いは強くなるものの、語学力不足から思うように活動が進まずジレンマを感じることもありました。与えることより与えられることの方が何倍も多く、JICA海外協力隊の経験を通じ、心が豊かになり、得たものがとてもたくさんありました。グアテマラの方々から頂いたものをまだまだ返せていないので何らかの形で国際協力に携わり続けながら、支援が必要な人たちに何かできれば良いなと思っています。